★太気拳・意拳(大成拳)の特徴 (至誠塾HPより)

王郷斉老師は、形意拳の達人であり、師でもあった郭雲深の強さの秘密は気にあったと考え、気なくしては技はないと考えました。そこで気の養成法である立禅に注目し、まずこれを訓練の土台に置きました。よってこの拳法は立禅なしに語ることはできず、立禅の後に習う様々なトレーニングもすべてこの立禅の延長です。ただし、ここでの‘気’とはよくテレビで見られるような、人に触れずして倒すと言ったようなものではなく、単なる条件反射・運動神経といったものを越えた究極の運動神経と考えてください。

よく澤井先生の動きは人間の動きを遙かに越えており、それはもうミズスマシやエビのはねるような瞬間的な動きだったと言われていますが、これこそこの気によるものだと考えて良いと思います。ただし、これは長年修行しているうちに、自らが身体で初めて理解できるもので、長年修行したもののみが体験できる、ご褒美のようなものと私は考えています。

また王郷斉老師は「中国拳法は何千とその門派があるが、不意の攻撃を受けるときのパターンがいくらもあるはずはない。そしてそのときに身体から出てきた自然な動作こそが武術である」と語っています。王老師は研究熱心で、形意拳を初めとして梅花拳、八卦掌、白鶴拳、少林拳など様々な中国武術を研究し、そのエッセンスを抽出した後にその形(型)を捨て、いくつかの数段階の基本的な動きを習得し、あとは組手を行うというシンプルな拳法となっています。この拳法が有形無形、形あって形なし、とよく言われるゆえんです。私も以前、別の中国武術をかじったことがありましたが、延々とつづく型の習得に嫌気がさし、これをやっていて実際に戦うとき、相手がこちらの望むように動いてくれ、型どおりに自分も瞬時に、そして臨機応変に動くことが果たしてできるのだろうかと、たびたび疑問を感じていました。この型をなくし、自然に技が出るようになる拳法であるという事を知ったときに、太気拳の門をたたく決心が付いたといっても過言ではありません。

またこの拳法は、王老師の時代に様々な中国拳法を集大成したという意味で、大成拳とも言われていたことがあるように、「動きが柔らかく円の動きをし」、「不要な力を使わずタイミングとバランスで戦う」、「身体どこからでも力を発することができる」、「拳を堅くにぎらず、掌を使う」、といった多くの中国武術の特徴を持っています。しかし、一般的にはこれまで述べたように、気(意念)というものを重視し、型をなくした革新的な拳法といえば、その骨格はつかみやすいかと思います。