こんにちは!

 

大阪府茨木市にある茨木元町どうぶつ病院です。

 

今回は口蓋裂についてのお話です。

 

口蓋裂は2の病態に分類されます。一次口蓋裂と二次口蓋裂です。

 

一次口蓋裂は口唇裂を合併することが多く、鼻と上唇の部分が裂けたように見える病態です。

症状は軽微であることが多く、外見上問題になってきます。

 

 

二次口蓋裂は、世間一般的に「口蓋裂」と世間で言われている病態で、硬口蓋や軟口蓋の正中に裂開があります。

そのため、重篤な症状が必ず現れます。

 

 

の範囲が口蓋裂の範囲です。硬口蓋と軟口蓋を両方含みます

 

いずれも生まれつき先天性の疾患であるため、生まれた時点でまず最初に口の中を確認しこの病気のチェックを行います。

 

なぜなら口蓋裂(特に2次口蓋裂)がある場合、お母さんのおっぱいを飲むと鼻の中に入ってしまい、さらにそれが気管に進み、肺炎になってしまうからです。赤ちゃんの肺炎はすぐに命に関わる状態となります。

 

従って、2次口蓋裂のある子は、生まれた直後から胃カテーテルで育てる必要があります。

 

今回のフレンチブルドッグの「らくちゃん」は、3頭兄弟で生まれました。

そのうち、らくちゃんを含め2頭が2次口蓋裂でした。

一頭は生後2日で亡くなってしまいました。

口蓋裂のある子は、その他の重大な先天性疾患を高率に併発しており、生後数日で亡くなってしまう場合が多くあります。

 

その併発している病気があるかないか見極める意味と、ある程度の大きさにならなければ全身麻酔をかけての手術は実施できないことから、生後3~4か月まで成長を待ってから口蓋裂の手術を行います。

 

しかしこれが大変です。

 

毎日、一日6~10回も胃カテーテルでの食事の給与を行わなければなりません(深夜も)。

 

らくちゃんは、最初、胃カテーテルで育てていたのですが、途中から嫌がるようになってしまい、量と回数を入れることができなくなりました。

そこで鼻カテーテルを装着することとしました。しかし、鼻づまりがひどくズビズビになってしまい、しかも頻繁に抜けてしまうので、その都度、病院に通っていただく必要がありました。またフレンチブルドッグは短頭種であることから、鼻の症状は呼吸状態にも影響を与える程になってしまいました。

 

それらの事から、次は食道チューブを設置することとしました↓↓。

食道チューブの設置には全身麻酔が必要となります。

生後2か月の時に、短時間の全身麻酔をかけ、食道チューブを設置しました。

 

 

食道チューブを設置してからは、ごはんをスムーズに与える事が可能となり、みるみる体が成長していきました。

そして生後3.5か月の時に、口蓋裂の整復手術を実施しました↓↓

「Von Langenbeck technique 」という方法で行いました。

 

 

 

術後2週目の状態です。口蓋の裂開部もなくなり、経過は非常に良好でした。

術後4週から、食道チューブを抜去し、ドライフードや水を自ら食べることを本格的に開始しました。

その後、ドライフードも自力で、むせることなく、たくさん食べることができるようになり、順調に成長しています。

 

この手術を成功させるには、本人(動物)の忍耐と、飼い主様の不断の努力が何より大切となります。

お二人とも、大変お疲れ様でした!。

 

茨木元町どうぶつ病院 松本淳