https://www.tokyo-med.ac.jp/univ/media/docs/jigyokeikakuR7.pdf
東京医科大学の令和7年度の事業計画です。
学長事業方針に「本学の財務状況を勘案しながら、医学科学納金減額の可能性も継続的に検討してまいります。」と、昨年までなかった学納金減額についての言及があります。
また、単年度計画の重要施策における、医学科の教育の欄では、初めて「医学科学納金の検討」という文言が加わっています。
どのくらいの減額になるのか、財源も気になるところですが、
事業計画内で「医療収入は単価が固定の側面が強く、一方で昨今の環境下、患者数の増加による大幅な収入増は大変難しい環境にあります。このような中で、経費の削減は、その削減額がそのまま収支の増加に直結する」という議論をしている中で、
東京医科大学に限らず一般論としても、医療収入の黒字を頼りに、学納金減額に踏み切るのは経営としては考えにくいところになります。
東京医科大の収入において、学納金収入の占める割合は2.4%。学納金収入に頼った経営では無いです。補助金収入も1.9%です。学費にも私学助成金にも、頼った経営でもありません。
https://www.tokyo-med.ac.jp/univ/media/docs/transitive_graphR6.pdf
そういう点で、学費下げのハードルはあまり高くないでしょう。
ちなみに、一般的に、私立大学の収入のうち、学生納付金収入は約8割、私学助成金は1割です。
病院収入もあるとはいえ、いかに東京医科大学が健全な運営かわかります。
ただし、学費は、大学にとって定員割れさえしなければ一定額入ってくる安定収入なので、これを減額することは経営上の観点のみで言えば得策ではないかもしれないですが、
学生想い・家計想いの大学であれば、減額に踏み切るのではないでしょうか。
さて、学納金収入のほとんどがしっかり教育に還元されている場合、学費減額のための新たな財源を求めることになります。
正直、わからないですが、財源の候補を2つ考えました。
①私学助成金の配分基準が東京医科大学に有利に変わること
②予定されている資産運用支出の大幅な増額
①について、
私学助成金の配分基準が変わることは特筆事項になると思います。
今まで、大学の規模、つまり学生数が基準になっていたので、例えば東京医科大学のような単科大学には不利でした。とはいうものの、医学部があるので、大学規模の割にもらっていましたが。
「研究力が優れている私立大、地域貢献度や教育力の高い私立大に私学助成金を手厚く配分する方策を議論し、今秋までの提言を目指す。」
『文部科学省は私立大への私学助成金について、優れた実績や将来性ある研究に対して重点的に配分する仕組みを導入する方針を固めた。現在は主に学生数や教員数といった規模に応じた配分となっており、規模が小さくても研究力の優れた私立大には手厚い支援ができるようにする。』
このように私学助成金の基準が変わる中で、
東京医科大学について、
・研究力は、THE世界大学ランキングから考えると、
順天堂、慶應、東京医大、早稲田の順と、研究力が基準になることは東京医科大にとって有利に働きます。
・地域貢献度は、病院を経営していることから評価は高いでしょう。どう定量化するのでしょうか。
・教育力をどのようにはかるのか、わかりませんが、THE日本大学ランキングの教育力評価(教育リソース)では、学生一人当たりの教員数などが評価基準となっており、それが「教育力」として適用される場合には、一般に単科医大は強くなります。
とりわけ東京医科大学にとってはより有利になります。
THE日本大学ランキングの教育リソースも研究力が評価基準に含まれますが、
これは東京医科大学が、東大や早慶などの国公私立含めて5位、私立で1位ですので、これが基準となれば東京医科大学の助成金は多くなるでしょう。
②について、
令和7年度の事業計画では、表にあるのみで、詳しく内容について記載されていないところがより怪しいのですが、資産運用支出が桁違いに増えます。
予算について、令和7年度は22,513,445,000円、令和6年度は1,608,190,000円です。ざっと15倍です。
これほどの大きな変化がありながら、言及されないのは、大きなことをしようとしている証左と考えます。むしろ、「学納金の減額」なんかよりも重要な話な気もします。
私には学費の減額より、この資産運用支出が気になりますが笑
しかも
令和6年度実績 資産運用支出: 529億897万円。これは前年度(令和5年度)比で351億1,092万円(197.3%)の大幅増。
ちなみに慶應の資産運用支出は、2023年度は518億円、2024年度は554億円です。
https://www.keio.ac.jp/ja/about/assets/data/2023-report.pdf
https://www.keio.ac.jp/ja/about/assets/data/2024-report.pdf
さて、財源については、この辺りかと思います。
現実的には①で、これによる現在と比較した増額分が学費の減額分につながるというのが考えられます。補助金が増額された場合に、それを学費に還元してくれたらそれだけで学生・家計に優しい大学なのですが、どうなるでしょうか。
②は、大きな話であり、まだ発表できないようなことなのでは無いでしょうか。詳細が全く書いていません。東京医科大の規模から考えて、令和7年度予算225億は、ビッグプロジェクトだとわかりますよね。
何より、令和6年度実績 資産運用支出が529億897万円。これは驚異的。慶應の資産運用支出と同じくらいの額です。慶應と異なり単科大学なので、大学規模から考えると驚異的です。
今後予定されている東京医科大学の建設費は、すでに別に500億の積立があるとのことなので、文脈から考えると、建設費のためとは言えないでしょう。
さて、学費については、
減額度合いはわからないですが、個人的には、秋までにまとめるという私学助成金の金額増加分依存なのでは無いでしょうか、と考えます。



