(1) 『私はキリスト教の信仰者ではありませんが、何故かクロスにとても惹かれます。』というお便りをいただきました。 

英吉利物屋ではアンティークのクロスを扱っておりますので、関心のある方から、そういうお話があるのは珍しいことではないかも知れません。 けれども、クロスに惹かれるという話はこれが初めてというわけでなく、多くの方からお聞きしてきましたし、私もそう感じることがあるので、なぜだろうかと考えたくなるのです。

私の考えを先に申し上げますと、日本におけるキリスト教の伝来は、今から五百年ほど前の1549年と歴史の授業で習いましたが、実はもっとずっと以前にキリスト教もクロスも日本に到達していたろうと考えます。 現代日本人の多くはキリスト教徒ではありませんが、先祖をたどっていくと、クロスを身に着けていた人がいたのではないかと。 そして先祖がえりのような感じでクロスに惹かれることがあるのでは。

「先祖がえりのような感じでクロスに惹かれる」などと言うと、これはもう科学的な根拠のないトンデモ話になってしまいますが、二十一世紀の忙しい暮らしの中で、時には千年単位で過去を遡り、昔の時代に思いを馳せてみるのもよいのでは、と思うのです。

 

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(2) それでは、私がクロスに興味を覚える理由を、古事記、旧約聖書、聖徳太子、太秦といったキーワードに沿って説明してみましょう。

日本で最も古い歴史書といわれる『古事記』が編纂されたのは、今から一千三百年ほど前の八世紀初めになります。 まさに日本のアンティークな書物なわけですが、この『古事記』の読んでいくと、ニニギノミコトがイワナガ姫とコノハナノサクヤ姫という姉妹と結婚する話が出てきます。 ニニギが結婚したかったのはコノハナノサクヤ姫でしたが、義理のお父様からの結婚の条件は、お姉さんも一緒にということだったのです。 そして姉と妹では、その名前から感じられるように、妹のコノハナノサクヤ姫の方が美しかったそうです。

おもしろいことに、似たような話が『旧約聖書(創世記)』にも出てきます。 ヤコブがレアとラケルという姉妹と結婚する話です。 ヤコブの本命は妹のラケルだったのですが、結婚の条件は姉のレアも一緒にということでした。 そしてどうやら、やはり妹のラケルの方が綺麗だったらしいのです。

まあ昔のことですから、世界のどこでも、姉妹が一緒に嫁ぐということもあったのだろうと、最初は読み飛ばしたものですが、もう少し注意深く考えてみると、ただの偶然ではないように思えてきました。

 

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『古事記』と『旧約聖書』、この二つの歴史書における登場人物、その中でもメインキャラクターの流れを考えてみましょう。 このあたりは古事記や旧約聖書のベーシックになりますので、覚えておかれてもよいでしょう。

初代:天照大神、二代:アメノオシホミミ、三代:ニニギノミコト、四代:海幸と山幸
初代:アブラハム、二代:イサク、三代:ヤコブ、四代:ヨセフ

古事記における三代目ニニギ、そして旧約聖書の三代目ヤコブ、ともに三代目の両人が同じような結婚をしているのは単なる偶然でしょうか? 古事記と旧約聖書は似ているのではないか、という観点からあらためて読み直してみますと、他にも類似点が見えてきます。

古事記の四代目では、海幸彦と山幸彦の兄弟喧嘩があって、賢い弟の山幸彦が勝ちを収めて大和朝廷の先祖になります。 兄は弟の配下となって、その子孫は朝廷を守る隼人となったということです。

これと似た話は旧約聖書の三代目ヤコブと四代目ヨセフに見られます。 まず、三代目ヤコブは跡継ぎ問題をめぐって、兄と争いになり、後に和解するも賢い弟のヤコブが跡継ぎとなって、兄は一族の本流から外れて砂漠の勇者へと転進していきます。 旧約聖書四代目の時代になると、末っ子のヨセフが大勢の兄たちと争いになって、後に和解するも末っ子ヨセフがイスラエルの直系となります。そしてこれら兄弟たちの子孫はイスラエル十二部族となっていくのです。

大昔のことですから、兄弟間の跡継ぎ争いも日常茶飯事であったことでしょう。 しかし、妹の方が美しいという姉妹との結婚話や、賢い弟が争いを制して兄たちを従えていく話など、『古事記』と『旧約聖書』は似ているとの思いが強まってまいります。

もちろん古事記と旧約聖書は、それぞれにもっと多くのエピソードを含んでおり、別物であることは間違いないのですが、枝葉を切り落としてみると、創業世代の主人公たちによるストーリーの根幹部分が似ていると感じられるのです。 日本で最も古い歴史書といわれる『古事記』が編纂されたのは八世紀の初めになります。 古事記が編まれた今から数えて一千三百年ほど昔の日本に、『旧約聖書』の匂いが感じ取れるように思うのです。


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『古事記』の編纂と同じ頃で、やはり聖書の背景が感じられるもっと顕著な事例があります。 それは聖徳太子にまつわる伝承です。

聖徳太子(=厩戸皇子)にまつわる伝説は、イエス・キリスト伝説とよく似たところがあります。 厩戸皇子という名前など、聖徳太子もキリストも立派な人はともに厩(うまや)生まれというのはどういうことでしょう。 また、『日本書紀』で伝えられる片岡山の飢人伝説は、イエス復活のアナロジーと思われます。

さらに言えば、聖徳太子誕生にまつわる救世観音のエピソードは、新約聖書に見られる受胎告知とよく似ています。 そもそも聖徳太子に対応する救世観音と、イエス・キリストに対応する救世主という言葉の関係から分かることは、両者が「救世」の一語を通じてイコールになっているという状況なのです。

