セルフポートレイト」というアートのジャンルがあります。
文字通り、「自分自身を撮影したポートレイト」の作品のこと。
日本では三島由紀夫やマリリン・モンローにも扮した森村泰昌が有名です。
また、アメリカにはシンディー・シャーマンという人もいます。
2016年に第28回高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)を受賞したので、
ご存じの方も多いのではないでしょうか。

このセルフポートレイトの分野で、いま注目されているアーティストがいます。
1987年に埼玉県で生まれ、群馬県太田市で育った片山真理

モデルの山口小夜子(故人)を思わせるようなルックスの彼女は、
実は両足とも義足で活動すしているアーティスト。
先天性の四肢疾患によって9歳の時に両足を切断して以後、義足で生活しており、
装飾を施した義足を装着したセルフポートレートや、
自身の身体をかたどった立体作品などにより、
自らの身体・精神と世界との関係を作品化し続けています。

私も実際にこの人の作品を観たことがあるのですが、非常に印象に残っています。
2013年のあいちトリエンナーレで初めて遭遇したと記憶していますが、

過剰なほどの装飾に衝撃をうけると同時に、
禁じられたものを覗き見るようなスリルを感じました。
これまで経験したことのないような衝撃だったのです。
片山作品に接した人は、それぞれ違った印象を受けるかと思いますが、
私はそんな風に受け取りました。
昨年、森美術館で行われた

六本木クロッシング2016展:僕の身体(からだ)、あなたの声』でも
彼女の作品に出会い、再び衝撃を受けました。
残念ながら見ることはできませんでしたが、
ちなみに去年は「瀬戸内国際芸術祭2016」にも参加しています。

その片山真理の個展が、今週末、群馬県高崎市で開催されます。
しかも2箇所同時に!
ひとつが、群馬県立近代美術館の『片山真理「帰途」』展。

彼女にとって、作家としてスタートした美術館での11年半ぶりの展示となります。
今展では、初めて他人の身体を作品のモティーフとして取りんだことで、
自他の関係性というテーマが浮かび上がったそうです。
また、直島で発表した立体がさらに増殖するという噂も。
もちろん、特徴的なセルフポートレート作品も展示されます。
幼少期から慣れ親しんだ土地──利根川や渡良瀬川の河岸などで撮影したもの。
時間と空間の隔たりを超えて群馬へ帰り着いた片山の作品が、
どんな変化を見せてくれるかが楽しみです。

片山真理「帰途」■開催概要
会 場/群馬県立近代美術館 展示室5

住 所/群馬県高崎市綿貫町992-1 群馬の森公園内

会 期/2017年1月21日(土)-3月20日(月・祝)
時 間/9:30-17:00時(入館は16:30まで)
休館日/月曜日(3月20日は開館)
観覧料/一般300円、大高生150円

    ※中学生以下・障害者手帳等をお持ちの方とその介護者1名は無料

さて、同じ高崎市で開かれるもう一つの展覧会が、『片山真理 「19872017」』展。

こちらはラスクで有名なガトーフェスタ ハラダの本社ビルギャラリーが会場。
今展ではタイトルの通り1987年生まれの片山真理の、
現在(2017年)に至るまでの歩みを、代表的な作品により辿るものです。

片山真理 「19872017」■開催概要
会 場/ガトーフェスタ ハラダ本社ギャラリー

住 所/群馬県高崎市新町1207
会 期/2017年1月21日(土)- 2月8日(水)
時 間/10:00-19:00
休館日/会期中無休
観覧料/無料

ガトーフェスタ ハラダでの展覧会会期は約2週間と短いので、
残念ながら観に行くのは難しいかもしれません。
群馬県立近代美術館の方はできれば行きたいと思います。
車がないと行きにくい郊外型の美術館ではありますが、
緑の多い公園の中に立つミュージアムなので、
美術鑑賞だけでなく、ゆったりとした時間を過ごすこともできます。
東京から高崎まではアクセスしやすいので、
関東方面の方は、ぜひこの機会に
片山真理というアーティストのことを知ってください。