学生の街だと思い込んでた高田馬場。
誰の街でもない、みんなの街。
そこで出会った夜の灯り。地下だけど。
新手の家系と思いきや、
新種のフライ料理店、Fry家。
階段を呑気に降りている時はまだ俺は、
フライの奥深さを知るよしもなかった。
フライって、とんかつだけじゃないのよ。

フライといえばガッツリ系、コテコテ料理。
そんなイメージを持っていたが、
コース料理という言葉がつくと、
とたんに上品になる。

いただくコースは8000円のメニューA。
カウンターに座り、
フライヤーから聞こえてくる油の音に耳を澄ます。
香りつきの油サウンドは心地が良い。

山盛りキャベツを皮切りに、まずは鶏のささみフライ。
塩で食べてほしいというわけで。
俺がこれまで食べてきたどのささみフライよりも
柔らかい。なんという歯切れの良さ。
歯が肉に吸い込む。同時に旨味がほとばしる!
間髪入れずにロース!
早々に、とんかつのど真ん中。
脂って無味無臭のはずなのに、脂が美味く感じる。
錯覚なんだろうが、それでもいい。
生きてることが錯覚かもしれないんだから、
美味しいと感じた時点で現実だ。

グリーントマトの野菜フライ。
熟してないんじゃなくてこういう品種。
酸味があって歯ごたえがあってフライ向き。
いいぞいいぞ、肉一辺倒じゃないところが大人だね。

面白かったのが、アジフライドック。
コース料理の中でパンが出てくるとは。
料理の世界もジェンダーレス。自由でいい。

その後のフライはシキンボ、ヒレ、穴子フライ。
フライ以外の、オシャレな料理に舌を鳴らし、
最後の食事は冷麺(カツカレーも選べた)。
フライ料理食べに来て、冷麺をいただけるとは。

油がいいのか、素材がいいのか、料理がいいのか。
揚げ物をたらくふく食べたって言うのに
まったくもたれてない、あら不思議。

学生時代、高田馬場に通っていた俺に言いたい。
数十年後、お前はこの街で新しいフライと出会う。

メニューA
・サラダ(キャベツ)
・極みのささみフライ
・野菜スティック
・ロース
・本日の野菜(グリーントマト)
・アジ
・シキンボ
・口直し(しじみ汁)
・本日の野菜(茄子のおひたし)
・魚介(アナゴ)
・ヒレ
・しゃぶしゃぶ
・冷麺
・デザート