生き馬の目を抜く。田舎者が都会で暮らす前には、必ずこの言葉に注意されます。都会はコンクリートジャングル。食うか食われるかで凌ぎを削っています。

 

 騙し騙され、その結果、悪いのは騙された方。それが常識の社会ですから、常日頃から鎧を着て身を守っています。

 

 1年、2年と暮らすうちに、鎧を着ていることすら忘れ、騙されるより騙せと頭は条件反射。そうして生き残った者が勝ちだとなっていきます。

 

 もはや気づかなくなった感覚。それでもその感覚に、ふと気づく瞬間がある。それは正直者に出会った時。素朴で純真な相手に接すると、自分が汚れていることに気づきます。

 

 でもその汚れ、落とせば都会では暮らせない。だから目を伏せて、気づかないふり。こうして田舎者が都会で暮らし、ある日田舎に戻ってみると、生き馬だった自分の目が抜かれていることに気づく。

 

 とはいえ最近は、田舎暮らしを求めて移住者が増えているらしい。つまりそれは、純朴さが心を癒すことに気づいた証拠。みんな疲れているんだ。


 時代はまさに原始的感性を求めているらしい。