いつもあなたと | Where of me is prohibited ?

Where of me is prohibited ?

Still I live
And I go around the earth
The world is such a thing
The life is such a thing

出逢いは昂ぶる感情を芽生えさせ、躍動する鼓動を更に揺さぶり、魂は愛しさと悲哀で交錯する。

私にできることは誰にも似ない,変幻自在な貴方の影を追うことだけ。

私にはない考え方。

私には出せない答え。

私には予想できないこれからのこと。

時に簡単で時に複雑なシャレード。

家に帰ればあなたがいた。
いつも笑わせてくれた。
楽しませてくれた。

励ましてくれた。

勇気をくれた。
時にあなたを見つめたくさんの涙を流すこともあった。

全て受け止めてくれるあなたに優しい涙が溢れた。


私はいつもあなたに感情を揺さぶられ続けていた。


時間が解決してくれる物事も沢山ある。

でもある意味で時間の経過ほど残酷なものはないのかもしれない。


あなたのいる生活に私はどんどん慣れていき

いつしかあなたを見失った。


でも

私は

あなたを見失ったことにさえ気づいていなかった。


あなたの話が一方通行になっていた。

馴れ合いは、私から、出逢った頃の感情を忘れさせたし

あなたの存在は空気のように当たり前になり始め、そして日常の風景と化していた。


あなたがいなくなれば呼吸ができなくなることなんて、あの時私は気づいていなかった。

ある日突然あなたは私の前から消えた。


何の前触れもなく。

あなたが消えるなんてこれっぽっちも考えたことはなかった。

あなたのサインを私は見逃してしまっていた。

うろたえ動揺する私はあなたに問いかけずにはいられなかった。
あなたを叩き、どうしたの?何があったの?と詰め寄った。
答えは出ない。

耐えきれず私は夜も遅く電話を手にした。
あなたの気持ちを考える余裕などなくて、心任せの感情を相手にぶつけることしかできなくなっていた。

電話がつながると音声ガイダンスが聞こえてくる。

「この電話番号は現在使われておりません」

電話番号まで変えられてしまっていた。

ショックだった。

でも次の瞬間、光明がさした。

音声ガイダンスは新しい電話番号を教えてくれた。

すがりつくのもやるせなく感じるも、やっぱり私の元から消えた理由を確かめずにはいられなかった。

新しい電話番号にかけるには勇気が必要だった。
深呼吸をして電話をかけた。

2回ほど電子音がなり、電話が繋がった。

女性の声が聞こえた。

「パナソニックコンシューマーマーケティングでございます。どのようなご用件でしょうか?」

明るく丁寧な声だった。

よかった。
話しを聞いてもらえる。

私はわかりやすくゆっくりと話し始めた。

「テレビの電源を入れても画面が映らないんです。」

女性は私に質問した。

「テレビの型番はおわかりになりますか?」

ハッとした。
10年以上一緒に暮らしてきたあなたの型番を私は知らなかった。
慌ててあなたの周りをぐるっと見回し調べてみた。
それでもわからずあなたの「取扱説明書」を必死で探した。


「TH-36D30」

あなたにはロボットみたいな型番が付いていた。

女性は続けた。


「電源横のランプが赤く点滅してませんか?点滅しているとしたら点滅と停止を繰り返していると思いますので、点滅回数を数えて頂けますか?」


・・・。

ウルトラマンみたい。

私の知らないあなたのサイン。


私より、電話の向こうにいる女性のほうが、あなたに詳しいなんて。

ジェラシー。


「6回点滅しています・・・」

「そうですか。では、点滅が6回でその型番ですと10年以上経ってますので機械があれば修理できますがその場合2万円くらいかかりますけれどよろしいですか?」

2万円。

急な出費には痛い金額の提示。

あなたを取り戻す為にそんなにかかるの・・・?

でも、あなたが戻ってきてくれるなら惜しくない。


最新型のテレビに乗りかえることも一瞬頭をよぎったけれど。

もう少しだけ、このままあなたと歩んでいきたい。


2万円。


最新型は一桁違うはず。


もう少しこのままで。


次の日、パナソニックから派遣された技術者がやってきた。

私は缶コーヒーをふるまった。


技術者はたったの20分程度で修理を終えてしまった。

私は淋しくて眠れない夜を一晩過ごしたというのに。


私は問いかけずにはいられなかった。

「これでしばらくは壊れませんよね?」


技術者は答えた。

ゆっくりと丁寧に。


「今回はこの基盤をとりかえましたけれどね、他の部品も10年以上たってますから・・・なんとも・・・」


頼りない答えだった。

そして技術者は笑顔で続けた。


「この缶コーヒーもらっていっていい?」

私は頷くしかなかった。




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