100年生き続けた錦鯉は
水面越しに見えるあかるい青を黙って見続けて
100年分のため息を
ぽかぽか吐き出していた
月日はどんどん変わって
いろんなものが生まれて
いろんなものがなくなって
自分だけはひっそりと生き続けて
廻ってゆく刻がいつしか舞踏会みたいに
きらきら光ってどんどん消えて
何年まえのことかも分からない昔を
思い出してはまたため息
ゆらゆら ぽかり
さらさら きらり
どうしてみんな いなくなっちゃうの
まだあと100年生きるんだろう
鯉は尾びれで水面を蹴った
くるくる泳いでまた落ちて
あたたかい草も もう死んで
それでもいのちはまだ在るの?
きょうも光を吸いこんで廻る