2008-11-30 16:31:02

「誰も守ってくれない」~家族が犯罪者に・・・ある日突然世界が変る。

テーマ:日本映画・タ行

『誰も守ってくれない』
Nobody to watch over me
(公開2009年・日本/118分)
公式サイト

32回モントリオール世界映画祭 ワールド・コンペティション部門

最優秀脚本賞を受賞。

11月10日(月)TOHOシネマズ六本木・スクリーン7
完成披露試写会にて鑑賞
(ブログ内の舞台挨拶レポはここ)

玄関先で示された1通の「捜査令状」。

その瞬間を境に家族が崩壊する。

「彼」を作り出した家庭が悪いのか。

行き場の無い憤りが一家を包囲する。

世間の糾弾の視線に晒され、

その日からその家族には

「プライバシー」と言う権利は存在しなくなる。

何もかもが昨日と違う世界。

これは、

家族の犯した重大犯罪により、

犯罪加害者の家族として一瞬にして全てを失った少女の

その後の人生の幕開けの物語。

彼女と彼女を保護する刑事の逃避行の先に待つものは?

マスメディアとネットの功罪をもう1度問い直す時期が来た。



<スタッフ>

製作:亀山千広
監督:君塚良一
脚本:君塚良一、鈴木智
音楽:村松崇継
リベラ 「あなたがいるから YOU WERE THERE」
<キャスト>
勝浦卓美(東豊島署刑事):佐藤浩市
船村沙織(中学三年生):志田未来
三島省吾(勝浦の後輩刑事):松田龍平
本庄圭介(ペンションの主人):柳葉敏郎
本庄久美子(圭介の妻):石田ゆり子
尾上令子(精神科医師):木村佳乃
梅本孝治(大手新聞社記者):佐々木蔵之介
坂本一郎(東豊島署暴力犯係係長):佐野史郎
稲垣浩一(東豊島署一係刑事):津田寛治
佐山惇(若い記者):東貴博(Take2)
園部達郎(沙織のボーイフレンド):冨浦智嗣



 

「全てを受け入れたとき、人は静かに強くなる。」

この映画では加害者逮捕後の家族の姿を、

私たちの「視線の反対側」から描いて見せています。

多くは犯罪と縁の無い世界で過ごしている私たち。

だからこそ気持ちは、より犯罪被害者の側に寄添う。
そして、だからこそ、
加害者側の視点で物を見ようなんて思いもしないで生きてきました。

その一方的な視点を少し方向変換させてくれたのが、

この映画を鑑賞する少し前に観た『BOY A』 と言う作品です。

(レビューはこちら)

『BOY A』 では、犯罪を犯してしまった本人のその後を描いています。

犯してしまった罪を償うことの難しさ、

「その後の人生」を生き直す事の難しさを、

加害者の視点から見せてくれた秀逸な作品でした。

 

この『誰も守ってくれない』 では、
犯罪を犯した者の周辺に存在する人々、つまり彼らの家族を描くことで
『BOY A』 のもうひとつ先の物語を私たちに見せています。

『BOY A』 で少年を社会復帰させる手助けをしたソーシャルワーカーがいたように、

『誰も守ってくれない』 でも家族(ここでは加害者の妹の少女)を保護する刑事が登場します。

社会から疎まれる存在の者たちに寄添う立場の人々・・・。

それは犠牲的とも言えるほど崇高な精神で行われている仕事なのに、

彼らも犯罪者と同罪の仕打ちを受けてしまうような社会を形成しているのは

紛れも無くこの私たちなのです。

犯罪を憎む気持ちは当たり前ですが、

被害者・加害者双方に執拗な好奇の目を向ける社会であってはならないこと、、

彼らを取り巻く人々や環境まで「歪める」社会であってはいけないこと。

当たり前の事ですが修正の難しいそのことを、この2つの作品は教えてくれました。

 

