こんにちは!
茨木元町どうぶつ病院です。
今回は猫ちゃんの口内炎について書きたいと思います。
猫ちゃんは歯のトラブルが多い動物で、その事が原因で食べることができなくなることが多く経験されます(犬では少ない)。
また、その猫ちゃんが痛みに強く、重度歯科疾患に罹患しているが食べることができたとしても、歯科疾患による炎症反応が持続的に高い状態は、全身の内臓に悪影響を及ぼすため、どちらにしろ、早期に治療したほうが良いと考えられます。(以前のブログ参照→https://ameblo.jp/ibarakimotomachi/entry-12519343503.html)。特に猫ちゃんは腎臓への悪影響が最も心配されます。
猫の歯に関する病気として、大きく分けて3つあります【腫瘍(癌)性の疾患は除きます。】
①歯肉口内炎
②歯周病
③吸収病巣
①歯肉口内炎は、歯に付着している細菌に過剰反応し炎症反応が強くでてしまう病気です。
②歯周病は、口腔内の細菌により歯肉や歯の周りの骨が溶けていく病気です。
③吸収病巣は、破歯細胞によって歯が溶けていく病気です。
歯に関する病気の場合、抜歯してしまうという究極の治療法が適応できます。
しかし、抜歯を行っても、②歯周病と③吸収病巣は治るのですが、
①歯肉口内炎は、治らないことも多くあります。
また全ての歯を抜歯する(全顎抜歯)を行ったとしても、口内炎は治らない場合もあります。
全顎抜歯を行っても治らない口内炎の要因として、
・残根(歯の根っこが残っている状態)がある、
・ステロイド剤での治療を長期に渡って行っている、
・猫白血病ウィルス、猫エイズウィルスに感染している。
・密な環境で超多頭飼育をおこなっている。
・歯槽骨が平坦ではなく凹凸がある。
など が挙げられます。
今回、歯肉口内炎で、全顎抜歯を実施した症例を経験したので、ご紹介いたします。
歯の周囲だけではなく、口腔内全体に重度の炎症が認められます。
術前のSAAの値は66.65μg/mlでした(正常値3.75μg/ml以下)。
猫の歯肉口内炎では舌にも炎症がでます。
猫の歯肉口内炎の特徴として、口の奥に炎症があることが挙げられます。
最近では、猫の歯肉口内炎は「尾側口内炎・Caudal Stomatitis」と呼ばれることもあります。
切歯部、犬歯部の歯肉粘膜にも炎症が認められます。
切歯部には、肉眼的には歯がないように見えますが……
歯科レントゲンを撮影すると残根(歯のねっこが残っている)が埋もれている事が確認できました。
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残根は口内炎を持続する原因となるため、犬歯、切歯の残根を抜歯しました。
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また全ての部位の歯科レントゲン検査を行い、残っていた歯と、残根の全て抜歯しました。
その後、不良肉芽の除去、不整な歯槽骨の平滑化、炎症の著しい歯肉縁の切除を行い、
歯肉粘膜フラップを作成、吸収糸にて、抜歯窩を覆うように、埋没縫合を行いました。
↑↑術後2週目の様子です。すでに明らかな歯肉口内炎の改善が認められました。
術後4週目の様子です。炎症は若干残りますが、ほぼ正常まで回復し、治療終了となりました。
SAAの値は、術前66.65⇒術後5.68μg/mlまで低下しました(正常は3.75以下)。
今回処置を行った猫ちゃんは、治療によく反応し、4週で治療を終了することができましたが、
経験上、全顎抜歯による治療でも、3カ月~半年は治療の継続が必要なことが多いように思います。
また論文による報告では、全顎抜歯により60~90%の歯肉口内炎は改善するとの報告されていますが、どうしても治らない猫ちゃんもいます。
経験上、ステロイドによる内科的な治療を年単位で継続されている猫ちゃんは、全顎抜歯による治療に反応しないことが多いと思います。
猫ちゃんのお口が気になる方は、一度当院までご相談ください。
茨木元町どうぶつ病院 松本淳