Vox 1963年製 JMI AC-50 Charcoal Combo [Prototype] | HOWL GUITARS
2016年09月12日 11時19分39秒

Vox 1963年製 JMI AC-50 Charcoal Combo [Prototype]

テーマ: Amplifier
ナマステー

HOWL GUITARSのhiroggyです。

もはや恒例のイントロ文で、インド一人旅の中で起きた事などを面白おかしく文章に表してみようと思います。

これまで書きためた旅行記は 「インド旅行記」 ブログテーマでまとめていますので、気になったら見てやってください。

神聖な村、ハンピで過ごしたゆっくりとした日々編。

楽器説明文と写真だけ見たい人はサーとスクロールダウンしちゃって下さいヾ( ´ー`)


インド旅行記 (9) ハンピ編 「ブルドッグナンディ」

僕はヘマクータの丘を下りハンピバザールまで出てきた。ヴィルパークシャー寺院とは反対の方向に歩く。この向こう側にはアチュタラーヤ寺院とマータンガ丘という岩山のような高い丘がある。その丘の頂上から眺めるハンピの全景が素晴らしいらしいので足を向けてみた。ハンピバザールをしばらく東に進むと道と平行して右側に遺跡の回路が出てくる。ハンピバザールから離れるにしたがって人が少なくなっていく。もはや広い参道を歩いているのは僕と骨皮だけになってなんとか歩いてるスケルトン野良犬だけだった。人口密集度が高いインドでここまで人気がなく静かなところも少ないだろう。

参道の突き当りには幅の広い階段があり、その左手に大きな石で作られたナンディー像がある。ナンディーはシヴァ神の乗り物とされる乳白色の牡牛だ。しかし僕にはその大きなナンディー像が牛というよりか暑さで横たえたブルドッグに見えた。 神様に対してそれはちょっと言い過ぎか。ご当地ゆるキャラのぐんまちゃんに見えないでもない。いや、ぐんまちゃんは馬か。まあいい。どっちもどっちだ。

右手にはマータンガ丘の入り口がある。背の低い草がしばらく広がり、上を見ると想像以上に丘は高く険しかった。その岩だらけのハードな道を頂上まで歩くには時間が遅すぎるように感じる。登りきって降りる頃には日が暮れているかもしれない。想像してみる。暗闇の中で岩のくぼみに足をとられ転んだ先の藪にはちょうどインドコブラの家族がいてこどもコブラを守るためにおかあさんコブラに右足を噛まれおとうさんコブラに左耳を噛まれる、毒が身体中に回って痺れ悶えながらもなんとかブルドックナンディまでたどり着く、しかし誰にも発見されず僕はブルドッグナンディを見上げて 「なんでぃい、なんでぃい」 と最後の言葉を吐き出し、朝には死に至る。絶望的に不運な死に方だ。

やめておく。明日の昼にでも登ればいい。

次項に続く→

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では本題の楽器紹介へ移ります。

今回ご紹介するヴォックスィなアンプは

Vox 1963年製 JMI AC-50 Charcoal Combo [Prototype]です。



Voxマニア必見。ミュージアムクラスに貴重で珍しいVox AC-50プロトタイプが入荷いたしました。

前回入荷した1960年製 Vox AC-10 Throwback に引き続き、HOWL GUITARSに弩級の奇形種の登場です。

「まーたまたハウルさんおかしなアンプ入れてきちゃって」 と言われてしまいそうですが (笑) おそらくこのプロトタイプの存在がネットを通して世に出るのは史上初だと思われます。

Voxアンプのバイブルとも言えるJim Elyea著のVox研究書 「Vox Amplifiers JMI Years」 にさえ載っていない一台。この個体の調査を含め、もう一度あの (クソ) 重たい本を食いいるように調べてみたのですが、AC-4, AC-10, AC-15, AC-30とプロトタイプの存在は確かめられているものの、AC-50のプロトタイプの記載はなし。ましてや通常のヘッドとスピーカーが分かれたPiggy Backスタイルではなく、コンボのAC-50です。現存する個体は世界中でこの1台しか確認されていないレベルのヒストリカルピースです。

AC-10 Thriwbackと同様に50年代の余った自社パーツや、当時手に入った社外製のパーツが組み込まれており、ほかのプロトタイプ同様にアンプメイン部とプリ部が上下にセパレートされた非常にユニークな仕様を持っています。

