もう一匹は、メリーという名前のメス犬で、ちょっと臆病な犬でした。
ある時、父親と僕とメリーでキジ猟に行った時、ヤブに潜んだキジを見つけ、銃をかまえた父親が「ゴー」と掛け声をかけました。その声で、本来ならメリーはヤブに飛び込まなければならないのに、じっとしたまま動こうとしませんでした。
僕はチラリとメリーを見ました。メリーは尻尾を巻いていました。つまり臆病風に吹かれたのです。
思わず、僕はメリーの代わりにヤブに飛び込みました。それは本能としか言いようがありませんでした。
父親はヤブから飛び立ったキジを銃で撃ちました。バサバサと音がして、キジは地面に落ちました。メリーはそのキジを取りにも行きませんでした。
さすがに父親はメリーを叱りました。そして、代わりに僕の頭をなでました。いい働きをした後は、必ず犬をなでる習慣でした。まさしく僕は猟犬だったのです。
そんなメリーでしたが、その後、父親が狩猟を辞めても家で飼い続けることになりました。ちょっと臆病な犬でしたが、僕は一緒に遊んでいました。
おとなしい犬だったので、ジョンの時のように引きずられることもなく、近くで軽い散歩をしていました。
だからもう、同志というよりペットという感じでした。