裏和・表病
・裏和・表病 : 太陽病で裏は調和しており、表が病んでいる状態
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(治法)表の異常を治す
・『裏和』とは → 五臓六腑の気・血が調和している状態
(脈が左右の寸・関・尺のすべてが浮である以外の異常がない状態。
大小便も含まれる。)
↓
◎ただし頭項強痛・悪寒・悪風などの病証はある状態
もし脈が浮緩・浮弱・浮数あるいは緊のない浮で、発熱して汗が出る病証のとき
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『表虚』の状態
※解肌剤を与えて表虚を補す
(桂枝湯などを与える)
もし脈が浮緊・浮数あるいは力強い脈状の浮で発熱し汗が出ず、身痛・腰痛・骨節疼痛
の病証があるとき
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『表実』の状態
※発汗剤を与える(表実を瀉す)
(麻黄湯・桂枝麻黄各半湯・桂枝二麻黄一湯などを与える)
※裏和で表虚なら解肌剤、裏和で表実なら発汗剤をつかうということですね。
裏虚・表病
・裏虚・表病 : 太陽病で裏が虚して表が病んでいる状態
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(治法)先に裏の虚を補い、その後、表の異常を治す
・『裏虚』とは → 五臓六腑の気・血が衰虚・損耗し、陰気と陽気が共に欠損している状態
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『両感』という
※『両感』とは、挟陰病(陽証に陰証を挟んでいる病)のこと
→ 外感と内傷を兼ねた病
※『狭陰病』とは、「太陽病の脈状と病証」と「少陰病の脈状と病証の1つか2つの証状
を兼ね揃えている」という状態のもの
ここで参考として内〇先生は、少陰病の脈状と病証の例をあげています。
・寸口の脈が沈細もしくは沈み過ぎて触れにくくなった脈(伏)がある
・顔色が青く、手足が冷え、少腹(下腹部)が締めつけられるように痛み、
酷いときには吐き下し、舌が巻き上がり、陰嚢が縮みあがっている状態
※上記の状態を読んでいるときに、身体が弱って来ている高齢者をイメージしました。
脈が細くなって触れにくく、手足が冷たくてサチュレーションが測りづらく、舌が
固くなり縮んで呂律がまわらず活舌が悪くて聞きとりづらい。
このような方、見たことがある方も多いのではないでしょうか。
また理由が違うかもしれませんが、少腹の痛みもよく聞かれます。高齢者は、排便障害
(便秘)による少腹の痛みは良く聞かれることですよね。
そのような患者に対して攻めの治療よりも体力をつけたりする(体を補う)のを先に
行うというのはイメージしやすいですよね。
つぎに『狭陰病(両感)』になりやすい要因を説明されています。
①外邪の影響を受けやすい
・もともと虚弱な体質で、脾・胃や肺・腎の働きに欠損があるので汗が出やすく、
かぜをひきやすく、食欲の異常を起こしやすく、大小便が不調、精液が漏れ易く、
息切れし、疲労し易く、痩せ衰えているかぶよぶよと肥えて血色が良くない者
②裏が虚しているので外邪を受けやすくなっている
・もともと強壮な体質であっても、ひどく労働して大汗をかいたのに過房によって
精気を失ったとき、飲食の不摂生で暴飲暴食をしたり、飢餓に陥ったりしてして
胃腸を傷害したとき、ひどく走ったとき、しゃべり過ぎたりして気を傷害したとき、
思・慮・悲・恐などの精神激動によって心臓にある神気を傷害したとき、月経過多、
長血・分娩・血尿・創傷・鍼灸・吐血・鼻出血・血便・瘡癰・圧搾・転落や打撲な
どで大量出血したとき、咳や吐き下しなどで体液を失ったとき、雑食して胃腸を
傷害したとき、など・・・・
※上記の状態は、読んでいる皆さんもイメージしやすいのではないかと思います。
①は虚弱体質で元気がなさそうな人で、②はケガとか病気とか過労とかで気力が
なくなってヘロヘロになっている人な感じ。
最後に『表と裏の両方が邪を受けたとき』を記載して今回は終了いたします。
〇表と裏の両方が邪を受けたとき
・太陽病の脈状と病証(脈浮・頭項強痛・悪寒・悪風・発熱など)もしくは
中風に似た病証(中風の病証は上記の太陽病の病証に、汗が出る、脈が緩くなるか
弱くなるか多くなる)、あるいは傷害に似た証であっても必ずこれに『裏虚』の
脈状と病証を1~2個兼ね備えているもの
と説明されています。
※裏虚の脈状や病証があるかないかで、単純に表病として治療して良いのか、裏虚・表病
として治療を行うのかをしないと誤治になってしまうので注意が必要ということになる
と思います。
次回は『裏虚』から始めたいと思います。
『裏虚』も大別して6種類あります。
実は、自分は裏虚が6つに分類されていることを医経解惑論で学びました。
(追記)
日本の伝統医学(鍼灸按摩指圧や漢方薬(湯液)など)は、つくづく経験医学なんだなと感じます。
聞こえは良くないですが、病気の症状(証)に合わせて治療しても良くならない人がいて、証の違いや体格や体力や体質や生活習慣などの相違点を探して分類し、試行錯誤して病気を治して来た。(治験というよりは、人体実験という感じですよね。)
相違点を集めて分類して治療法を確立(今でいう治療ガイドライン)をつくり、医学として発展して来ている。数千年の間の治療家の試行錯誤の塊が現在の東洋医学になっていると思うと、遠大で、尚且つ自分たちもその遠大な流れの中に小さいながらも存在しているという楽しさがありますね。
傷寒雑病論とか金匱要略などは、治療ガイドラインとして読み込んでいくと理解しやすいかも知れないです。(自分からすると正に、「ザ・ガイドライン」という名著だと思いますが。)
ではでは、また不定期更新で。 _(._.)_