昨夜のなんでも鑑定団に登場したアメリカのレジーナ社製のオルゴール「STYLE355 チャイナクローゼット」についてあらためてご紹介したいと思います。


収録時の鑑定士の解説は結構長かったのですが、編集されて放送されたのは全体の3分の1くらいだと思います。

放送でカットされた解説を含めてご紹介いたします。


ちなみに番組で鑑定していただいたのは田中健さんです。

田中さんは那須オルゴール美術館の館長をされている方で、ご自身のコレクションを展示されています。

コレクションも素晴らしいですが、那須オルゴール美術館は建物も非常に豪華です。


チャイナとは磁器すなわち食器のことなので、チャイナクローゼットとは食器棚を意味します。


STYLE355は食器棚にレジーナのオートチェンジャーを組み込んだもので、オルゴール部分の前面をステンドグラスで隠しているので、一見ただの家具にしか見えません。


家具の扉のガラスは曲面になっているので、万一割れた場合は修復が大変です。


オルゴールは15インチ(約40cm)径ディスクを使用する12曲のオートチェンジャーになっています。


レジーナの15インチというオルゴールは当時最も人気が高かったオルゴーらしく、最も多くの製品が作られました。

当然ディスクも当時のものが多く残っています。


ディスクだけは現在も作られていて、アメリカのポーター社が新しいディスク販売しています。

またポーター社以外にも、当時のディスクと同じように穴を開けたリカットディスクを作っている会社があります。





レジーナの15インチオートチェンジャー自体も決して珍しいものではなく、コロナシリーズとしてオートチェンジャー式のディスクオルゴールは多数作られました。


しかし、STYLE355チャイナクローゼットだけは大変希少で、1905年に11台だけ製造販売されたことになっています。


オートチェンジャー部分に関しては、12曲連続演奏機能と、1曲を繰り返し演奏できるリピート機能の両方を持っています。

12曲演奏かリピート演奏かは背部にあるスイッチで切り替えることができます。


オートチェンジャーという発想が110年前にすでにあったこと、これらの機能が電気仕掛けではなく手回しゼンマイを動力とした機械仕掛けだけで行われることがすごいと思います。



鑑定士によると、ケース全てとオルゴールのメカ部分全てがオリジナルの状態を保っているとのことでした。


また、ステンドグラスの一部が割れていることが気になっていたのですが、これもオリジナルの状態を維持しているので修理はしない方が良いと説明していただきました。


ただし、メカの部分は現状でも正常に動いてはいるのですが、グリスが固まってきているので一度オーバーホールに出した方が長持ちして良いとのアドバイスをいただきました。

そのためチャイナクローゼットはスタジオから修理工房の方へ転送となり、現在メインテナンス中です。

もちろんメインテナンス費用は私の負担となります。


一般的に大型のオルゴールはコインを入れて演奏するタイプが多いのですが、コインを入れるタイプはお店に置くために作られました。

チャイナクローゼットはコインを入れるタイプではなく、もっぱら個人が自宅に置いて楽しむために作られたものであるという説明をうけました。


11台販売されたチャイナクローゼットが現在世界に何台現存しているのか正確な数は不明です。

そのうちの2台が日本にあるということはすごいことなのかも知れません。

もう1台は河口湖オルゴールの森にあります。

作られた当時に日本人が買った可能性は小さいでしょうから、戦後になってから輸入されたものでしょうか?

バブル期にオルゴール博物館が海外から買った可能性が高いと思います。

日本で確認されているのは2台ですが、もしかしたら知られざるもう1台があるかも知れません。