琉球弧の地球科学について最新の話が聞けるとのことで,2月に募集があった時に申し込みをしていた.全てZoom.

趣旨やプログラムは20210303-04|AORI NEWS|東京大学大気海洋研究所 (u-tokyo.ac.jp)

 

今日は午前,11の講演と総合討論があった.若い人がバリバリやっている話は刺激的だ.視聴者はだいたい100人弱.

以下は自分用のメモ.

 

① 最初,大坪誠さんの「趣旨説明&琉球弧発達史レビュー」.

地理的に背弧・島弧・前弧・海溝・沈み込みプレート,Free Airの綺麗な図が出ている(澤田他).琉球弧での応力場の変遷,140万―40万年前は全体に沈降だったものが,40万年前以降は隆起に転じている(場所によって時間は前後).

 

② 池上郁彦さん,「現世の背弧海盆の比較」

ウイルソンサイクルで,背弧海盆は出てこないこと.地球全体の4%の面積を占める.海洋地殻があったりなかったり,拡大軸もあったりなかったり.スラブの後退が基本メカニズム.背弧海盆の地殻の性質と火山活動(?)の有無の2軸で進化を考えると沖縄トラフの北部と南部でいずれも大陸地殻で火山活動が弱い―強いで違うステージを見ている.背弧海盆の一生をこれらのパラメータで考えることができる.行ったり来たりもある.Q(山口)上盤のRetrietは??  Bransfield straightが面白いとのこと.Q(大坪)時間スケール.1000万年程度.Q(新城)Oblique subductionの影響?

 

③ 新井隆太「地震波探査から見た南沖縄トラフの構造とテクトニクス」

大陸地殻のRiftingのステージ.八重山地溝帯,貫入体が見える(幅が7㎞位ある).反射面(マグマ溜り?).KH-21-3航海.マグマ貫入が所々にみえる.地震のb値,流体があると低くなる.Q3件.  Arai et al.(2017)など.

 

④ 大橋聖和(山口大),「与那国島に分布する正断層の構造地質学的特徴」

琉球弧の最西部(渡難と呼ばれた).急崖は正断層に対応。東端の海岸に見事な断層を含む露頭があり,それについての詳細な記載.温度の議論は良く判らなかった.

 

⑤ 井上郁(筑波大).氏家研.宮古島与那原断層において見出された正断層運動時に発達した結晶方位定向配列」

正断層のSlip zone, fractureなど.実験でcalciteのshape preferred orientationについて調べられているものを使って,変位量等を見積もる.Smith et al. 2013 Geologyなど.ちょっと喋り方が聴き辛かった.

 

(休憩)

 

⑥ Madison Frank (U Tsukuba)「Lithological heterogeneity and fluid flow related to seamount subduction:..]

奄美大島とHikurangiで海山の沈み込みがある処でのBasalt+Limestone混在岩の変形様式.CalciteのTwin密度から応力を推定する方法(Rowe Rutter, 1990 Geology). Q(Shinjo)奄美大島の処で海山の衝突はあるのか?プチスポットかも.

 

⑦ 本橋銀太(筑波大) 「奄美大島ジュラ紀後期・白亜紀前期付加コンプレックスに分布する玄武岩類の産状と起源」

プチスポットを付加体で見つける!奄美大島西部の3カ所で,玄武岩,岩脈等が結構時間を開けて活動している場合があること.300万年,遠洋域.MORB的なものからプチスポットのアルカリ玄武岩組成のものまで見出された.明解な話し方で質問が多かった.今Ar-Ar年代測定の準備を行っているとのこと.

 

⑧ 谷健一郎(科博)「沖縄トラフの多様なマグマ活動とその成因」

陥没構造(久米海穴,伊是名海穴)山体がなく不規則な形状.Shinjo &Kato(2000)3種の流紋岩(REE).中村光一さんの1988,1990サンプル.幅広い組成分布.Fractional crystallization/crustal meltingマグマ混合もあるようだ.珪長質岩のZirconde216Ma→南中国に広く分布するcratonic graniteの年代に対応している.この地域の基盤にあったと考えられる.

 

⑨ 木下正高(東大震研)「沖縄トラフの熱流量の特徴と熱水循環」

伊是屋など,水平方向に広がった熱水対流セル.八重山RiftのHFは低い.貫入岩の影響が考えられる.

Q(大橋)High HFについて,断層が対応する可能性について.
 

⑩ 土岐知弘(琉球大,46歳)「沖縄トラフにおける海底熱水系に関する地球化学的研究のレビュー」

Halback et al.(1989)Natureに始まる.

Sakai et al.(1990)Science, GRL: K-index-母岩のSiO2量の対応関係.

Ishibashi et al.(1995)CO2島弧マグマ,CH4:有機物の熱分解.

You et al.(1994)Bとハロゲン等.

Toki et al.(2016),土岐・新城の同位体シリーズ

川幡穂高の同位体シリーズ: δ88Sr

何か言い足りない思いなのか時間がかなりオーバー.

 

⑪ 川口慎介(JAMSTEC)「沖縄トラフの熱水探査史」

沖縄トラフの熱水はほぼ全て発見した,とのこと.CO2バブルが音探で見つかるので見つけやすい.ただバブルが見れない場所もある(慶良間ギャップの延長の3点).熱水生物(固有種)がどのように拡散定置するか,という問題.結構進んでいるようで面白い.

 

総合討論:

・沈み込み角度(斜め沈み込み)速度の影響

・海台・海山の衝突.プチスポットはフィリピン海は若いので生じないだろうとのこと.

・木村学: HFの非対称,ガス組成,古い基盤.Basin &Rangeの成因が面白いとのこと.