2016年03月28日

俺は絶対不妊治療に向いてない(下)

テーマ:上京後

採卵日までは中1日、初日は点鼻薬を打ち、2日目は6時間ごとに3回、座薬を入れるという義務が課せられます。これは、早まって排卵してしまわないための対策で、うっかり忘れたりすると採卵できないこともあるらしい。
座薬は勤務中に入れねばならないため(なんかイヤだな~)、ポーチに保冷剤を入れて保管し(座薬は溶けやすいのです)、時間になったらトイレで注入。さいわい、外出予定のない日だったので何とかなる……はずだったのですが、2回目、夕方の座薬を入れ忘れたことに、夜になって気がつくという大失態を犯してしまいました。
病院に電話するにも、すでに閉院後。もはやどうしようもありません。3回目の座薬は何とか入れたものの、こんなケアレスミスで採卵できなくなったら、ほんとうに自分を殺したくなる……。


翌朝は8時15分にクリニックへ。旦那さんも採精の必要があるので同行していただきました。
こちらのクリニックは、無麻酔での採卵です。説明会で聞いていたので今さらビビってもしょうがないのですが、卵巣に針を刺すという行為が果たしてどれくらい痛いものなのか、まったく想像がつきません。
採卵に呼ばれるまでは、治療服に着替えて、トイレを済ませて、ベッドで待機。カーテンで仕切られていますが、お隣のベッドには、もう一人、採卵の人がいました。
採卵室では、わたしも含めて全員がケーキ屋さんのようなヘアキャップをかぶっていて、なんだか人体実験にでも赴くような気分になりました。
ベッドに寝て、子宮を消毒。いつもながらこの、子宮に何かをグリグリ突っ込まれるのが痛いというか、不快というかで、早く終わんないかなと思います。
わたしは、最近自分のなかでよく唱えているまじないとも祈りともつかない言葉を心の中で繰り返し、ただひたすら一連の作業が終わるのを待ちました。
しかし、肝心の採卵は、いったいいつ採卵されたのかよく分からないほど、あっけないものでした。後で思い出したのは、説明会の時に聞いた、「技術があるので他のクリニックより細い針(注射針くらい)を使うことができるから、一般的な採卵よりは痛くないはず」という話。某KLCから独立した先生の技術は、伊達じゃないということでしょうか。


結局、採卵できたのは1個だけでした。
これは座薬忘れのせいなのか何なのか分かりませんが、わたしは採卵できない可能性も考えていたので、まあ採れただけよしとしよう……という、かなり謙虚な気持ちでした。
旦那さんも無事に採精できたようで、10時半頃にはクリニックを出ることができました。
採卵日は1日安静に、と云われていましたが、全く痛くもなければ体に違和感もなかったので、そのままご飯を食べに行きました。しかも、その日の夜も飲み会があり、懸念はしつつも至って普通の体調だったため、しっかり参加。お酒はさすがに控えましたが、食欲もいつも通りでしたので、家で臥せってないで、来てよかった!と思いました(笑)。
ただ、出席者の中には自然妊娠でもうすぐ双子が産まれるという年上の友人がいて、テーブルはその話でもちきりになり、いったいわたしとの差は何なのだろう……と、しばしば物思いに沈みそうになりましたがね。


採卵が終わったとて、それはごくわずかな歩みに過ぎず、妊娠のスタートラインにすら立てていないというのが現実です。ここから毎日のように、受精確認、分割確認、そして胚盤胞確認と電話を入れなければなりません。本当に心臓に悪い行為です。
翌日の受精確認、翌々日の分割確認は無事に終わりました。あとは採卵から5日後の胚盤胞確認。ここを乗り越えれば、「アメリカ横断ウルトラクイズ」に例えると、アメリカ大陸に着陸したということになるでしょうか。いや、単に成田を出発できただけのことでしょうか。
これからいったい、どれだけ障害物を越えていかないといけないのでしょう? ホルモン調整、採卵、受精、分割、培養、移植、着床、妊娠、継続……数メートルごとにいちいち問題が出されて、1問でも不正解だったら、容赦なく帰国ですよ。クイズと違って、伊達や酔狂でやっているわけではないので、正直楽しくもありません。


