たまたまだが。
我らの青春の時代の異端の監督。
フェリーニや、黒沢だけではなくて、異端の異端、確かホモの男性に殺されたパゾリーニ監督あり。
カリギュラを見ていたら。やはり、シンクロニシティなのか、地下の古本整理でイタリア関連の本が多く手に触れる。
パチリ。
何か意味があるのか。
昔のイタリアは良かったなあ。もちろん今でも、独特の空気感があり。
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ラテンの国文化。
文学、そして、音楽。料理。ダンス。気候。
藤沢周の「ブエノスアイレス」は愛読したな。メモもとった。
ボルヘスが私の全てと言っても過言でもないな。
内縁の妻は日本人。
日本の女性は特に、世界に飛び散るのがお好き。
これまた、司馬遼太郎からドナルドキーンから三島由紀夫から柳田國男からみんなが指摘することの一つ。
異国があっての日本という視座。
村上春樹は個人的には好みではないけれど、蜘蛛女が好きだというのはよくわかる。
日本人好みそのもの。
内田百閒も戦争中二畳半の部屋でよくも創作を続けたもんだな。
「ブエノスアイレス午前零時」 <藤沢周>
独特の乾いたような文体で、入り込むようになるまで時間がかかるが、次第に藤沢氏の世界に足がはいりこみ、ラストのタンゴのシーンでは、少し感涙するべき文章になる。
老い、耄碌の美しさ、いや、肉体の醜体と記憶の生なましさ、とでも言うべきか。
夕方の薄暗さと雪の白さとがずっと均衡を保ったように、いつまでも暗くならない。部屋の中の照明をつけた時に、夜になるのだ。
こんな北国の表現におっと思う、著者は観察家だ。
カザマは腕の中の細い輪郭に、夏によく集めた蝉の幼虫の抜け殻を思った。
指で簡単につぶれてしまう。老女の体は外側だけで、中が空洞ではないかと思うほど、軽くて華奢だった。
雪の温泉の中でゆであがる卵。雪穴が真っ赤に染まる硫酸塩の現象。月に二度程バスで雪山の旅館までやってくる老人たち。ダンスタイム。
髪のポマードの匂い。ナフタリン。化粧品の匂い。
従業員がお客様に気を使いお客様と踊る役割をもする。カザマが気になる老人は、昔横浜で娼婦をしていたというミツコという名前の老人だ。妹が少しでも刺激をと思いここに連れてきたのだ。
そのミツコがカザマとタンゴを踊りながら、次第に記憶を少しずつとりもどしていく、というよりも、もうブエノスアイレスでの一夜を思いだしているのだ。
ミツコの左腕に力が入って、カザマの胸に細い体を押し付けてくる。足首にドレスの裾が巻き付いて、また緩んだ。
「いいの・・・・わかってるの。みのや、ホテルの・・・カザマ? さん? ・・・よね?
温泉卵の、においのする」
ブエノスアイレスの真夜中の色はミッドナイトブルーらしい。
彼女の記憶はさらに深まる。
あの若かりし頃、自分がまだ美しく神々しくさへあった時の頃へと。
ミツコが、アルゼンチンタンゴをプエノスアイレスで実際に踊ったかどうかは、明記していないが、
こんな記述もある。
「カザマは思い切って、プロムナード・ターンで回転させてみる。ミツコは何度かシューズのつま先で床を小突いたが、廻ってから首筋を反らせてポーズを決め、軽く息を漏らした。かなりのダンス・キャリアがあるとカザマは思う」
脳軟化症の老人のミツコの記憶の中にあるプエノスアイレスのタンゴのシーンは、こういう場面だったのかもしれない。それらの甘い想いでも今はすべてが彼女の皺の中に引き込まれ、頑固として扉をあけなかったのだが、カザマのいたずらにも似た好奇心が彼女のこころから記憶を繭の糸のようにひきだしていく。
資料A ブエノスアイレス (Buenos Aires) は人口303万人(2007年)を擁するアルゼンチンの首都で、どの州にも属しておらず特別区として扱われる(ちなみによく間違われるが、1880年の首都令以来、ブエノスアイレス州の州都はラ・プラタ市である)。意味はスペイン語で「buenos(良い)aires(空気)」の意。船乗りの望む「順風」が街の名前になったものである.
資料B
ミツコがふともらす、ポルテーニョという言葉を調べて見た。
フランス革命後、ヨーロッパでの戦乱の中でスペインがフランスと同盟を結ぶと、スペインの敵対国となったイギリスはこの地域の支配を目論み、1806年、ブエノスアイレスに侵攻を試みた。ラ・プラタ副王は逃亡したが、ポルテーニョ民兵隊は副王不在のままイギリス軍を撃退し、翌1807年再侵略をも撃退すると、自信をつけたポルテーニョ達のスペインへの忠誠は揺らいでいった。現在もブエノスイアレス市民のことをポルテーニョ(港の人)と呼ぶのはこの時の民兵隊の名前から来ている。
資料C
ブエノスアイレスは南米のパリと呼ばれる。モントリオール:「北米のパリ」と呼ばれている。 ベイルート:「中東のパリ」と呼ばれている。 プノンペン:「東洋のパリ」と呼ばれている。
資料D
ペルーのノーベル文学賞作家、マリオ・バルガス・リョサは「アルゼンチンの誇り高さは病癖であり、他のラテンアメリカ諸国から批判されても仕方がない」と言う。
愛国心が強く、また国という抽象的なものよりも友情などを優先する。
ナポリの方言が強く、スペイン語の中ではもっともセクシーと言われる。