こんにちは
茨木元町どうぶつ病院 獣医師の松本です。
先日、膝蓋骨内方脱臼の整復手術を実施する機会がありました。
膝蓋骨内方脱臼は、飼い主さん達の間で「パテラ」と呼ばれている病態で、膝蓋骨(膝のお皿)が内側に脱臼してしまう状態のことをいいます。
膝蓋骨内方脱臼の状態が続くと、変形性関節症、前十字靭帯断裂等の病態につながることがあります。
重症度に応じて、Grade1、2、3、4(4の方が重症)に分かれていて、今回、手術を実施した子は、Grade3でした。
Grade3でも、症状が全くない、体重が非常に軽い、等の症例では、手術対象外と私自身は考えています(様々な意見があります)。
しかし今回の手術したボストンテリアさん(1歳)は、膝蓋骨内方脱臼による明らかな症状(患肢の負重を軽くさせる、患肢で体を掻く行為ができなくなった等)が長期にわたり発現していたので、手術を実施することとなりました。
手術は何種類かの方法を組み合わせて行います。実際の手術の写真は刺激が強いので、図とレントゲンで説明いたします。
①まずブロックリセッション↓↓という方法で溝(滑車溝)を深くします。
②脛骨粗面転移術↓↓も実施し、脛骨粗面を外側に転位させ膝蓋骨を外側に引っ張ります。
(下図は逆の内側に脛骨粗面を転位させていますがわかりやすい図であるので掲載しました)
③縫工筋前部解放術、内側支帯解放術、外側支帯縫縮術、などの軟部組織(筋肉・靭帯)の再建術も行い、膝蓋骨を内側に引っ張る力を軽減します。
術後のレントゲンです↓↓
手術後、本症例のボストンテリアさんは膝蓋骨内方脱臼による症状が改善しました。
別の症例(ポメラニアン)のレントゲン像です
当院では、整形外科手術[骨折手術、膝蓋骨内方脱臼整復術、前十字靭帯断裂整復(関節外方]も積極的に行っております。
ただ私が手術したことがない特殊で難易度の高い整形外科手術は整形外科専門病院に紹介することとなります。
また整形外科は外科だけではなく、内科的な部分(治療)も多くあります。
運動器のことでお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。
茨木元町どうぶつ病院
松本淳