「うれしいに決まってるじゃん」
小さな紙袋にはプリンの他にも掌サイズのフルーツケースが入っていた。
「さびしかったもんね」
小さな紙袋から掌サイズのフルーツケースを取り出して、かずは…パカッと蓋を開けた。
何が入っているんだろう?と思い、中を見たら、そこには僕が探し求めていた『かずなり』のコアラのビスケットが一個だけ…寂しいよとしょんぼりしていそうな感じで横たわる。
「きのうの夕方に『かずなり』をみつけたの。けど『まさき』がいなくて『かずなり』はさびしいと思うはずだから連れてきたの」
フルーツケースの中に入っていた『かずなり』のコアラのビスケットを掴む小さな指。
「まぁくんが『まさき』をみつけてくれたよ!きのうは寂しかったけど、あえて嬉しいね」
小さな指先に掴まれた『かずなり』のコアラのビスケットが『まさき』のお隣へピッタリと寄り添う様に置かれて…かずは頬を赤く染めながら嬉しそうに可愛らしく微笑んだ。
出会いたかった『かずなり』は…かずの所に行ってたから僕の所へは来なかったんだろう。
「はい!あーんして」
「…え?」
「おくちを開けて」
かずに言われるがまま口を開いたら、ぽいっと放り込まれるコアラのビスケット。
「……えっ!?」
反射的に動いた僕の歯は『かずなり』と『まさき』を砕いてしまったからビックリする。
折角…出会えたのに僕のお口へ入れられたから舌の上で粉々なんだけど。
良かったの?
「もぐもぐ」
何かを食べてるみたいに…かずは大きくお口を動かすので真似する僕。
2個のコアラのビスケットが喉の奥に消えちゃったけど…いいの?
「たべた?」
「………うん」
「これで『かずなり』コアラが、さびしくなる事はなくなったね」
「…………え?」
ニコニコと微笑むかずに…僕は首を傾げた。
「まぁくんのなかへ『まさき』コアラと一緒にはいれたから、うれしくて寂しくなくなったの」
そっか…両方とも食べちゃったから『まさき』は僕の中で『かずなり』と一緒にいるんだ。
ずっと。
「今…この辺かな……」
僕は…自分の左胸を指差した。
「まぁくんのしんぞーの所にいるの?」
かずは僕の左胸に耳をピタリとくっつけながら抱きついてくる。
ずっと『まさき』は『かずなり』コアラを離さないから僕の心臓に…居続けるよ。
「一緒に…ピッタリとくっついてる」
「ほんと?」
「うん」
「ぼくたちと…一緒だねっ!」
「本当だね」
今日のお誕生日会で僕達は…一緒にいるから『かずなり』と『まさき』は出会えて寂しくなくなった。
二人だから僕達は嬉しくなれた。
だから、僕達は…一緒だと最高って事なんだよ。
⚫⚫⚪END⚪⚫⚫