ビジネス人がコロナウイルス禍の中で心を安定させる方法 その2 | 心に届け!コミュニケーション こちら五十嵐人材育成ラボ

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研修ファシリテーター・人材育成コンサルタントの五十嵐信博です。
コミュニケーションや人間心理など、ビジネス人に役立つミニエッセイをつづります。
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◆時間を区分けして「ふれあい」の感触を増やしましょう

心理学的に時間の使い方は、「ふれあい」の感触が感じられる濃さをもとにして6種類に分類できます。薄いほうから濃いほうへ、①引きこもり②儀式雑談活動心理ゲーム親密となります。

分類ごとに内容を考え、また1日のうちどれだけそこにいるかをふりかえり、できるだけたくさん健全な「ふれあい」の感触が得られるよう組み立てます。それぞれのポイントを見ていきましょう。

 

引きこもり

「引きこもり」の時間は、他者とのコミュニケーションや人間関係抜きに、一人で内向的になっている状態を言います。そんな時間の過ごし方も、ストレス状況では意味があります。バッテリーチャージになるからです。しかし、そうしていると居心地はよくても、そればかりでは心が栄養不良になると知っておきましょう。意識して他の区分にも時間を使いようにします。

 

儀式

「儀式」の時間は、社会的な慣習や役割意識にもとづく決まりごとで動いている状態です。代表的なものは挨拶で、さほど負担なく「ふれあい」の感触が得られます。

家族との朝晩の挨拶は、しっかり言葉を交わしましょう。一人暮らしの方は時間を決めて外に出て、誰かとすれ違うなど、ちょっとした接点で声を出して挨拶してみましょう。顔見知りの方と出会ったなら、いつもの一言にプラスして、「大変ですよね」などともう一言添えてみてください。配達物の受領、コンビニでの買い物の際も、「ありがとう」の一言を。日頃ごぶさたの友人にメールしてみるなどもよいでしょう。

 

雑談

「雑談」の時間は、気ばらし的な何気ない会話などをしている状態です。ほどほどの濃さの「ふれあい」の感触が得られる大事な時間です。

これまでできた、同僚や友人などとの「ちょっと一杯」などが今はできませんので、敢えてリカバーを考えましょう。遠くに住む家族や友人と、スカイプやズームをつないで近況を話すとか、相手によってズーム飲み会などもいいでしょう。

 

活動

「活動」の時間は、社会的に働きかけてはその感触が返る、現実的な効果を持つ行動をしている状態です。ビジネスパーソンであれば、仕事をしている時がこれに当たります。

社会的存在として、お客様や職場の同僚などとする、濃い「ふれあい」の感触がたくさん得られる大事な時間のはずです。しかし、リモートワークでは、リアルの時のような感触は得られにくいと思います。

感触の減少に対しては、何かリカバーを講じる必要があります。部屋の片付け、不用品廃棄など、日頃、つい後回しにしていたことにとりかかった方も多いことでしょう。また将来に備えて時間のかかる勉強をするとか、これまで読めなかった本を読むなどもいいでしょう。ご家族のある方は、ぜひ積極的に家事を分担してみましょう。

また、「ふれあい」の感触が得られやすい他の区分に時間を充てることもお勧めします。

 

心理ゲーム

「心理ゲーム」の時間は、相手を操作しようとする後味の悪いやりとりをする状態です。人は、皮肉、あてこすりのコミュニケーションや、相手を困らす行動を半ば衝動的にやってしまうことがあります。

スーパーの店員さんや配送員の方に心ない言葉をぶつけるとか、家族内で感情にまかせて心や体を傷つけるといったケースが報道されています。「ふれあい」の感触が欠乏すると、人はこうしたことでネガティブな感触を得ようとするものなのです。ネガティブな形での「ふれあい」の感触は、本当には得たいものではありませんし、当然問題が後に残ります。この分類から得るのではなく、他から得るようにしましょう。

 

親密

「親密」の時間は、関わりから互いを認め合い、心が通ったと感じている状態です。

巣ごもり状態の中では、家族との関係が中心になります。たとえ家族でも、心が通う状態というのは少ないものですが、たとえこれまでは会話の少ない家族だったとしても、関係性を深める絶好の機会でもあります。これまで日常的に忙しかった皆さんも、家族と食事をともにできる、子育てに関われるなどは貴重な時間です。

些細なことでも言葉にして会話を増やす、コンスタントに手で触れ合う(ハイタッチなど)といった積み重ねで、「ふれあい」の感触は濃くなっていきます。会話のある家族なら、昔の思い出や感じたことを語るなど、さらに自分を開いたやりとりを重ねることが有効です。何かお題を決めて話し合うのはいかがでしょう。

 

◆今後のあり方にも時間の使い方を応用しましょう

出るな、動くな、触れるなという今回の経験を通して、リアルなふれあいのないことが、どれだけ人を苦しめるか認識されました。そんな中、医療スタッフへの感謝のために時間を合わせて拍手をするとか、ゴミ収集車に安定したサービスへの感謝の手紙を渡すなど、新しい動きが生まれました。「ふれあい」の大切さに人々が気づいた証拠です。

今回ITリテラシー水準が上がったことで、当面のコロナウイルス禍が終わっても、ビジネスの世界ではリモートワークやバーチャルなコミュニケーションは一定程度続いていくと思われます。ややもすれば、「ふれあい」が忘れられないとも限りません。しかし、リアルな「ふれあい」の必要性、重要性は弱まるものではありません。むしろ強まるのです。

・時間の使い方に形を作ることを通して、心を安定させる

・分類区分を目安に「ふれあい」の感触が増すように柔軟に工夫する

これからも、このタイムストラクチャーのツボをとらえて、心の安定をはかっていたただきたいと思います。