先月中ごろ,知人のOさんが,映画「オッペンハイマー」見て凄く強いインパクトを受けたとのことで感想文(A4,二枚ぎっしり)を送ってくれたのだが,それに藤永茂著「ロバート・オッペンハイマー 愚者としての科学者」を読んでいると書いてあった.藤永茂は昔(1980年頃),岩波科学で随筆が印象的だった記憶があったので,早速購入して読み始めたのだが,実に良く調べて自分の判断を下しており読ませる.頭のボケと眼の衰えで1日2,3節を読むのがようよう.で3週間余りかかってようやく一応終りまでたどり着いた.ただ,記憶が失われ大半は頭に残っていない.

 

オッペンハイマーはロスアラモスでの原爆開発の中心人物だが,元々は理論物理学者.1904年生まれで,大学院生の頃に量子力学誕生の現場に居合わせ,核分裂連鎖反応発見のただ中で仕事をしている.この辺りは具体的に多くの科学者の中でオッピーが過ごした過程が詳細に書かれていて面白かった.核融合反応を使った水爆開発にはかなり否定的で,当時の米ソ対立の状況からスパイの疑いを繰り返し受け,1954年の聴聞会で最終的に公職追放となったが,科学者仲間内では支持者は多く,1963年にフェルミ賞を受賞している.1967年に喉頭がんで亡くなった.

 

藤永茂(Huzinaga, Sigeru)さんは1996年にこの本を書かれ(70歳),2021年に新書として再販されている.今98歳でお元気のようだ.

 

さて,映画「オッペンハイマー」を見に行くべきか.もう刺激の強い映画は見ないようにしているのだが,3時間以上に及ぶ映画を見たくもあり,多分判らないだろうと思ったり(字幕).Oさんは最初に映画を見て,藤永本を読んだ後もう一度見て理解が進んだとのこと.

 

PS1    藤永茂さんを検索すると,Wikiの記事がありそれにブログのリンクがついていたので覗いてみた.私の闇の奥 (goo.ne.jp) タイトルは自ら翻訳されたコンラッドの作品からとっている.今も活発に書いておられ,映画オッペンハイマーについて,オッペンハイマー現象・オッペンハイマー産業とか,いろいろ論じておられる.

 

PS2  上にも書いたが昔,岩波科学(月刊)に随筆を書いておられInvisible manなぞ印象的だったのでそれらが纏まった「老いぼれ犬と新しい芸(岩波)」を借りてみた.一通り読んで相変わらずなのだなと思ったが,最後の「サイエンス・フィクション」はタイトルはそうかも知れないがちょっと過激すぎで後味が悪く残念. (2024.5.17)