果たして……5日目の朝の電話で、受精卵が5分割で止まったことを告げられました。
5日目で胚盤胞になっていなければ、その周期で移植することはできません。今は分割が止まっているけれど7日目まで培養して育てば凍結しますと云われた時点で、わたしは完全に自暴自棄になっていました。
「そんな卵、さっさと廃棄してくれや!」「こんな腐れマ●コも、もう要らねえし!」などと、ナチスの将校もびっくりぽんの優生思想が地獄の底から沸々と涌き上がり、仮にも己の体から出てきた受精卵に対しても「もう死ねばいいよ」と軽々云えるくらい、すべてを破壊し尽くしたい衝動がごうごう燃え盛ってわたしの心を焼き尽くします。年を取って少しはマシになったかと思ったけれど、やっぱわたしの本性って、所詮これか……。
すでにさわるものみな傷つけるギザギザハート状態でしたが、社畜なので仕事だけは冷静に遂行しました。仕事は基本的にやりたくないけれど、このときだけは、仕事があってよかったと思えました。


そして……7日目の朝の確認。ほとんど絶望しながらも、一縷の望みをかけずにはいられませんでしたが、結局分かったのは、正式に失敗したということでした。アメリカ妊娠ウルトラクイズにおいては、成田を飛び立つことすら叶わなかったようです。
別居している旦那さんは側にいないのでどこにもぶつける場所がなく、悲しませるだけと分かっていながらも父に電話してしまいました。父はてっきり、結婚式の準備の進捗の問い合わせかと思ったらしく、ひとしきりその話を続け、わたしももう、何事もなかったように電話を切ろうかと思いましたが、父の声を聞いていると居てもたってもいられず、洗いざらいぶちまけて案の定困惑させ、「こんなとき、男親しかおらんで悪いな」などと云わせて、文字通りの泥沼に頭から突っ込んでいました。
さらには、「結婚式のことお父さんから聞いたよ、おめでとう」とLINEを送ってきた伯母に対しても、「不妊治療がうまくいかなくて結婚式どころじゃないです、そんなことより養子縁組のことでも考えたいです」などと返事を書く始末です。我ながら、よくそんなこと書けるよな……。
伯母は母の妹で、結婚はしていますが子どもがいません。そして、詳しく聞いたことはないけれど、かつて不妊治療をしていたようです。分かってほしいという甘えがあったのは否めません。でも、こんなふうに不妊治療がうまくいかない自分を貶めることは、即ち伯母を否定していることになりはしないのか。祖母は今でも、「あの子もかわいそうに…子どもがおらんでなあ」とつぶやいたりすることがあります。そんなこと云うなよと理性では思うけれど、伯母と同じ境遇になるかもしれない自分を激しく否定しているということは、結局、伯母をかわいそうだと思っていることに他ならないのではないか。引いては、産めない女性すべてに対して……。


それにしても……何なんでしょうか、この治療って。
高いお金を払って、時間を削って、心身にダメージを受けて(わたし自身は、体の方はそんなに感じていませんが)、自分だけでなく、周りもみんな不幸にして。
旦那さんに八つ当たりする→旦那さんも嫌気がさしてくる→浮気を考える→浮気相手だと何故か一発で子どもができる→離婚……というシナリオが容易に浮かんできます。
このままだと、身内だけでは済まななくて、今はまだ大丈夫だけど、子どものいる友人すべてと会うのが死にたくなるほど苦痛になる日も、そう遠くないかもしれない。そして、子どもという子どもを憎みかねない。
不妊治療がうまくいかなくて自殺した人とかいるのかな? 子どもがほしい人が自分の命を傷つけるなんて完全にナンセンスだけど、別に子どもを生むために生きているわけじゃないけど、そのくらいのこと頭では分かるんだけど、心がついていかない。それくらいダメージが大きい。もちろん、自殺する勇気なんかない。でも、いっそのことすべてを捨てて行方不明になれないかな、くらいのことは思う。自殺しないまでも、治療が何度も失敗して、うつ病になる人はいるんじゃないのかな。
もうこれは、難病だとでも思ったほうがいっそ楽になるのかも? 特に悪いところもなく、それなりに健康体で生きてきた身としては、なかなか認めにくいですけどね……。


