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写真の幅は0.8mm。香川県五色台西部の烏帽子山の高マグネシア安山岩中の石英外来斑晶とその周囲の反応縁。反応縁は単斜輝石とガラス(変質している、少し発泡)から成る。ガラスはアルカリ(特にK2O)に富んでおり花崗岩質。単純に石英が溶けて周囲の安山岩へ拡散したならこの部分にアルカリが富む必要はないが、何故かアルカリは周囲の安山岩石基の2倍位ある。元々花崗岩が取り込まれてそれが部分溶融して分解したら、その部分溶融液(花崗岩質)がまとわりついてアルカリが高い可能性があった。それで念のためるつぼに玄武岩の粉と石英を入れて1400℃で7時間溶融したら、やはり石英の周囲の拡散帯にはアルカリの濃集が認められた。このように元素が濃度勾配に逆らって拡散することをアップヒル(Uphill)拡散と云う。これは天然の岩石でアップヒル拡散が生じていることを初めて記載した論文になった(1975CMP,50,49-64)。アップヒル拡散の原因には幾つかあって、1970頃セラミックス分野で提唱された電荷ポテンシャル勾配が原因かと胸を躍らせたが少し検討してみるとそうではなく、平凡な活動度係数の組成依存性によるものであることが判った。この論文の脚注には電荷ポテンシャル勾配のことを記載したが、これが一番云いたかった点。その後、このアップヒル拡散の問題は実験的(BE Watson,1982など)、計算機実験での検討が行われるようになり、Youxue Zhang(1993jgr)やNishiyama(1998,pepi)でさらに解析が進められた。Zhangはこの論文でGeochemical Societyの学会賞を受けた。YX Zhangはマグマの発泡・脱ガス問題でも仕事を進め、1999Natureの仕事を日本の連合大会の時講演話したのに質問・議論をしたが若干旧知の感じではあった。2002年のMt.Peleeの集会へ行く途中、Detroitで乗り継ぎに4時間余りの余裕があり、地図を見ると彼のUniv MichiganはDetroit空港から40km程度だったので、電話でAppointを取ってタクシーで駆けつけ、実験室を見せてもらった。
 話は脱線したが、この問題、ガラス中のアップヒル拡散については検討が進んだが、元々の単斜輝石が多量に晶出する過程については殆ど文献を見たことがない。石基に斜方輝石しかない場合でも反応縁では単斜輝石のみである場合が殆どで、定性的にはある程度説明できるのだが、定量的な時間の入った過程としての理解が必要だと思う。