夏休み明け、まだ残暑が厳しいなか大学の中にいると
エアコンが効いていて涼しかった。僕の親友のひとり
札幌から来ていた片桐は、暑くて眠れないと言って、
アパートの共用廊下に眠っていたくらいだった。

講義が終わり片桐たちが学食にいると思い歩き出すと
「鈴原くんでしょ?」と声をかけられた。
振り向くと、男女平等集会で専業主婦を差別するのは
女による女性差別だと訴えた桐生愛弓さんだった。

愛弓
「鈴原くんって茉莉子さんの彼なんだってね。意外だったなぁ〜。茉莉子さんの彼って歳上のしっかりした
男の人だと思ってた。」
「しっかりしてなくて、すみません。」
愛弓
「あっ、もしかして、拗ねた? 私、何となく分かって来たなぁ〜。茉莉子さんみたいな女の人は鈴原くんみたいな子を好きになるかもね。
私は男女平等に反対しているわけではないの。専業主婦も1つの生き方として認めてもらいたかっただけ。
男女平等運動には参加したいけど、肝心の茉莉子さんと、ああなっちゃうとね。」
「僕が茉莉子さんに話してみましょうか?」
愛弓
「ホント? 頼んでもいい?」
「今日帰ったら聞いてみます。」
愛弓
「鈴原くんって正直ね。今日帰ったら聞いてみますって、同棲してるってことでしょ?」
「えっ?・・」

夕方、僕は帰り道、スーパーでくじを引いたら、
輸入品だったがサーロインステーキの牛肉が2枚当たった。
茉莉子さんに持って行ってあげようと思っていたら
僕のアパートの部屋に電気がついていた。
茉莉子さんが来ていた。
僕がくじで当たったサーロインステーキの牛肉を見せると、やったー! と言って喜んでくれた。
茉莉子さんは、サーロインステーキ用の牛肉を少し焼くと一旦取り出し、刻んだニンニクで醤油のタレを作り、その中に途中まで焼いたサーロインステーキ用の牛肉を入れて完成させた。

僕は冷蔵庫のミックスベジタブルを温め、茉莉子さんに頼まれてバゲットを買いに行った。
そしてワインを炭酸で割ったワインクーラーを飲みながら食べた。
僕は桐生愛弓さんのことを話した。

茉莉子
「鈴原、話しを繋いでくれてありがとう。
明日、愛弓さんに会ってみる。
鈴原、私、どうしても愛弓さんに私たちの仲間になってもらいたいの。」

次の日の夜、僕は茉莉子さんのアパートにいた。

茉莉子
「愛弓さんと交渉成立して一緒に夕ごはんを食べることになったんだけどね、愛弓さん、一人暮らしの男の部屋を見たことがないって言ったから、鈴原の部屋で会うことにした。」
「僕の部屋でいいんですか?」
茉莉子
「いいよ。典型的な何処にでもある様な大学生の男の部屋だから。」
「夕ごはんは何に・・?」
茉莉子 
「愛弓さんと会った時、この間結婚した私の高校の時の友だちの話しになって、話している内にふたりとも
パーティーでよく出て来るカナッペが好きだということが分かったのよ。」
「カナッペって、リッツみたいなクラッカーの上に
いろんな物をのせたものですか?」
茉莉子
「そう、買い物は私がして来るから。」

その週の土曜日の夕方、僕のアパートで

茉莉子
「他の物は買って来たけど、リッツだけ忘れちゃったから買って来て。後、飲み物は何がいいかなぁ〜?」
「シャンパンだと思いますよ。」
茉莉子
「そうだね、シャンパンも買って来て。あっ、ドンペリとか買って来るなよ。」
「そんなお金ないから大丈夫です。」

僕が買い物から帰ると、茉莉子さんは愛弓さんを迎えに板橋区役所前駅に向かった。
30分ほどすると、階段を登って来る音が聞こえ、
ドアをノックする音が聞こえた。そして茉莉子さんと愛弓さんが入って来た、

愛弓
「鈴原くん、ごめんね。お邪魔しちゃって。」
「大丈夫ですよ。遠慮しないでください。」

愛弓さんは僕の部屋のなかを見ていた。

愛弓
「私、男の人の部屋ってらもっと散らかっていると思ってた。茉莉子さんがいるからね。」
茉莉子
「私は何もしてない。元々鈴原の部屋は散らかってなかったんだよ。男だから掃除の仕方は雑だったけどね」

僕たちは自分で自分の好きなカナッペを作りながら食べた。
愛弓さんはお酒の強い人だった。シャンパンを飲んでも全然顔が赤くならなかった。
自分でもお酒に強いと言った。

茉莉子
「愛弓さん、私の一番弟子になって。」
愛弓
「茉莉子さん、私のこと、愛弓と呼び捨てにして下さい。それから、鈴原くんがいるのに私が一番弟子でいいんですか?」
茉莉子
「鈴原は一番弟子にするには出来が悪過ぎる。」
「・・・」
愛弓
「鈴原くんは、それでいいの?」
「僕は茉莉子さんにブービー賞だと言われてますから。」
愛弓
「ブービー賞って?」 
僕 
「ゴルフ用語でビリから2番目という意味です。」
愛弓
「そうなんだ・・」

愛弓さんは自宅から通っていた為、9時前になると
そろそろ失礼させてもらいます、と言った。
茉莉子さんと僕で板橋区役所前駅まで送り、茉莉子さんは卒論の続きをやらなくてはいけないから、と言って自分のアパートに向かって歩いて行った。
僕は買い物をするため仲宿商店街に向かった。
商店街の入口の所で、後ろから愛弓さんに声をかけられた。

愛弓
「鈴原くん、これ私の夕ごはん代ね。」
「愛弓さん、いいよ。招待したのは僕たちだから、
それに茉莉子さんと2人で出してるから。」
愛弓
「私は自宅から通っているから気にしないで。
それに、鈴原くんは私の後輩でもあるから。ねっ。
それに3千円だから。
それより鈴原くん、ブービー賞から這い上がって。
私、待ってるから。」

そう言うと愛弓さんは、じゃあまたね、と言って
板橋区役所前駅に向かって走って行った。
僕は愛弓さんは優しい人だと思った。
茉莉子さんがいる所で、僕に割り勘代を渡さなかったからだ。 

これを読んで下さっている女性の皆さんは、
デートの食事代等、割り勘の時に彼に何処で自分の分のお金を渡していますか?
僕の希望は、
お店の中では一旦彼に全部払ってもらい、お店を出てから、お店の人たちから見えなくなった所で、あるいは、車に載ってから、これ私の分ね、みたいに渡して欲しいと思っています。
理由は、お店の中で彼にお金を渡してしまうと、
彼がお店の人たちに、この男の人はお金を持っていないんだ、と恥ずかしい思いをしてしまうからです。
お店の中で彼女から、お前の分の金よこせ、みたいに言う男は、同じ男として、女の人たちにお勧めしません。

また、僕は個人的にデートの食事代は、男が全部払ってよいと思っています。
理由
1、彼女に対する気持ち
2、デートのトータルコストの観点から
男は理髪店に行けば数千円で髪をカットすることが出来ます。美容室へ行っても女性ほどお金はかかりません。
衣類も女性の方がお金がかかります。
女性は、それプラス、コスメ代、アクセサリー代、
バッグ代等がかかります。
つまり、男の何倍もお金をかけて自分に会いに来てくれているわけですから、デートの食事代は男が全部払って良し、と考えています。


つづく