国は違えど「社会」と言う名の付くものの持つ体質はどこも同じ・・・。

この作品はこのことにも気付かせてくれました。

この物語が異国でも共感を得たからこそ

海外での脚本賞の受賞に繋がったのですから。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 

あまりに容易に人の命が奪われてしまう今日(こんにち)・・・。

凶悪な犯罪で犠牲者が生命を落としてしまったとき、
私たちは犯人に大きな憤りを覚えます。
何故彼は、彼女は命を奪われなければいけなかったのか。
何故彼は、彼女は人を殺めなければならなかったのか。
その背後にあるものを探そうとして、
私たちは加害者の育った環境にその原因を求めようとします。
そして加害者を育んだ家庭、家族にまで憎しみの矛先を向けてしまう・・・。
犯した罪が大きければ大きいほど、
行き場の無い憤りが彼らに向かうのです。
そしてテレビカメラに向かって謝罪する加害者の家族の姿を、
現実で幾度と無く私たちは観てきました。

「ある日突然、自分が加害者の家族になってしまったら・・・。」

家族のひとりの人格の崩壊。
家族の皆がその微かな兆し、サインを見逃したために、

ある日突然家庭が崩壊します。


捜査令状と言う一枚の紙が、
ひとつの家族の運命を一変させるのです。
様々な手続きが次々と事務的に進められていく中で、
加害者の家族達は、

自分たちが衆目の監視の中に置かれたこと、
その日を境に完全に世間から孤立したこと、
昨日まで住んでいた世界には二度と戻ることができなくなったことを、
少しずつ悟っていきます。

家族を犯罪者として壁の向こうに失う悲しみと衝撃以上の、
苦しみと痛みが自分たちを直撃する・・・。
一瞬にして地獄に落ちていく加害者家族の苦しみが、
まるで我がことのように感じられ、観ている間中ちくちくと心を刺し続けました。
たった一瞬にして、こうも簡単に幸せは崩れ去るのかと。
昨日までそこにあったささやかな家族団欄さえも
こんなにあっという間に二度と手の届かない場所へ行ってしまうのかと。

今の時代、いつ自分が同じ立場に立たされるか分からないという不安は否めません。

家族を信じる気持ちは100%でも、
冤罪と言う形も含めて何事も可能性がゼロとは言い切れないのですから。

主人公は加害者の妹、しかも中学生です。
彼女にははまだ先の長い一生が残されています。
この物語の中で、若く未熟な彼女に背負わされた十字架はあまりに重い・・・。
しかも彼女が背負わされたのは自らの罪を贖うためのものではなく、
家族の罪を贖うための十字架です。
誰が彼女にそのような十字架を背負わすことの出来る権利を持つのか。
あまりに理不尽であまりに惨い世間の仕打ち。
しかし、今まで私たちは無意識のうちに
多くの「彼女たち」「彼ら」を生み出して来ていたのです。

この映画を観るまでは意識の無いまま、
加害者の家族に対して抱いていた「思い」
それがどのような形で彼らを襲っていたのか、苦しめていたのか。
主人公の少女の目線で物語を追ううちに、
胸が苦しくなるほどの思いで彼女の痛みを疑似体験しました。

また、その他にも、
加害者の家族に対して取られる法的な保護手続きや、
彼らを保護する組織の存在、マスコミ・メディア・ネットの功罪など、
今まで知らなかったことをこの映画で沢山知ることが出来ました。
報道の裏側に隠されている様々な真実。

物語は単に加害者側からの視点から見せているだけでは無く、
少女を保護する刑事や犯罪被害者の家族の視点からも、
現実を切り取り見せてくれています。
わだかまりを乗り越えて少しずつ
「彼ら」の中に培われていく絆と、
苦しみと絶望の中で状況を理解し逞しく強くなっていく少女の姿は、
この救いの無い物語の中に微かな希望の光を与えてくれます。
少なくとも早々に現実放棄・戦線離脱してしまった彼女の母親よりは、
ずっと人間的に大きく育っていくであろう主人公の少女。