1回の失敗でこんなに落ち込むんじゃ、繰り返してダメだったら、どうなっちゃうんだろう。失敗にもそのうち慣れて、何も思わなくなるのかな。そのころには、貯金も底をついているだろうな。でも、クソがつくほどあきらめが悪いから、借金してでも続けようと思うのかな。
セックスしただけで無料で妊娠する人なんて、いくらでもこの世にはいるのに(なんという下品な記述w)、何でわたしはこんな目に遭うかな。まともに人生設計もせずにキリギリスみたいに好き勝手に生きてきた罰なのかな。でも、性的にはまったく奔放には生きてこなかったけどな……。
いっそのこと、すべてを諦めて、また旅にでも出られたらいいのに。望みの薄い治療にはたいたお金で、未踏の地・西アフリカや中央アジアやカリブ海の島々だって余裕で行けますって!
いつも会計の時は、「これは透明なお金なんだ」とか思って、見ないふりをしているけれど、冷静に考えたら、なんで高いお金を払ってこんな思いをしなきゃいけないのかと、ほんとうに何もかもがいやになります。金金金って、金の話ばっかしてるな、わたし……。
それでも、ネガティブの権化のようなわたしが、『ザ・シークレット』とか『マーフィーの成功法則』とかを今さら読んで、ちょっとくらいのことで落ち込まないように、自分を励ましてきたんだよ……。宇宙のカタログからたくさんプレゼントがあるはず、とか云って(笑)。
最初でダメなことなんて、よくある話なのかもしれない。でも、今後は今より確実に老いていくのに、続けても確率なんて上がるんだろうか?それこそ、宝くじを買うくらいの空しいギャンブルなんじゃないのだろうか?


この日の夜、旦那さんが横浜で仕事で、その帰りに中華街でご飯でも食べようよと誘われました。
旦那さんは旦那さんなりに気を遣ってくれているのは分かるのですが、わたしはそれこそ、動きたくないほどショックを受けており、その辺はあんまり理解されていないのかな……と思ってしまいました。ま、とりあえず美味いもんでも食べて忘れよーよ!みたいな明るいノリで来られると、え、これって旦那さんにとっては失恋した友達を慰めるくらいの他人事なのかしら?と疑心暗鬼になってしまうのでした(苦笑)。
世の中にはそもそも不妊治療に非協力的な夫というのもいるだろうし、平均的に見れば恵まれている方だとは思います。当事者感が薄いのは、男性全般に云えることなのかもしれないし、お金を出しているのがわたしだからというのもあるのかもしれません。気を遣って「次は出すよ」と云ってくれるのですが、金額見たら、きっと目玉が飛び出ると思う……。
そんなことを云いながら、結局、横浜まで出向きましたけどね(動けとるやんけ!)。たまたま通りかかった「横浜媽祖廟」の前に、子宝祈願の文字が出ていて、思わず線香とお守りまで買って神頼みしてしまいました。


実際のところ、子どもが欲しいという気持ちは、他の人よりずっと薄いと思うんです。ただもう、年齢のリミットに焦っているというだけで、相変わらず買い物好きだし、旅行はしたいし、子育てしながら今の仕事を続けられる自信は限りなくゼロに近いし……。正直、よくそんな気持ちで大枚はたけるよなあと、我ながら不思議です。
何せ、未だに旦那さんとの同居すら実現できていないふわふわした身ですから、子どもがやって来たら生活も人格も破綻すんじゃねーか?と、ふと冷静にもなります。
妊娠と不妊のことを意識するようになってから、ずっと、体と心が分裂しているような気がしています。それでも、体がすごいスピードで老いている以上(と書いているけど、実感はありません。ただ、卵巣機能が低下していると云われるからそうなんかいなと)、手をこまねいていることはできません。
今のわたしの年齢だと、合計6回まで、東京都の助成が受けられます(かかった金額の1/4くらい)。あきらめる決断をするひとつの目安はそこですが、6回というのは果たして、多いのでしょうか、少ないのでしょうか…。1回50万かかるとして、6回もやったら自動車1台は買えるし、世界3周くらいできるんじゃないですかね! 高い家賃を払えないから家探しも難航しているっていうのに、お金の使い方、大丈夫か!?
そもそも生殖能力が備わっていないというのなら、自然界の掟的にはさっさとあきらめるべきなのかも……。それならいっそ、身よりのない子どもを引き取って世話をするほうが、よっぽど意味があるような気もする。でも、それだって日本ではけっこうハードルが高いんですよね。まっ、わたしみたいな人間に預けるのは、かなり不安だけど!
それでも、あきらめの悪いわたしは、次の生理が来たらまたおとなしく病院に行くのです。膿んだ希望を抱いて……。

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