どこの小学校にも、怖い話の1つや2つはある。

 

僕の塾にくる生徒の学校にも七不思議じみた噂があるようだが、それを七つとも知っている子は少ない…。

 

今回は塾の近隣の小学校の七不思議の1つ、5号館、2階にある封鎖されたトイレの話だ。

 

板張りで完全封鎖されている空間というものはやはり子供たちの好奇心を煽るには十分すぎるものらしく、色々な理由が想像されていたようだが、そのどれにも確証がない。

 

それこそが都市伝説や七不思議の特徴というものだ…。

 

もともと5号館というのは臨時教室と学童としてだけ使われていた古い校舎だった。

 

大掃除の時期に、僕の生徒の班がそのトイレの前の廊下の掃除に割り当てられたらしい…。

 

普段は完全に封鎖されていたトイレも大掃除のせいか、その時は開いていた…つまり自由に出入りできる状態だった。

 

勿論、子供達はその中が気になって覗いてみた。

 

電気はいまだに生きていて、その埃っぽいトイレ内を照らし出した。

 

別になんて事もないただのトイレだ…。

 

何故封鎖されたのかわからないぐらい普通で壊れている所も見当たらない感じだったらしい…。

 

4人いた内の2人が中に入って、トイレの個室を見に行った。

 

すると急に出入口付近にいた1人が頭痛を訴えた。

 

トイレの奥を指差し、頭を押さえながら外に出ていったと同時に、電灯が落ち、薄暗いトイレの中でトイレットペーパーを回すカラカラという音が聞こえ初めた。

 

全員パニックに陥り、トイレから逃げ出し、涙目で職員室の担任の所へ到着、事情を話し、共に確認に行く事となった。

 

そして皆が見たものは…板張りで封鎖されたままの…トイレの入口だった。

 

厳重に封鎖されたままなので人が入れるわけがない事が確認できた。

 

担任はイタズラに巻き込まれたと思ったらしく、その場で軽い説教をしようとした時、トイレの中から音がした。

 

子供たちの持つ非常用防犯ベルの音だ。

 

驚いた担任は中を確認しようとしたが、封鎖されているので確認など出来ない。

 

班の一人が『あれ…。あたしの…やと思う…さっき落としたんや…』

 

と言ったが目の前には封鎖された扉。

 

入れるわけがない…。

 

それでも担任はどうやって中にベルを入れたのか疑っていたようだが、子供たちの余りの怯えよう、子供にどうにか出来そうもない封鎖扉など何度も見比べて、段々と顔色が悪くなっていったらしい…。

 

結局鳴りやまないベルを放ってはおけず、用務員を呼び、板を剥がし、封鎖を解除してベルを回収、もう一度封鎖し直してこの事態は収拾した。

 

防犯ベルは確かに彼女のものだった…。

 

用務員が封鎖を解除している間、担任はどこからベルを投げ入れたのか?等と疑っているようだったが、封鎖が解かれてからは疑う事はなかった…。

 

扉が開かれた時、埃で汚れたトイレの床にある複数の新しい足跡を見て一瞬硬直した後、奥に転がる鳴りやまないベルを回収し一言

 

『もう一度至急封鎖してください』

 

と用務員に言い、子供たちを下校させ、逃げるように職員室へ帰ったという…。

 

足跡は封鎖されていた扉の真下、扉が開かないと踏めないような所にもあった。

 

僕の生徒は、最後に再封鎖を任された時、用務員が小さく呟くのを耳にしていた。

 

『だから封鎖してるんだよ…。』

 

これは何を意味しているのか…。

 

用務員が何かを知っている雰囲気は否めない…。

 

今もそのトイレは封鎖されたまま、無用の長物と成り下がっているらしい…。