まだ幼い彼女の肩に家族の未来を託すのはあまりに酷です。
結局彼女の未来を明るいものに導いていくための手助けが出来るのは、
「社会の許容力」でしか無いと言うこと。

しかしそこに私たちが希望を見出すには、まだ少し時間が必要かもしれません。

完成披露試写会で鑑賞し既に2週間以上経っていますが、
未だに心に鉛を飲み込んだように重く圧し掛かるものを感じています。
様々な視点で、多くの事を考えさせてくれた作品です。
今一番強く思うこと・・・それは出来れば、

小学校高学年から高校生くらいまでの思春期を過ごす若い人たちに
ぜひぜひこの映画を観てもらいたい。
・・・と言うことです。
「自分が犯した過ちが如何なる結果を家族の上にも、自分の上にも導くか。」
若くはなくても未来に対する想像力の無い人たちにも、
この現実をしっかりと観てもらいたいし、疑似体験してもらいたいです。
そしてそのことが多少の犯罪の抑止力にはなるのではないかと思うのです。

「踊る大捜査線」の監督・スタッフが、
「踊る~」では描くことの出来なかった「警察」や「報道」の裏側を描こうと、
「容疑者家族の擁護」をテーマに取組み完成させた作品です。

手持ちカメラをメインに「セミドキュメンタリー撮影」と言う手法で、
出演者の表情をリアルに追って撮影されています。
娯楽に徹した前作とは全てにおいて違うアプローチで描かれた作品ですが、
今の時代が最も必要とする内容の作品だと思います。
重い内容の作品ですが、ぜひ多くの方に観ていただきたい作品です。



それぞれの立場に立って物を見たとき、
私たちは何をどう感じるのでしょうか。
何をどう感じることが出来るようになるのでしょうか。
互いの顔の見えないネットの渦の中で
個人のプライバシーまで覗かれてしまうような社会。

加害者が育った環境ばかりが責められるべきではありません。

情報の渦の中で歪んでしまったこの社会自体が
犯罪を生み出す要因のひとつになってしまっていることに、
気付かされるラストが何とも怖いです。


2009年1月24日(土)公開作品



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コメント

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6 ■はらやんさんへ。

実際に被害にあってしまったら、犯罪者の家族に対してどういう態度を取ってしまうか、自分でも分かりません。
でもこの作品を観て感じたことは、今後色々な意味で人々に良い影響を与えるのではないかな、と期待したいです。
少なくとも沙織のような人が理不尽な立場に追い込まれることの無い社会になってほしいです。

5 ■こんばんは

hyotan2005さん、こんばんは!

理不尽に攻撃される沙織を見ていると、胸が苦しくなりました。
そしてそのような中で、人として強くあるということの本質の気づいていく彼女の姿に希望を感じました。
重い内容ですが、確かに若い人に見てももらいたい作品ですね。

4 ■masakoさんへ。

TBとコメありがとうございます。
TBのお返しは少し遅れますが、
またコメントと一緒に必ずお返しに伺いますね。
脚本良く出来ていましたよね。
子どもが犯罪者になったらこんな風になってしまうのかと、心が抉られるような思いで観ていました・・・。
そういえば映画を観た直後にお会いしましたね
熱く語った気がします(汗

3 ■こんにちは

ひょうたんさんに先日お会いした時、この映画をご欄になった直後でしたよね。
私は土曜に観てきました。
難しいテーマでしたが、よくできた脚本だと思いました。

2 ■ジジョさんへ。

消化しきれない感じ、良く分かります。
社会が変り犯罪も減っていくように願ってはいるのですが、ゆるい変化を見守るしかないですね。

1 ■こんにちは☆

わたしもやっとの思いでレビュー書きました。
いまだにうまく消化できない感じですが、、
この映画もBOY Aも、国は違えど同じ様なテーマを描いていて、
世界中が抱える闇があるように思えました。

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