ボックスビーム試験施工とコスト算定 | 木造維新の30年

木造維新の30年

事業用建物の木造化を国内外で実践して30余年、これからも木材を永く使う技術の普及に務めます。
https://www.youtube.com/watch?v=d16mJsGUeXY

大手前大学の材料実験室をお借りして、井之上先生とボックスビームの試験施工を実施しました。
 
事例研究から基本設計を行い、試験体を考え作図後、メンバーに配布相談しました。
1)部材の種類の限定。
2)規格構造材で製作する。多くの実験は「ツガ」とか「スギ」としか記録されていません。この段階で商業化にならないと考えます。
3)告示のボックスビームは、あくまで、釘と合板で、それも意味のない斜め貼。参考になりません。釘だけでは材料間の一体化が実現されず、線形変形をする材料になりません。
特に、フランジとウェブの剛結が全てです。ただし接着剤ではなく物理的ジベルが必要です。ここは特許にもかかわるので写真は非公開とします。
 
材料は木材問屋さんからの提供価格、比較する集成材と同じ断面性能の大きさのボックスビーム(梁せい45cm以下)を作業台上で4名(2万円人工/日職人でなくてよい)で手加工作業を進めるという前提での試算です。
 

1.肝心のコストなんですが、6mを超える大きさだと、集成材よりも20%くらいコストダウンが可能な、材料代+人工が算出されました。

集成材工場ではなく、パネル工場の製作台の上で製作できれば図面寸法で製作できるので全体のコストはさらに下がりそうです。ずばり91,000円/m3 という数字が出ました(プレカット工場仕切り)

諸条件を見直し、材料の単価、作業速度、半機械化の3点が課題となりましたが、これらを改善すると商業化では65,000円/m3という数字が期待されます。機械加工でないので形状を変えたり、少数製作でしてもあまり単価が変わらないのでその点では商業化のハードルは低そうです。
 
イメージ 1
製作中のフレーム
 
イメージ 2
完成試験体
 
大きな発見は、このような大型木造用の梁にしては、2名でなんとか動かせる程度の重さです。これは、施工性から考えて非常に将来性を感じます。
 
小さな木材料から大きな木材料を創ることは、環境に優しい材料ができることだけでなく、大型木造建物を普及するのに大切なことだと思います。
 
木材加工の井之上准教授と二人で直接作業することで、加工工程の効率化を他の大学でできないような作業レベルの細かい製作手順の開発ができました。
意見を交換してきたことを机の上でなく、実物で実施する。現場主義の実践です。
 
 
理論と論点をきっちり押さえることも大切ですが、これを実物で実現すること。
部品の数を減らし、加工工程を削減すること。戦争に勝つことのできるエンジニアリングの実践です。
 
正直、昨今の大型木造はご祝儀コストのものが多すぎます。ある大学の先生の梁では、汎用木材を使っていると言いながらそのサイズが150mm x 150mm 材でできている。これは木材の知識があれば X だということは簡単に分かります。
 
今回の試験施工は、井之上先生と私の2名のみ、専任の大工さんや職人さんはいません。そして、5体の試験体を製作するなかで、作業工程ごとの時間を測定しました。
当然最初の1体目と5体目では、時間は大幅に短縮していますし、さらに、短縮の可能性も得ました。
 
材料代は安いが製作手間が読めないし、結局合計で高くつくといわれてきたものが、どうやらそうでもなさそうです。
2x4のパネル工場であれば、集成材よりもコストダウンは可能という結論になりました。とくに6mを越えれば明確です。

 
減価償却による採算に優れた事業用木造建物、鉄から木への転換のための技術提案、そして木造の大型化の最大の障害となる梁問題への Solution 。
木造維新は続きます。
 

2.木造維新

この記事を書いたのは2015年でした。このころ集成材や木材の価格は下がり続けていてこの価格では設計まで戻って仕様織り込みするのはインパクトが無いという産学連携メンバーでの木材企業の結論でした。いま2021,2022年になると木材の使用量の少ない組み立て梁の意味が高まってきていると考えています。

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