朝6時台の新幹線で地元に入った。午前9時。佐波郡境町で行われた「群馬県サイクリング大会」に出席。会場の広場には、自転車用のウェアを着た約80名の参加者が集まっていた。さっそく、群馬県サイクリング協会会長(*知らなかったでしょう?)としての挨拶をやった。

 「皆さん、協会長としての挨拶の前に、ちょっとだけご意見を聞かせてください。」なんだろうという表情に向かって、こう続けた。「ご存知のとおり、小泉総理が昨日、北朝鮮を訪問しました。金正日総書記との首脳会談については、各メディアでも、また家族会の方々からも厳しい評価がなされています。私自身もやや準備不足だったのではないかという懸念を持っています。今朝の政治討論番組でも批判一色という感じでした。そこで、皆さんにお聞きしたいと思います。今回の訪朝では5人の家族の帰国は実現しましたが、安否不明の10名の具体的な情報はありませんでした。核も問題でも大きな進展があったとは言いにくい状態だと思います。それを踏まえて、今度の訪朝が失敗だった、また評価出来ないと思う方、正直に手をあげて見てください!」 手を上げたのは参加者のおよそ3割だった。(*あれえ?少ないなあ。)「こんなやり方じゃダメよ。」という女性の声が聞こえた。

 

 そこでもう一つの質問を投げた。「それでは、今回の訪朝では少なくとも5名の帰国を実現したではないか。他の面では不十分なことがあったとしても、小泉総理の訪朝は意味があった、評価出来ると思う人は、どれくらいいますか?」 この質問に残りの7割が手をあげた。「そう言っても、小泉さんだから行けたのよねえ。5人の子供たちが戻ってきてよかったじゃない。」(女性)「山本さん。最初から一度には無理。一つ一つだよ。」(男性)という声があった。(*ふうむ。有権者は訪朝をかなり冷静に見ている感じだ。)

 

 正直言って、意外な数字だった。これだけ新聞やテレビが訪朝の結果について(昨晩から)批判的な報道を繰り返し、さらには家族会の多くの方々が(無理からぬことだとは思うが)「総理の訪朝は失敗、最悪の結果」と小泉首相を非難していることから考えて、「今回の訪朝を評価しない」と答える人が5割くらいはいると思っていた。どうも、国民世論が「メディアの予想どおりに動かない」という傾向は根を張りつつあるようだ。これはあくまで、群馬県の一部の人々を対象にした「ごく小さな世論調査」に過ぎない。が、最初の訪朝の際も、イラクへの自衛隊派遣の時も、群馬県各地の会合で行った山本流の「ポケット世論調査」は、国民全体のムードを正確に反映していた。

 

 午後、玉村町の畑で作業をしている後援会幹部を見つけた。車を降りて、声をかけた。「00さん、ご苦労様です。この間は東京に取れたての果物を送っていただいて、ありがとうございました。」「ああ、一太さん。わざわざ来てもらって悪いですねえ。」その場でこんな立ち話をした。「あのねえ、一太さん。最近、テレビを見ていると、どうも意図的に我々国民の選択肢を狭めている感じがする。判断するのは我々なんですよ。だから、最近、あまり見たくなくなってきたんだよね。」

 

 なるほど。イラクの人質問題についての世論は、政府や自民党が意図的に操作したものではなかった。彷彿として自然に起こったものだった。有権者が「一人称で物を考えるようになった時代」「テレビや新聞以外にもインターネットのような情報ソースがある時代」の世論は、必ずしもワイドショーや政治番組の報道に影響されない。国民は物事の本質をちゃんと見抜いている。政治家はもちろん、日本のメディアも、国民世論に対する認識(世論なんてどうにでも動くみたいな傲慢さ)を改めるべきだ。

 

追伸:明日。「対北朝鮮外交カードを考える会」のメンバー3名で鳥取県に飛ぶ。境港で北朝鮮船舶の入港やカニ漁の実態等を視察するためだ。特定船舶入港禁止法案の審議が一気に進みそうなムードになってきた。しっかりと理論武装しておく必要がある。