ライトノベル【Bom!No!!】002:最悪の誕生日(1)
大黒ミカ。
こいつとの出会いは忘れもしない、
小学校入学したての4月27日。
俺の誕生日。
半球体の遊具が目立つ、あの公園。
幼稚園年長の頃。
この地域で知らない者はいない、
怒羅夜鬼幼稚園のガキ大将、剛田が、
俺の大事な、大事なサッカーボールを、
アロンアルファで、半球体のてっぺんにくっつけたことで、
『おっぱい公園』
と、呼ばれるようになった、あの公園(正式名称は忘れた)。
俺の人生最大のトラウマは、
大事なサッカーボールが乳首にされるよりも、
痛烈に、
強烈に、
熱烈に、
その公園の砂場にて植えつけられた。
大事な乳首を弄べなくなってから半年後。
活発なサッカー少年は、砂場にシンデレラ城を竣工させる
砂アート職人にクラスチェンジした。
誕生日プレゼントに買ってもらった宝物が、
乳首になったことを親に伝えれば、
新しく買ってもらえた可能性は否めないが、
当時の俺は口が裂けても、
そんなことは言えなかったわけで。
まだ純情だったわけで。
ただ、捨てる神あれば、拾う神あり。
俺は恋に落ちた。
一目で恋に落ちた。
おっぱい公園で恋に落ちた。
初恋だった。
ピンク色のカチューシャが似合うかわいい女の子だった。
心を奪われるとは、こういうことを言うのか。
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ライトノベル【Bom!No!!】002:最悪の誕生日(2)
「あたし、大黒ミカっていうの!」
拾ってきた木の棒で
砂地に名前を書く。
そして、ニコっと笑いながら、
「お城すごいねー!」
と、褒めてくれた。
男が砂遊びかよ!と、
バカにされ続けてきた、
俺の砂アートがここにきて、ようやく役に立った!
ただ、あまりの愛しさと、切なさと、心強さと、
何よりも、彼女の笑顔で、頭がいっぱいで、
話しかけたいのに言葉が出なかった。
「あなたのお名前は?」
「俺?俺は…」
そして、俺も彼女と同様に、砂地に名前を書いた。
「九十九に、弓と馬で、つくもきゅうま。」
「へぇ。変わったお名前だね?」
「俺、この名前、あんまり好きじゃない。」
「なんで?」
「ナインティナインみたく俺、面白くないし。それに、」
「それに?」
「弓に馬だから、TVで見る行事だ!とか言われる。しかも、」
「しかも??」
「クラスに出木杉って奴がいてさ。」
「うんうん。」
「『九十九+きゅう=百八、まるで君は煩悩の権化だ!』って言ってからあだ名が『煩悩』。」
「煩悩??」
「あっ、知らないならいいよ。」
「でも、弓に馬だったらケンタウロスもいるよ! かっこいいよ!!」
「ありがとう。」
「じゃあ、あたしと一緒だね!」
「何が?」
「あたしの名前も神話に出てくるの」
「神話?」
「パパが、『ミカはパパとママの天使だから、天使ミカエルから名前を貰ってミカだ!』って」
「ミカちゃん、物知りだね。」
「えっへん!」
よほど、嬉しかったのか、ものすごい満足気。その顔もかわいかった。
俺も話しかけないと。何か、何か。
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ライトノベル【Bom!No!!】002:最悪の誕生日(3)
「ミカちゃんは名字が大黒だから神様でもあるね。」
「えっ?」
「七福神に大黒天っていう神様がいる。食べ物とお金の神様。」
「………。」
言ってから気付いた。焦っていたとは言え、女の子に言う言葉ではない。
「あっ!? ごめん、ミ……」
「かわいくなぁーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!!」
その言葉と同時に、俺は天を舞った。
天使でも神でもないのに。
小学生ができる技なわけがない。
ましてや、女の子ができる技であるはずがない。
大黒ミカ恐るべし。
ジャーマンスープレックスホールドを華麗に決めたのである!
漫画のように頭が砂場に埋まった。
まさにトラウマとともに、砂の中に植えつけられた。
そうか?
これは漫画の世界の出来事だな?
いや、動いているからアニメか??
なら、俺が主人公だ!!
そして、彼女がヒロインだ!!!
砂場に刺さった主人公。かっこ悪すぎる。
ただ奇跡的にここが砂場で良かった。
砂アートLOVE!
ここが砂場でなければ、おそらく死ん…いや、チンでいただろう。
おばあちゃんに、昔から滅多なことで
『死ぬ』と言う言葉は使うな、と言われてきた。
ただ、本気でチンだかと思った。
天使に地獄を見せさせられるとは思いもしなかった。
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