まずはVox AC-50が開発されるに至った歴史を軽く説明いたします。

1960年代前半、すでに主力ラインナップのAC-10, AC-15, AC-30は完成形に仕上がり、Voxのアンプは多くの英国ミュージシャンに愛用されていました。当時Voxのエンドースユーザーで、もっとも有名で世界的に影響力のあるバンドがTHE BEATLESだったのはみなさんご存知のとおりです。THE BEATLESの人気が高まるに伴い、さらに大きな会場、多くのオーディエンスの前での演奏が必要になります。しかし当時はまだ現在のような完備されたPAシステムは無く、「アンプから出る生音 = 観客に届く音」 の時代です。実際、30ワットの音量では観客に届くどころか、熱狂的な歓声でステージ上ですら音が聞こえない状態。アメリカの大規模なツアーを控えたTHE BEATLESはもっと大きい音が出るアンプを求めるのは当然のことでしょう。
そこで急ピッチで開発されたのがEL34パワー管を使用した50Wのモデル、AC-50です。(同時期に開発された最新トランジスタベースアンプのT60もありますが長くなるので割愛します)

AC-50が正式にラインナップとして登場するのは63年末で、もちろん翌年THE BEATLESのアメリカ公演に使用されました。AC-50 Mk1 は "Washington DC Amp" とニックネームが付いているほどです。AC-50はヘッドアンプとスピーカーキャビネットをセパレートしたPiggy Backスタイルのみで、コンボタイプは発売されていません。ヘッドキャビネットは背の低い平たいスモールサイズで、カッパーパネルの1チャンネル、2インプット、Volume/Treble/Bassの3コントロールでした。AC-30にはすでにTop Boost回路があり、その回路をAC-50に組み込んだにもかかわらず、Vox特有のハイエンドの煌びやかさは影を潜めてしまいました。なので現在ではギターアンプよりもベースアンプとして重宝されています。

次はこのプロトタイプの特徴。

外装だけを見ればAC-30そのもの。
当時The Shadowsのシグネーチャーアンプに使用された珍しいカスタムカラーカヴァリング、濃いグレーのChacoalカラーのAC-30のキャビネットがそのまま使用されています。普通アンプ前面左側についてるVOXのロゴはありません。とりつけたツールマーク (差穴) さえ存在しません。裏をかえせば最初から製品として作られていなかったことになります。

内部構造でまず製品版と大きく違うのは、
アンプ内部のコンストラクション。メインアンプ部分とプリアンプ部分がセパレートされて、メインはキャビネット下部に、プリは上部に取り付けられています。
電源トランス、出力トランス、チョークトランスなどが全てRadiospares製。すでにVoxは製品版で4〜30Wまでのトランスは持っておりWodenなどに特注していましたが、それ以上の数値のトランスは扱ったことがないがため試作用に当時のイギリス国内で手に入りやすいトランスを使用したのだと思われます。このRadiosparesトランスは初期のMarshall JTM45に使用されたことから、現在ではかなり高価なパーツ。

これらはAC-30や他のプロトタイプにも共通している事実で、プロトタイプは必ずと言っていいほどメイン/プリがセパレート構造で社外製パーツ(トランスは必ずRadiospares製)を使用しています。

さらに興味深いポイントが、コントロール部分にあります。

4つのインプット、それぞれのインプットごとに独立したヴォリューム、そして最後にマスターヴォリュームとトレブルとベースの順で組み込まれた非常に変わった構造です。この構造は数年後にDave Reevesが手掛ける名器のSound City One Hundred Ampにも共通しています。
それぞれのインプットごとに数値の違うキャパシターが取り付けられており、例えば1はトレブル、2はノーマル、3はベースといった風。おそらく複数インプットを作って、最終的にどのインプットが製品版にふさわしいかを試していたのだと思います。

使用真空管: EL34 x2 / EF86 x5 / ECC83 x2 / GZ34 x1

スピーカーには耐久性のあるFANE製スピーカーが採用されています。従来のCelestion AlNiCo Blueでは50Wの出力に耐えられなかったためでしょう。

オリジナルのダイアモンドグリルネットはひどく破れていますが、レアなチャコールカヴァリングの状態は良好です。

それでは、お写真を公開。



アンプ前面左側についてるVOXのロゴは元からありません。とりつけたツールマーク (差穴) さえ存在しないプロトタイプ仕様。製品として出荷された事が無い証拠ですね。



オリジナルのダイアモンドグリルクロスは悲惨な状態ですが、オリジナル性を重視してそのままにしてあります。



側面にはCORRIDORのホワイトペイントがあります。



アンプ上面です。センターハンドルは最初はあったのか、なかったのかわかりませんが、サイドハンドルはオリジナルです。



コントロール左側です。ブラックのコントロールパネル。左からパイロットランプ、電源スイッチ、TREBLE、BASS、VOLUME (マスターVol)



