じゃり道の続く丘の斜面を、えっちらおっちらと、
みすぼらしい姿の若者が上っていきます。
若者の後ろからは目が廻るほどたくさんの人々が
ぞろぞろとついてきます。
しかし、人々はじっと口を噤んでいるので、
じゃり道の丘は静けさに包まれていました。
人々はみなおそろいの格好です。
つるつるとした生地でできた、フードつきの青い服を
あたまからすっぽりとかぶって、手には長いものと短いもの、
二本の銀のヤリが握られていました。
少しでも若者がぐずぐずとすると、すぐにするどいヤリで
突っつかれてしまいます。
若者は主人の言いつけで、荷物を丘のてっぺんまで
運んでいる途中でした。
その荷物の重いこと重いこと。
なんだか一歩前に進む度に、荷物がだんだんと
重くなっていくような気さえするのです。
でも、若者は荷物の中身を確認しませんでした。
若者には、それが後々自分のためになるとわかっていたのです。
荷物の中身はいったい何だったのでしょうか?
それは、荷物を運ぶ仕事を彼に言いつけた主人にさえ、
わからないのです。
若者は、誰にともなくつぶやきました。
「おいらは案山子の頭に、きちんとおがくずを詰めていなかった
だけなんだよ。いくらおがくずを詰めたって、ライオンやUFOはもとより、
スズメ君だってご遠慮してはくれないだろうになあ。
それにしてもなんだってこうも急かされなくちゃいけないんだろうか!」