シェイクスピアはイギリスにおける英語(国語)教育の根幹を成していて、子供たちは小学校の低学年から原典を読み始めます。 中学校に進むと授業科目に『演劇』が加わってきますが、これもシェイクスピアの舞台劇がイギリス人の暮らしに与えてきたインパクトの大きさを反映した歴史的結果とも解釈できるでしょう。 私が受けてきた日本の学校教育などからすると、ちょっと考えにくいことですが、義務教育の正式な授業科目の一つとして『演劇』があって、発声練習やパフォーマンスの仕方を学ぶということが、物怖じせずに堂々と立ち居振る舞えるようになるという意味で、イギリス人のその後の生き方に少なからず役立っているように思います。 

 

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もう一つ私が興味深く思うのは、イギリスの子供たちは初めの段階からシェイクスピアの原典を直接読んでいって、現代語訳というものがない、あるいは重要視されないことです。 私の記憶に残っている古文の授業とは、古文単語の意味や活用形を覚えて、古文を現代国語に逐語訳していくことが勉強の中心でありました。 シェイクスピアは四百年前の古典ではありますが、現代英語に比較的近くて、日本古典の解釈ほどには困難がないということはありましょう。 しかし、イギリスにおけるシェイクスピア教育は、生徒達のこれからの生き方に如何に役立てるかという側面がより重視されているようです。

名言や格言の宝庫であるシェイクスピアを学ぶことで、人生の幅を広げることにウェイトが置かれたイギリスの教育を通じて、シェイクスピアはイギリス人の考え方に今でも大きな影響を与え続けているといってよいでしょう。

周りのイギリス人と話をしていましても、シェイクスピアの一節を口ずさめる人たちが少なからずいます。 日本で言ったら、枕草子や徒然草、あるいは奥の細道のさびの部分を、暗記させられたような感じなのでしょうか。 それならば、世界の古典であるシェイクスピアを、私たちも知っておきたいところですが、シェイクスピアは演劇の台本であることが厄介なところです。 考えてみれば、小説と比べて演劇の台本というのは、日本語で読んだとしても読みにくいものだと思うのです。

日本で言えば小学高学年から中学1年生くらいのイギリスの生徒向けに書かれた参考書に、シェイクスピアの読み方が解説されていました。 うちの娘が使った本で、子供向けなのであまり難しくなく、とはいえ初学者に近い私達にとっては、なるほどと思えるヒントがあります。 イギリスの学習参考書というものは、こんな感じという観点からも興味深いので、その一部をご紹介させていただきましょう。




『You Don't Have To Understand Every Word (すべての単語を理解する必要はありません。)』とは、いきなり勇気付けられる教えで、なんかアバウトで楽観的なところは英国風です。 
シェイクスピアの劇中で何が起こっているのか大筋が分かっていたら、それでOKということです。




『Don't Stop Reading at The End of The Line』 要は長くだらだら書いてあっても、めげずに最後まで読むことです。 シェイクスピア作品における登場人物は、実は簡単なことを恐ろしいほど長々としゃべりたてる傾向があります。 例えば『真夏の夜の夢』のディミトリアス(Demitrius)は、上の写真内の青い部分にある十二行もの長いせりふを語っていますが、語りの要点は、『I used to love Hermia, but now I love Helena.(昔はハーミアが好きだったけれど、今はヘレナが好きだ。)』というだけなのです。



『Don't Worry About the Funny Old Words』 
昔の英語では「You」は「Thee」や「Thou」と書かれました。 「Your」は「Thy」と書かれました。 このあたりはベーシックな古文単語の知識なので、早めに教えてほしいと、私などは思うのですが、参考書の中での重要度はあまり高くなくて、けっこう後ろの方にさらっと書かれています。



以下の説明は面白かったので、そのまま訳しますと。

『登場人物たちは時々独り言をいっています。 
これは妙なことだと思われるでしょう。 現実の世の中では普通は独り言をいいません。 独り言している人がいたら、周りの人たちはすぐにその人のことを心配し始めるでしょう。 劇中の登場人物たちは、彼らが何を考えどう感じているかを、観客に知らせるために、独り言を言っているのです。』

以上がイギリス小中学生用の学習参考書にあったシェイクスピアの基本でしたが、ついでにもう一つ、私が使っているシェイクスピア読解法もご紹介しておきましょう。 やっぱり一番簡単なのは、まずDVDで見ることではないかと思います。 元々が舞台劇として書かれた作品であるわけですから、まずは映像から入るのが簡単というわけです。 例えば 『The Tempest』、The Shakespeare Collection、BBC版を見ました。 1970年代後半にイギリスのBBCがシェイクスピアの作品をテレビ化した一連の作品集のDVDが出ています。 せりふはシェイクスピアの台本通りですし、映像作品であることから、少しの時間で一通りの理解は進みます。 映像で見終わってから、あらためて書物を紐解くと、初めは難しく思えたシェイクスピアの原典も意外に早いこと読めるものです。

シェイクスピアなら過去に何回も映画化されている作品もありますので、お好みで気に入ったDVDを選ばれたらよいでしょう。 先日はマイケル・アルメイダ監督の『ハムレット』(2000年)を見ました。 現代のニューヨークを舞台にしたハムレットなのですが、これもせりふは原典通りで、楽しみながら役に立ちましたので、お薦めしたいと思います。

あるいはまた、新潮文庫にある『シェイクスピアを楽しむために(阿刀田 高著)』もよいでしょう。400ページほどの文庫で、シェイクスピアの代表戯曲11作について、あらすじと解説がなされています。 おやすみ前にちょっと読めば、もっとも短時間でシェイクスピア作品のあらましが分かって、お得な気分で眠れます。 この本を読んで興味が湧いたら、次にDVDで映像理解を深め、さらに進んで英語原典に挑戦してみる。 これがたぶんもっとも挫折の少ないシェイクスピア英語原典のスリーステップ攻略法と思うのです。

『ジョン王』:http://www.igirisumonya.com/20094

『お気に召すまま』:http://www.igirisumonya.com/20030

『オセロー』:http://www.igirisumonya.com/20087

実際のヴィクトリアン シェイクスピア本は、こんな感じです。

どんな内容か、少し詳しい説明はクリックしてご覧になってください。

 

 

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