9月25日の出版日付だが、19日に受け取り少しずつ読んで一通り読んだ。この本の写真の大半は著者が撮り溜めた6万コマのスライド等からとの事。火山の現場で何を観察し、何を考え調べたか、良く分かる内容で、宇井先生の60年余りの経験が詰まっている本。

 普通の火山の教科書とは章立てが異なっているが違和感なく読めた。1. 流れる溶岩、2.降り注ぐ噴出物、3. マグマの通り道、4. 割れ目は語る、5. 火砕流とその仲間たち、6. 火山が崩れる、7. マグマと水のせめぎあい、8. 火山がもたらす災害と防災対策、9. 火山の基礎知識。

各章末尾には2〜3頁のコラムがあり、いずれも宇井先生の経験から有用な内容が書かれている。1. 米国流の国立公園、2. 新たに噴火が始まったときに行われる火山灰の緊急調査、3. キッチン火山学、4. ニュージーランドの火山を歩く、5. 研究者が火山を歩くときの装備、6.セントへレンズ国立火山モニュメント、7. 地層剥ぎ取り標本を作る、8. 火山のジオパークに出かけてみよう、9. 世界の火山データベース。

いずれの章も火山の現場で観察し、考え、の繰り返しで理解を深めたことが書かれていて勉強になるが、読んでいて一番面白かったのは第6章、火山が崩れる。磐梯山1888年噴火、ベズミアニ1956年等での研究史を丁寧に記し、セントへレンズ火山1980年噴火の現場、地形と露頭観察から岩屑なだれと特定する方法、などなど、さすがにこの分野で世界のトップに居られた内容。

火山のジオパークに山陰海岸ジオパークが抜けているのは、図2-12等で神鍋山が取り上げられているのに残念。

ともかく、宇井先生の極めて豊富な火山についての経験がこのような形て出版されたのは本当に良かったと思った。