これらのことが意味するのは、日本にキリスト教が伝来したとされる十六世紀より八百年以上前の聖徳太子や古事記の時代に、既にキリスト教関連の知識がずいぶんと日本にあったということだろうと思うのです。

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(3) さらに歴史を遡り、『旧約聖書』が成立したのは紀元前数世紀のことだろうと言われます。

そして紀元前後の世界は西方にローマ帝国が栄え、東方には漢が栄え、シルクロードを通じた東西交流が盛んでした。 当時のローマ帝国といえば、西はスペイン、フランス、イギリスから、東はシリア、トルコ、イラク、アゼルバイジャン辺りまでを含む大きな領域で、たいへんなコスモポリタン帝国でした。 シルクロードを通って遠い西域から来た人たちが、聖書の知識やクロスをもたらし、大和朝廷の中枢にまで浸透していたと考えてもよさそうに思います。

その辺りの事情と関連して、応神天皇の頃に海を越えてやって来たとされる渡来人の秦氏に注目しています。 秦氏はネストリウス派のキリスト教徒であったという説もあるからです。

『日本書紀』の記述によれば、秦氏は朝廷から「うずまさ」という姓(かばね)を授かり、「太秦」という漢字をあてたとされます。 京都の太秦にある広隆寺は秦氏の氏寺で、その辺りに秦氏の本拠地があったわけです。 しかし、思うに「太秦」と書いて「うずまさ」と読ませるのはなかなか難しく、多くの人にとって難読地名と思われるその理由は、そもそも元々が当て字であったからなのです。

それでは、秦氏は大和朝廷から姓を授かった際に、なぜに「太秦」という漢字を当てたのか。 その理由を考えていると、世界史の授業で習った「大秦国王安敦の使者が漢にやってきた」という出来事が想起されます。 これは「ローマ帝国の皇帝マルクス・アントニヌスの使者が漢にやってきた」ということで、当時の漢(中国)ではローマ帝国は「大秦」と呼称されていました。 

想像になりますが、「太秦」≒「大秦」をあてた秦氏は、祖先の故郷を採用したのではないか、彼らの故地とは大秦国の東方であったのではないか。

秦氏の中でも秦河勝という氏族長は、聖徳太子を補佐した人物でありました。 古事記の中に聖書の知見が取り込まれ、聖徳太子の神格化に際しても借用されていった背景には、大和朝廷の中枢では、海外からやってきた人たちの働きによって、キリスト教関連の知識が普及していたことを示しているように思います。

私はキリスト教の信仰者ではありませんが、先祖を辿っていけば、私以上にキリスト教の知識を身につけていた人がいたかも知れないと想像してみることは、楽しいことです。

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(4) 以上のことは二十一世紀の現代からみて、過去二千年ほどの間に起こったかも知れない出来事の推論で、根拠が薄いという批判はあるかも知れません。

しかしながら、その十倍あるいは百倍というタイムスケールで歴史を考えてみると、もっと壮大で驚くべき人の歴史があることを、最近ある本を読んで知りました。

 

英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、& アンティークの時代背景を考えてみた。

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『The Seven Daughters of Eve(Bryan Sykes著)』という本で、イギリスの大学における医学部面接で使われる推薦図書になっている一冊です。 うちの上の娘が受験の際に、面接でこの本の内容について質問されたこともあって、面白いからと娘に薦められて私も読んでみました。

現生人類は十五万年ほど前のアフリカに起源を持ち、中東を経て次第に世界の隅々まで広がっていったこと。 現代の遺伝子生物学をもってすれば、母系を伝わって受け継がれるミトコンドリアDNAのタイプを調べることによって、世界中の人たちの母系祖先は、何万年か前に生きていた一握りの母親たちに収束していくこと、等々がこの本の内容です。

人類みな兄弟なんて標語がありましたが、実際のところ人の歴史はそうであったわけで、数万年遡っていけば日本人もイギリス人もアラブ人も区別がつかなくなるというなら、高々この二千年の間に起こったことなど、何があってもおかしくないという気がしてくるのは私だけでしょうか。

一般にイギリスはキリスト教国で、日本はそうではないと考えられていますが、それは今の時点でたまたまそうなっているもので、イギリスがキリスト教化されるより以前に、日本人の祖先の中にはキリスト教に帰依していた人がいたかも知れません。

日本人の祖先にはキリスト教について、イギリス人よりも先輩格の人がいたかもとか。 ミトコンドリアDNAを解析してみたら、遠い祖先の故郷はカスピ海の西側辺りだったとか。 まんざら馬鹿げた空想とも言い切れないように思うのです。

私たちが皆それぞれ持っているミトコンドリアDNAは、英国アンティークにおけるホールマークのようなものです。 遺伝子生物学の発展によって、自らの祖先がどこから来たのかという問いに対して、答えが手に入る時代が来ているのです。

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(5) 私はアンティークを手にしていると、その歴史についてあれこれと考えてみたくなる性分で、今回は千年、二千年の昔を考えてみました。

最近の科学の発達は著しく、そうした知見の助けを借りれば、アンティークをもっと楽しんでいけそうです。 私自身が受け継いでいるミトコンドリアDNAというホールマークも解読してみたくなりました。

忙しい現代の暮らしではありますが、時には手元のアンティークを眺めながら、昔の時代に遊んでみるというのは如何でしょうか。
(参考)秦氏について:『太秦を論ず』佐伯好郎1908年(明治41年)

 

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