ピアニスト  エルフリーデ・イェリネック |   心のサプリ (絵のある生活) 

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ピアニスト。こころのサプリ    

エルフリーデ・イェリネックは一貫して社会的抑圧や差別を題材にした作品を執筆している現代ドイツを代表する女流作家です。

ですが、彼女自身が父を精神病院で亡くし、ピアノを弾いていることを考えればこの作品のマチエールが見えてきますね。
レヴューを少し見てみますと、まあジェンダーの映画だとか、気持ち悪いとか、いろいろ書かれていますが、このエリカ(イザベル・ユペール)の性的な倒錯は誰しも皆女性ならば持っている筈。気持ち悪くもなんでもありません。
 
無意識の奥の奥にしまいこんで普段から抑圧しているから「なんだこのエリカの性癖は」と憤慨する方もいるかもしれませんが、皆頭の中では経験ずみ。たいしたことではありません。問題はそれがこのエリカのように実際に現出した場合のことだけで、普段の普通の奥様、普通の女性ならば皆潜在的に持つ欲望なのかもれません。隠された秘密という触れ書きでしたが、実際この映画の中では男性のボルノショップに堂々と入って行っているわけですから、秘密でもなんでもありません。
 あえてフェチという一般に誤用されている言い方を使えばこの彼女血液フェチなのかもしれませんね。そのように見えるシーンが何カ所かありましたが、私の勝手な独断で根拠もなにもありません。
原作をまだ読んでいないのでディテールがシネマだけだと明確にわからないのですが、なにやら血を見ると興奮する嗜好があるのではないでしょうかね。
普通にこのシネマを見れば宮沢りえさん風の母と子のしがらみやら、ストレスやら、自分の夢が思いどうりにならないことからくる欲求不満、サドマゾ、感情抑圧からくる性的な倒錯と見るべきなんでしょうが、私はそれ以上に重くて深く感じます。


女性に対する夢が瓦解していく、それが主人公の美しい青年ワルター(ブノワ・マジメル)の心なんでしょうが、簡単にわりきれないシーンもありますね。なにやら、彼女の性癖に興味を持ち、それをかなえてやらんとする情熱もまた悲しくも理解できますね。

正しい分析というものがもしも、あったとして、教え子の指を切るように仕向けて成功したあとのトイレでの行為、ピーピングルームでの行為、のぞき行為、風呂場におけるカミソリを使う行為、愛するワルターに哀願する暴力行為、そしてラストの胸をナイフで刺す行為、これらの行為をもしも正しく分析されたとしても、謎は残りますね。
 そして、そのほうがこの映画の深さを保障するわけで正しき分析=正しい映画の見方というわけではないでしょうから。

 女性の性癖がこれほど明確に主張されて、それもまた、時代に即して私はいいんだ、そう思います。

 

 

 

 

 

 

 

エルフリーデ・イェリネク(Elfriede Jelinek, 1946年10月20日 - )は、オーストリアの小説家、劇作家。2004年ノーベル文学賞受賞。



経歴 エルフリーデ・イェリネック
シュタイアーマルク州ミュルツツーシュラーク郡に生まれる。父はユダヤ・チェコ系の化学者で、母はルーマニア系のウィーンの富裕層出身のカトリックであった。ギムナジウム時代よりウィーン市立音楽院に通い、パイプオルガン、ピアノ、リコーダーを、のちに作曲を学ぶ。ウィーン大学で美術史と演劇学を専攻し、在学中の1967年に詩集を出版。同年大学を中退し作家活動を開始する。他方音楽学校での勉強は続けており、1971年にオルガン奏者国家試験に合格し卒業している。

イェリネクの活動は小説、劇作、エッセイ、翻訳、ラジオドラマや映画のシナリオなど多岐に渡る。1974年から1991年まで共産党に入党しており、初期にはマルクス主義の観点からの搾取批判と文明批判的な作品が多かったが、後に父権性社会や自国オーストリアの硬直した因習性社会に対する糾弾に重点を移していった。一方で過激な性描写や辛辣な自国批判などからオーストリアの保守団体からは「ポルノ作家」などとして非難に曝されることも多いが、男性による性の支配的暴力性を文体的に異化しつつ、その家父長制的欺瞞性を告発している。

1998年のゲオルク・ビュヒナー賞受賞をはじめ多数の文学賞を受賞し国際的にも評価が高く、1983年の小説作品『ピアニスト』はミヒャエル・ハネケによって映画化され2001年のカンヌ国際映画祭でグランプリに選ばれている。

2004年のノーベル文学賞受賞の際には「自分が公の人になってしまうのは残念だ」と述べ、トマス・ピンチョンや同じオーストリア出身のペーター・ハントケのほうがふさわしいのではないか、と語った。また2005年、イェリネクの作品を「不愉快なポルノグラフィ」「芸術的な構築を放棄した文章の山」としてノーベル賞の授賞に抗議し、クヌット・アーンルンド(en)がスウェーデン・アカデミーを退会している。

主要作品

 

 

  • 牧歌詩人(bukolit. hörroman、1979年)
  • 私たちは囮だ(wir sind lockvögel baby!、1970年)
  • ミヒャエル(Michael. Ein Jugendbuch für die Infantilgesellschaft、1972年)
  • 愛人(Die Liebhaberinnen、1975年)

     

     

     

     

  • 締め出された者(Die Ausgesperrten、1980年)
  • ピアニスト(Die Klavierspielerin、1983年)

     

     

     

  • 荒野よ、彼女を守るものよ(Oh Wildnis, oh Schutz vor ihr、1985年)
  • したい気分(Lust、1989年)
  • 死者の子供たち(Die Kinder der Toten、1995年)
  • 情欲(Gier、2000年)
  • 嫉妬(Neid (Privatroman)、 2007年)