4つインプットがあり、それぞれのVOLUMEになります。右二箇所のノブは交換されています。この4インプットは製品版のAC-50の初期型(ダイアモンド型4input)にも採用されますがこの個体の構造は製品版とは異なり独立4インプットで初段が全てEF86で、初段だけでEF86を4本使用しています。



back viewです。オリジナルカヴァリング。レアカラーの Charcoalです。



バックパネルです。通常のAC-30用のバックパネルであればシャーシとバックパネルを固定するネジが2本あるはずですが、この個体は穴すらありません。その点がAC-30として出荷されなかった証拠でもあります。



もともとTop Boost仕様に作られたバックパネルなのでそれ用の穴があります。普通はこの穴の隣にVOXのプレートが取り付けられますが、ここも前面のロゴと同様にツールマークさえありません。



バックパネルを外した状態です。プリアンプ部分のシャーシボックス。ノイズ対策の為なのか蓋が取り付けられています。



プリアンプシャーシの全体画像です。これは、はっきりいって他のVoxアンプにはみられない独特なレイアウトをしています。もちろん製品版のAC-50とも違っています。



プリアンプシャーシ内部左側。Radiospares アウトプットトランスの足が見えます。



プリアンプシャーシ内部中央。Radiosparesの電解コンデンサー、Mullard Yellow Mustardなどの高級キャパシターです。Mullard Mustardキャパシターの製造デイトは62年でした。



プリアンプシャーシ内部右側。Huntsのコンデンサーも多く使用されています。



プリアンプシャーシ上部です。EF86の球数が多いです。



3つの缶はRadiosparesのマイクトランスです。インプット4つあるうちの上段の2つのインプットのみマイクトランスと繋がっています。



EF86 x4。独立した4つある各インプットごとに1本づつEF86が初段に使われています。



EF86 x1、ECC83 x2です。ECC83はフェイズインバーター用に1本とTone用に1本使用しています。



Power TubeのEL34 x2、Radiospares "De-Luxe" Output Transformer。この部分だけで随分と高額なアンプ。



とても貴重なRadiospares "De-Luxe" Output Transformer。初期のMarshall JTM-45に使用されていることから世界中のアンプフリークが探しているトランス。



スピーカーキャビネットです。このように2つのスピーカーの間にメインアンプ部分が固定されています。



オリジナルのFANE 12" Heavy Duty Speaker。



こちらも同じくオリジナルのFANE 12" Heavy Duty Speaker。



メインアンプ部分です。電源ソケットは当然 UK仕様です。



でかい。とても貴重なRadiospares Power Transformer。この大きさから察するに、当時一番高価だったモデルだと思います。もちろん100V-120Vの入力タップは無く、200V-220V-240VだけのUK仕様です。



横からのショット。となりの電解コンデンサーはT.C.C製、8uf / 800Vで800Vもの高電圧に耐えられる無駄にハイグレードな電解コンデンサーです(もちろん内部電圧は800Vも出ていません440V程です)。LEのデイトコードを読むと54年製ということがわかります。おそらく眠っていたレフトオーバーパーツを組み込んだのでしょう。



8uf /800V T.C.C電解コンデンサーは2本使われています。



GZ34整流管とチョークトランス。



整流管の隣のコードはメイン部とプリ部をつなぐものです。



メインアンプシャーシ内部です。



メイントランス、電解コンデンサーの裏側です。



整流管とプリアンプコネクターソケットの裏側です。





数あるレアなVOXアンプの中でも一際珍しい一台です。

長年JMI期のVOXアンプを集めてきた当店ですら初めて実物を目にしたプロトタイプです。

Diamond Grill Clothは残念ながら破れてしまっていますが、当時のカスタムカラーCharcoalカヴァリングは綺麗に残っていて、AC-50のコンボタイプというあり得ない組み合わせが最高にクールです。Marshallに例えるならJTM45 Bluesbreakerですね。

サウンドは、やはりプロトタイプというだけあって、製品版とは異なるサウンドです。EF86仕様のEL-34 Push-Pull Ampは類を見ません、開発者のディックデニー氏はやはりEF86が好きだったんだなーと感じさせてもらえる一台です。もちろんEL-34のパンチ力と芯の太さは十分に楽しめます。

このような試行錯誤の上にVoxがAC-50を開発したのだと考えると、なかなか感慨深く、研究資料価値だけを考えても、とてつもない一台です。

お探しの方、興味のある方はこの機会に是非。


hiroggy
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