彼の姿が見えた。戻ってくる。


冬ちゃん、わたし、彼を車に乗せないとダメ?

怖いよ、一緒に帰ろうよ。


姉は半泣きになっている。


とりあえず、朝と同じ彼の最寄駅までお願いだから連れてって。私もそこで降りて彼と話してくるから。


早口で言う。

ドアが開いて、彼が入ってきた。


じゃあ、とりあえず楽器だけお願いね、お姉ちゃん。いつでもいいから車で近くを通りかかる時に置きにきてニコニコ


必死に笑顔を取り繕う。


じゃあ帰りますね。お世話になりました!ありがとうございました!


挨拶をして、お宅を後にした。

車内では、なるべく普通に私と姉とで話していた。


Sくんはとても静かだった。


Sくんの最寄駅に着く。私も一緒に降りた。

姉の車を見送り、2人きりになった。


…どうする?どっちから話す?


…いや、そっちから話して?


ひとまず、涼しいところに移動しようか。


駅の近くのデパートの、フードコートに移動をした。


…開戦。