1回グルメの話題をはさんで、今日は台湾のアート情報シリーズ4回目です。
アートと言っても、今回は美術館ではなく、博物館の紹介。
とはいえ、建物は実に見事で、美術的な価値が充分にあります。
 

みなさん後藤新平という方をご存じでしょうか?
関東大震災から東京を復興させた名市長(現在の都知事)として、
小池百合子都知事がたびたび名前を挙げている人です。
実は、この後藤氏は東京市長になるずっと以前、
日本統治下の台湾で民政局長という要職を務めていました。
当時の台湾行政組織のトップ、児玉源太郎総督の補佐役です。
 

その児玉、後藤の2人の業績を記念し、顕彰するために

1915年竣工したのが「児玉総督および後藤民政長官記念博物館」。
現在の国立台湾博物館(正確には國立臺灣博物館)の本館の建物です。

設計を担当したのは、日本人技師の野村一郎、荒木栄一。
当時としては画期的な鉄筋コンクリート(RC)とレンガを混合したシステムです。
また、屋上は台湾産のヒノキを使った構造を採用し、銅板瓦が敷設されました。

 

雑誌「美術屋・百兵衛」台湾取材3日目の午後、この館を訪問しました。
室内に入ると、さらにそこには華麗な意匠が広がっています。
きらびやかな、天井ドームのステンドグラスであったり、

台湾内外の貴重な資材を使って作られた服抜けのホール、

そして、市松模様のモダンな床など。

ちなみにこの建物は、1998年「国定古跡」に指定されています。
日本でいう「國指定重要文化財」といったところでしょうか。

実は、児玉総督および後藤民政長官記念博物館ができる前の1908年、
日本政府が台湾南北縦貫鉄道の開通を記念して、
台湾総督府博物館」という施設を設立しています。
国立台湾博物館の歴史としては、これが端緒になり、
児玉総督および後藤民政長官記念博物館はその新館という形です。
台湾総督府博物館の開館当時からコレクションは1万点以上あり、
現在では膨大な数のコレクションを誇るまでになりました。

コレクションは大きく台湾の自然(動植物、地質)と原住民関連に分かれており、
それぞれ常設展示エリアで貴重な品々が公開されています。
自然展示の一部はこんな感じで、ジオラマなども採用されていました。

剥製の動物たちが設置さいてありますが、写真ではわかりにくいかもしれません。
原住民展示は現在台湾に居住している13の部族に関わるものが公開されています。

太平洋地域の民族の関連性や、その文化の類似性を示す展示内容もありました。
また、1Fには企画展示エリアがあり、訪問時には、
「流轉的騎跡-臺灣民生與腳踏車特展」という展示が行われていました。

台湾での自転車の歴史を物語るような内容です。

 

実は国立台湾博物館は、この本館の他に、

土銀展示館南門パーク(南門園区)を合わせて3つの施設から成り立っています。

南門パークは少し離れた場所にあるため行けませんでしたが、

昔の工場(樟脳と阿片の工場)を改装して博物館として使っているそうです。

土銀展示館も別の用途で使われた建物を改装したもの。


元々は日本勧業銀行台湾支店、その後は台湾土地銀行本店だったために、
土銀展示館」という名称が付いたようです。


土銀展示館の内部は、銀行当時の雰囲気を今も残しており、
金庫などかつての姿を彷彿とさせるものが数多く残されていました。

ただし、この館のメインの展示は生物の多様性を示す標本類。
特に巨大な恐竜の化石が旧銀行ロビーに鎮座している様は、圧巻です。

ただ、取材に対応してくれた方に聞いた限りでは、
台湾に恐竜はいなかったそうです。

 

本館に戻りましょう。

この建物が建っているのは「二二八和平公園」という公園の中。

かなり広い公園で、台湾一のターミナル駅である台北駅や、

オフィス街、そして官庁街から近いこともあって、
地元の人達の憩いの場となっているようです。
台湾らしく、太極拳(の武器法?)に興じる人たちの姿も。

亀や鷺のいる池や、巨大な楼閣もありました。

 

この公園の中で特に人気の高いのが、博物館の正門近くに設置してある2頭の牛。

なんでも、かつて圓山神社にあった牛を、戦後に移転したものだそうです。

圓山神社が建っていたのは、現在は圓山大飯店という高級ホテルのあるあたり。

戦時中の空襲で神社は焼失しましたが、この牛の銅像は難を逃れ、

博物館という安住の地を見つけたようです。

ちなみに、台湾の子どもたちは遠足や修学旅行でよくこの館を訪れるらしく、

その際には必ずと言っていいほど牛の銅像と一緒に写真を撮るという話。
建物やコレクションのことは忘れても、

この牛のことは大人になっても覚えているそうです。

 

国立台湾美術館(本館)■基本情報

住 所:台北市中正区襄陽路2号(二二八和平公園内)
交 通:台北駅から館前路に沿って襄陽路に向かって、徒歩で約5分
時 間:9:30〜17:00
休 日:月曜日、旧正月とその前日
料 金:大人30元(約100円)、小人15元(約50円)
URL:http://www3.ntm.gov.tw/jp/index.htm