世界的な建築家、安藤忠雄さん。
関西出身なだけあって、関西には彼が設計した建物が数多くあります。
私が公私ともにお世話になる機会が多い美術館にも、有名な安藤建築があり、
雑誌「美術屋・百兵衛」でも何度か取り上げました。

関西にある安藤が手掛けた美術館の中で、最も有名なものは、
神戸市にある兵庫県立美術館ではないでしょうか?
(「美術屋・百兵衛」No.16:2011年1月発行 より)

1995年に発生した阪神・淡路大震災によって兵庫県、
特に神戸市の海側を中心とする地域は大きな被害を受けました。
その被害からの復興を願って整備された神戸東部新都心(HAT神戸)の
シンボル的存在として2002年に完成したのが兵庫県立美術館でした。

感受性を高め、瞑想へと誘う落ち着いた雰囲気のエントランスホール。
それとは対照的に自然光がふんだんに降り注ぐ展示室を囲むガラス張りの廻廊など、
建築内部の各所がそれぞれ陰影に富んだ表情を見せます。
さらに目の前に広がる海と巨大迷路のような建物が一体となって、
様々な光の変化を演出します。
訪れる時間や季節によって様々に変化する美術館だと言えるでしょう。

さて、この美術館の一角には、安藤忠雄建築研究所から寄贈された
建築模型・資料類によってこの館と近隣の復興プロジェクトを紹介する
安藤忠雄コーナー」が存在しています。
来秋オープンする新しい「安藤忠雄展示室」は、
既存の「コーナー」をスケールアップしたものだと考えればいいのでしょうか。

安藤さんが設計を手掛ける、延べ床面積735㎡の建物を増築するそうですが、
増築費用はすべて安藤さん側が負担するというのですから太っ腹です。
これまも展示されていた「光の教会」など代表作の模型やスケッチに加え、
現代美術館「プンタ・デラ・ドガーナ」(イタリア)、
表参道ヒルズ」(東京都渋谷区)などの模型11点が加わるとのこと。
1年半後の完成が今から待ち遠しくなります。

さて、「美術屋・百兵衛」に安藤忠雄さんが初めて登場したのは創刊2年目の、
2008年4月に発行したNo.5(特集:大阪文化考)。
お忙しい中、インタビューに答えていただくとともに、
大阪にある彼の代表作を紹介しました。
今は「大阪文化館・天保山」に名前が変わってしまった
サントリーミュージアム [天保山]」が懐かしい。

安藤さんの作品(建築物)はその後も「美術屋・百兵衛」で何度か取り上げており、
最新号であるNo.40(特集:台湾文化考)にも登場しています。
それが、台中市にある「亞洲大學 現代美術館」。
台湾で初めての安藤建築ということもあって、
建築ファンを中心にかなりの人気を集めているようです。
外観も、館内も参観系を基調にしたこの建物は、
本当に見ていて飽きない興味深いものでした。
もし、台中に行く機会があれば、ぜひ寄ってみてください。