初めての試練はPTAの委員を決める時でした。委員のほとんどが母親たちです。

なんとか難を逃れようと、母子家庭の方には申し訳ないと思いつつ、父子家庭を強調しました。

「学校には関わっちゃダメよ!」

そうきつく言った亡き妻の遺言は守らねばなりません。たとえ主婦業でも、こればかりは優先順位がありました。

それでも結局、一度だけ引き受けざるを得なくなりました。とにかく、委員会の数の多さと人数の多さで、必ず回ってくるようになっていました。

子供が人質にされているようなものですから、心証を害さないためにも引き受けました。委員会二十数名のなかで、男性ひとり。全委員会でもひとりでした。

ハーレムか大奥気分かと思いきや、結論の出ない会議にイライラ。早く終わりたくて、つい口を出すと、嫌な顔をされます。みなさん、会話を楽しんでいたんです。

ランチの誘いもありました。でも一度も行きませんでした。結論を出さない会話に、主婦業の初心者はついていけません。それどころか、空気を乱します。そして、遺言の意味が少しずつわかってきました。

とにかく学習参観も、帳面消しにちょっとだけ顔を出して、すぐに帰りました。もちろん、子供とは合意のうえですよ。