以前,簡単な材料でキッチン地球科学の記事を書いた.http://blogs.yahoo.co.jp/hsato47/68907079.html

ジャムの空瓶に水飴の水溶液を入れ,ガラスビーズを適当に入れると,2相流体のレイリー・テーラー不安定とストークス沈降の遷移みたいなのが観察できる.ただ,時間がかかるのでタイムラプス映像で解像度が悪かった.

その後,材料は流しの横に置いたままにしていた.今日,ひっくり返してみると,9月中旬とは云え気温が高いため水飴の粘性が下がっていて沈降速度が大きい.全体に短時間で終わるので,普通の動画で写してみた.全体は約3分.そのままだと400MB近いので20%程に圧縮したものをYoutubeに載せてみた.


大きいビーズ(4㎜φ)と小さいビーズ(1㎜φ)の挙動を見ると,最初,大きいビーズがストークスで落ち始めると,それにくっついて小さいビーズが集団で落ちていく.

その後,天井の粒子群がはがれて,集団になって落ちていくのは落下速度は大きい.最後に残った小さいビーズが単独でストークス沈降するのは非常にゆっくりしたものになっている.

何が見たいかというと,ストークス沈降とR-T不安定による集団沈降の遷移条件のようなものが判ると面白そうだ.

地球科学としての興味は2つあって,(1)マグマ溜りでの結晶の挙動がストークス沈降の場合と集団沈降の場合がありそうなこと,(2)噴煙柱から傘型に拡大したプリニー式噴火での火山灰の沈降様式について両方の過程が考えられ,その遷移条件は降下堆積物の理解に重要でありそうなこと.

前にも書いたが,このような実験の一部はきちんとした形でMichioka and Sumita (2005) GRLが行っているが,これは粒子2相流体のR-T不安定の条件を検討したもの.マグマ溜りで,斑晶などが沈降する場合は結晶がより分散していてストークス沈降が普通考えられるが,結晶量が多い場合はマスで沈下する可能性も考えられる.

降下火砕物が近傍地域で結構細粒火山灰が多いことは従来は火山灰の凝集(Aggregation)で考えられてきたようだ.しかしR-T不安定で沈下すれば容易に細粒火山灰が近傍地域にも堆積しうる.雲仙普賢岳噴火で,火砕流から立ち上る噴煙からの降灰がしばしばマスで落ちているのを見ていた(写真はとったのだが,まだ探し出していない).文献を調べると類似したマスでの降灰の映像が意外と最近の論文に出ていた.
Manzella et al. (2015) The role of gravitational instabilities in deposition of volcanic ash. Geology, 43, 211-214.*

ということで,火山学にとっても興味深い現象を身近な材料で観察し,それから何か引き出せればよいのですが.

*Manzella et al.(2015)を読んでみると、実験もされており(細粒)、どちらかというと、対流不安定の扱いで、結構以前から検討されている。特に、Hoyal etal.(1999)jgr、Carazzo and Jellinek(2012)epsl.