曜変天目」と呼ばれる希少な茶碗があります。

黒釉の下地に大小の瑠璃色あるいは虹色の光彩の斑紋が散在する美しい茶碗で、
この世に現存するのは3点だけで、南宋時代(12〜13世紀)に中国で焼かれたもの。

しかし、すべて日本国内にあり、国宝に指定されています。

静嘉堂文庫蔵、藤田美術館蔵、龍光院蔵)

もう1点、MIHO MUSEUMには重要文化財に指定された曜変天目茶碗がありますが、

国宝3点とは異なり、曜変は内面の一部に限られるため、

この天目茶碗を「曜変」と呼ぶかどうかは議論が分かれるところです。

なお、天目茶碗とは、天目釉という鉄釉をかけて焼かれた陶器製の茶碗を指します。

 

3つの国宝「曜変天目茶碗」のうち、私が観たことのあるのは藤田美術館のものです。

 

 

3点の中では静嘉堂文庫の通称「稲葉天目」が最高と言われることが多いようです。

実際に稲葉天目を観たことはないため、あくまで印象でしかありませんが、

藤田美術館のものも、それに負けず劣らず美しい逸品だと思います。

 

一方、最近「第4の曜変天目か!?」と話題になったのが、
テレビ東京系で放映中の「開運!なんでも鑑定団」に登場した個人蔵の茶碗。

 

 

番組では本物と判断され、2,500万円という鑑定結果が出ています。

それに対する初期の反応は「世紀の大発見!」的なコメントも多かったものの、

曜変天目の復元(再制作)に永年取り組んできた陶芸家の否定的な意見などもあり、
今では賛否両論、どっちに転ぶかわからなくなってきました。
ちなみに藤田美術館コレクションの基礎を築いた藤田伝三郎男爵が、
曜変天目茶碗を購入した時の値段は当時の金額で5万3800円。
現代の価値に換算すれば、4〜5億円に相当するとのこと。
仮に鑑定団に出た茶碗が本物だとしても、鑑定額の2,500万円は安すぎますね。

 

さて、現在、藤田美術館(大阪市)でこの曜変天目茶碗を観ることができます。

 

 

現在開催中の展覧会「ザ・コレクション」に出品されているからです。
私もさっそく先週末に行ってきました。
道をはさんで向かいにある太閤園という結婚式場には行ったことがありましたが、
藤田美術館には初めての訪問になります。
開館から60年以上経つこともあって、少々古びた印象も持ちましたが、
堅牢な建物や多宝塔のある庭などに風情がある、いい美術館ですね。

 

 

 

 

藤田美術館は、1954年に開館した由緒ある美術館で、常設展はなく、
春と秋に3か月ずつある企画展で国宝9件、重文52件を含む数千点の名品を公開。
古美術ファンにとっては知る人ぞ知る存在なのです。

もちろん今回も展覧会場(美術館内)は全て撮影禁止。
そのため、無料あるいは安価で手に入る資料類で展示内容を紹介しましょう。

まずはチラシの表面と裏面から。

 

 

 

チラシ半分のサイズ(A5)で、12ページの小冊子が200円で売ってあったので、
それも買ってきました。

 

 

中には出品作品の一部が載っています。

 

 

 

 

ただし、注意してください。
この展覧会は前期と後期の2会期に分かれているので、
ここに掲載されている作品がすべて一度に鑑賞できるわけではありません。
例えば、国宝に指定された作品が6点もある、ある意味で日本一の画家・雪舟

 

 

彼の「自画像」として知られるこの作品を観ることはできませんでした。

後期(5月2日〜6月11日)のみの出品です。

 

ちなみに曜変天目茶碗は前期、後期とも鑑賞可能な通期展示。

眺めていると、星がいっぱいの夜空に吸い込まれそうな気分になるこの名品を、
ぜひ実際にその目でご覧になってみませんか?
昨日も紹介したように、この時期は大阪市立東洋陶磁美術館で、
油滴天目」と呼ばれるもう一つの天目茶碗も展示されていますので、

 

 

見比べてみるのもいいかもしれません。
また、例年この時期には、大阪造幣局桜の通り抜けも実施されます。
今年の日程はまだ発表されていないようですが、

おそらく4月初旬から中旬にかけてになるのではないかと予測されます。

美しい天目茶碗と桜、両手に花といきませんか?

 

FUJITA「ザ・コレクション」■開催概要
会期/2017年3月4日(土)~6月11日(日)
時間/10:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日/毎週月曜日と3月21日(火)
※3月20日と造幣局桜の通り抜け期間の月曜日は開館)
料金/一般800円、高校・大学生500円、小学・中学生300円
会場/藤田美術館
住所/大阪市都島区網島町10-32
交通/阪JR東西線「大阪城北詰」駅下車、3番出入口から徒歩約2分
URL/http://fujita-museum.or.jp/