2011年10月29日:パート3

 本日4杯目の紅茶を片手に、その10に突入する。 小坂憲次前参院自民党幹事長とは、中曽根執行部で1年間、お付き合いをさせていただいた。 衆議院時代は、文部科学大臣や議員運営委員長といった重職を歴任したベテラン政治家だ。 バランス感覚もあるし、政策の知識も深いし、(議運をやっていただけあって)交渉も上手だ。 尊敬すべき政治家だと思う。

 特に、参院政審の地位向上に関しては、石破茂前政調会長との個人的な人脈も活用して、大いにバックアップしてもらった。 幹事長、政審会長、国対委員長を参院3役と呼ぶ。 小坂氏と脇氏と山本一太。 「金子みすゞ」の詩ではないが、タイプの違う3人が、うまく噛み合っていた。 毎日、気持ちよく仕事が出来た。 出来ることなら、小坂幹事長を中心とした前体制の中で、政審会長を続けたかった。 そのことを断った上で、ホンネを書かせてもらう。

 中曽根議員会長は、最後まで(少なくとも表面的には)「小坂幹事長を交代させる」という決定をしなかった。 参院役員人事をめぐる戦いの最終段階に至って、小坂幹事長が記者会見を開き、辞任を発表したのだ。 恐らく、中曽根会長が後任の幹事長候補を新たな人事案に入れると決めた後だと思う。

 参院人事をめぐる対立の中で、3派が最初から最後まで一貫して要求したのは、「小坂幹事長を交代させる」ことだった。 3派の人々は、当初、「人事案の中で問題なのは小坂幹事長だけだ。幹事長さえ変えてくれれば、それ以上の要求はしない」と言っていた。 実際、そのことを一生懸命、外に流していた。 

 「中曽根会長を本当に守りたいなら、小坂氏が自ら身を引いて、幹事長を退けばいい!そうすれば、中曽根体制はそのまま残るし、小坂氏の政治家としての評価も上がる。」「衆院で落選して参院に転身した後、いきなり幹事長になって1年やれたのだ。そんなに欲張らずに、1回休みをすればいいではないか!」 最初は3派が繰り返し発信していたこの理屈が、中曽根会長に好意的だった若手や中間派にも、浸透していった。 その経緯は、過去のブログにも書いた。

 議員会館事務所にやって来た若手・中堅議員たちは、同じことを口にしていた。 「一太さん!何とか、全面対決だけは避けるようにしてください。参院自民党のためにならない。残念ですが、ここは小坂幹事長にいったん辞めていただくしかないと思います。」 世耕弘成氏も、「全く同じ感触ですね!」と話していた。 以前のブログでも触れたが、「幹事長交代はやむなし」という党内のムードは、中曽根会長にも伝えた。 小坂氏に届いていたかどうかは、よく分からない。 この時期、小坂氏の意図については、様々な憶測が流れていた。 が、あまりに失礼な内容だ。(苦笑) ここには書かない。

 それでも、小坂幹事長に「辞任の動き」は見えなかった。 小坂氏が(最後の最後に)辞任記者会見をするまでの間、中曽根会長との間でどんな話し合いが行われていたのか、それは誰にも分からない。 え? 中曽根会長が小坂幹事長を無理矢理引き止めていたんじゃないかって?! 申し訳ないが、それは(幾つかの理由で)ないと思う。 小坂氏が自ら辞めると決めていたら、中曽根会長は、けっして拒まなかっただろう。 そう思う理由は、誰にも言わない。(笑)

 政治家は独立自尊の存在だ。 他の政治家の政治判断について、いちいち干渉するつもりはない。 でも、(本当に申し訳ないが)これだけは、言わせてもらう。 仮に自分が小坂氏の立場だったら、間違いなくポストを辞任していた。 かなり早い段階で記者会見を開き、「これこれこういう理由で役職を退きます!」と発表していただろう。

 そこには、2つの理由がある。 ひとつ目の理由は、そうすることが中曽根議員会長のためになる(=中曽根改革を継続することに繋がる)と思ったに違いないからだ。 普通に考えれば、こんな理屈になる。 「自分がポストに残れば、3派との全面対決になる。どっちが勝っても内部対立が決定的になる。逆に自分が退けば、中曽根会長は自らの手で後任を選べるし、他の仲間は全て執行部に残る。中曽根会長を支える布陣は崩れない!」と。

 2つ目の理由は、もっとシンプルだ。 いかなる理由があろうと、参院自民党内の半分近い(?)議員が、「あなたは交代するべきだ、あなたの交代はやむを得ない」と考えている。 そんな状況でポストを続けることは、自分自身のプライドが許さない。 だって、そうでしょう? 多くの仲間が「自分じゃないとこの役職は務まらない」「余人をもって代え難い」と思っていないのだ。 逆に言うと、「何があっても残って欲しい」という声が起こらないってことだもの。

 そうこうしているうちに、自民党本部人事の方向性も固まって来た。 参院役員人事のデッドラインが迫る中で、自分にとって「最も悲しい瞬間」が訪れる。 この件については、次回のブログで。


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