
「沼田まほかる」さんの「猫鳴り」を読みました。
2007年に単行本として刊行された作品なのですが、
僕は文庫本になるまで全く知らず、最近目についた次第です。
そして文庫本としても、9月15日付けですでに第11刷となっていて
多くの人に読まれているようです。
「猫」という文字がついていると気になるというのはあるのですが、
「猫鳴り」という聞き慣れない言葉が気になって手に取ったというのもあります。
この「猫鳴り」とは、よくいう猫がノドをならす「ゴロゴロ」のことで、
それを作品のなかでは「猫鳴り」と呼んでいます。
この作品、特に猫好きな人にとっては非常に酷で辛い描写が多々あります。
3部構成になっているのですが、第1部を読み進めるとすぐに
この作者は、猫と暮らしたことがないのかな?と
そう思ってしまうような猫の描写がされていて、
正直、心地よくありませんでした。
でも、読み進めるうちに、そして、第3部になると、
それが誤解であること、また、作者は猫と暮らした経験はもちろん、
猫を看取るということも経験しているということがよくわかりました。
また、その第3部に出てくる若い獣医とのやり取りの部分は
猫と暮らす人、特に、愛猫を亡くした経験がある人にはグッときます。
「自然なこと」という言葉が心に響きます。
しかしながら、その描写は最後まで酷な部分が多く、
全編を通して心にずしっとした重みを感じます。
はっきり言って、心地いい幸福感といったものからは遠い内容です。
でも一方で、何というか、
生と死に対して飾りがないというか、非常に正直に向き合っているようなものを感じ、
読み終わると、人も猫も誰でもみんな同じように通る道なんだというような
不思議な安堵感というか、現実に向き合う力をもらえたようなそんな気がしました。
表面的な優しさや生ぬるい愛情のようなものを一蹴する
現実的な生と死を猫との関わりの中で描写したというような作品で、
より猫たちを大切にしよう、もっとたくさん愛そう...、そう思わされる1冊です。
...涙もろい人は、電車やバスの中で読まない方がいいですよ。