こんにちは!
茨木元町どうぶつ病院 獣医師の松本 です。
今回は歯が折れた場合、歯内療法についてのお話です。
歯が折れ、歯の中身(歯髄)が見えてしまっている場合(下の図)、必ず治療の必要があります。
なぜなら歯が折れ歯髄が露出していることを放置した場合、そこから細菌が入り歯髄炎から根尖膿瘍となるからです。
犬の歯で最も頻繁に折れてしまう歯は、上顎第4前臼歯です。
猫の歯で最も折れやすい歯は、上顎の犬歯となります。
従って犬の場合、歯が折れ、根尖膿瘍となると、眼の下の部分に穴が開いてしまう場合があります(下の写真)
もちろん根尖膿瘍(細菌)の影響は局所だけではなく全身に広がり、健康状態に悪影響を及ぼします。
治療法としては
①抜歯する
②歯を温存する(歯内療法を行い)
のいずれかとなります。
2つの治療法にはそれぞれメリットデメリットがあります。
①抜歯
メリット:一回の麻酔で手術が終了する
デメリット:歯の喪失
②歯内療法
メリット:歯を温存することができる
デメリット:定期的に麻酔下で治療した歯を確認していく必要がある
今回は根尖膿瘍になってしまったものの歯を温存することを選択した、歯内治療の治療例をご紹介させていただきます。
右眼の下が腫れ、排膿しているとの主訴でした。
右第4上顎前臼歯部に破折・露髄が認められ、
麻酔下での歯科レントゲン検査では右第4前臼歯部の根尖病巣が認められました(下図の赤矢印)
飼い主様は抜歯ではなく、罹患歯の温存を希望されました。
そのため、根管治療を全身麻酔下にて2回に分け行うことを計画し、同意が得られました。
一回目処置では、全身麻酔下にて根管の機械的清掃及び化学的洗浄を行い、仮詰め実施しました(下図)
4カ月後、根尖病巣が治癒していることを歯科レントゲン検査で確認後、
最終的な根幹充填を全身麻酔下にて行いました。
術後の写真です
上記と同様の処置を行った別の症例です↓↓
術後の顔面の容貌です。
右眼の下の穴が開いていた皮膚はきれいに治癒していました。
ワンコも痛みから解放され、躊躇なしに勢いよくドライフードを食べるようになったとのことでした。
お家で歯が折れたことが確認できた場合、お気軽にご相談ください。
茨木元町どうぶつ病院 松本淳