12人の優しい日本人 | ほどほどに

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今、この自粛生活の中で、エンターテイメント界の方たちは大変な思いで過ごされていると思います。

なにかを発信しようと歌を繋げたり、過去映像をアップしたり工夫をしています。
宝塚も期間限定で過去映像の一部を配信しています。見始めたら止まらない!(笑)

様々な試みのひとつ、とても感動したのが
「12人の優しい日本人を読む会」というものを配信していました。

「12人の優しい日本人」は三谷幸喜さんの劇団
東京サンシャインボーイズで上演されたお芝居です。その後1991年に映画化されました。

私はこの映画を見たのですが、もう面白くて面白くて!私の人生の邦画ベスト5くらいにくるんじゃないかと思うほどです。
今でこそよく見る俳優さんも出ていますが、その時はなんだかよく知らない顔がほとんど。

でもその中の1人で、ブレイク前夜の豊川悦司さん、トヨエツが出ていました。
これがもうすごい印象的で。存在感とかっこよさと。なんだこの人!と驚きました。
その後「この世の果て」からの「愛してるといってくれ」で大ブレイク。納得でした。

さてこのお話は三谷さん得意の密室劇。
日本に陪審員制度がある設定で、審議の様子をひたすら会話で見せていきます。
12人の個性や背景が見え隠れしながら、有罪か無罪かについて話し合われます。
zoomでの朗読劇にはぴったりな内容。

俳優の近藤芳正さんが発起人のようです。
サンシャインボーイズの元メンバーを中心に
吉田羊さんらも加えた12人が、12分割した画面の中で台詞を語ります。見ているうちに、朗読なんかじゃない、芝居だと感じました。上半身と声と表情だけの表現、芝居。
それはそれは俳優さんたちの底力を存分に発揮して素晴らしい作品になっていました。

とても長いので見るのはちょっと大変なのですが、最後の大団円に向かうところは感動的です。相島一之さんは映画と同じ役でした。映画の頃の何倍も良い芝居で大熱演。最後は泣かされました。西村まさ彦さんもつられたのか泣いているように見えました。

クライマックスに入る直前、三谷さんが現れて
ちょっとグダグダにしかけましたが(笑)
小林隆さんの慣れた感じの対応でクリア(笑)

少しだけアクシデントらしきものがあったり、台詞の言い間違いがあったりしましたが、ほとんどなくて、やっぱり舞台と同じ緊張感とクオリティーだと感動しました。

一番印象に残ったのは12号の渡部朋彦さん。
初めて拝見しましたが、とても良かったです。
映画の12号は、加藤善博さんでした。悪役の多いかたでしたが、この時はよくしゃべる明るめの役で印象的でした。
渡部さんは加藤さんとは全く違う、温かみもある屈託ない感じでした。

あとは小林隆さん。自分の台詞ではない時も
役の仕草で雰囲気を出していてさすがでした。

ひたすらなんでもない会話を延々続けているようで、1つ1つが伏線のようにつながっていく様も気持ちいいです。 三谷さんらしい。

上演できないとか文化が死ぬとか政府がどうのとかばっかり言ってる俳優さんもたくさんいます。気持ちもわかりますが、何はともあれこんな風になにか行動を起こして演劇の力や素晴らしさを発信していくことの大切さ。
これこそが文化の、演劇の灯りを絶やさない事なのではないかと思いました。

プロの力を見て胸が熱くなりました。
どんな仕事でもそうですが、プロフェッショナルの姿は感動します。

1日も早くこのコロナ禍が終わり、また舞台や映画館やコンサート会場にエンターテイメントが帰ってくるのをひたすら待ち続けます。