「なんだって深夜3時に

猫の餌を買いに行かなきゃならんのだ」

服を着たまま寝落ちしていた探偵は、

茶トラの猫に叩き起こされた。

ミャーミャー鳴いて催促するが、

あいにくキャットフードを切らしている。

しかたない、買いにいくか。

向かいのペントハウスでは

今宵も半裸女性たちがドラッグパーティ

すっかり見慣れた景色だ。

ヌードでヨガ(瞑想)する連中など

どうでもいいし、干渉する気もない。

問題は缶詰だ。

「いま買ってくるから待ってろよ」

 

 

ロング・グッドバイ

ロバート・アルトマン監督

1973年

エリオット・グールド

ニーナ・ヴァン・パラント

スターリング・ヘイドン

ジム・バウトン

マーク・ライデル

アーノルド・シュワルツェネッガー

 

レビューを演出編・人物編に分けます。

TSUTAYA在庫処分セール100円で

購入した「ロング・グッドバイ」

娘がお気に入りのカルト作品

 

普通のミステリーサスペンスとは

一線を画す、肩の力が抜けた犯罪映画。

image

 

 

じつは数年前、

ゆるいムードが心地よく、

眠くなって途中でリタイアした私チュー

 

娘から

「アホか。もったいないなぁ。

後半が面白いのに。

意外で唐突なラスト

見ないでどうすんねん?」

と言われ、再チャレンジ。

 

なるほど!!

 

アルトマン監督の世界観、最高やねハート

 

  

映画として有名だけど

のカットが多くて驚きでしたびっくり

餌をもらえるかと後をついてくる犬。

寝そべってる犬。

田舎道でウロウロしている犬。

マリブでは富豪がドーベルマンを飼い、

メキシコでは交尾をする野良犬

 

 

  

探偵マーロウのは贅沢な子。

カレー印の缶詰でないとお気に召さない。

目当ての缶詰が売り切れで

別の缶詰めの中身を

いつもの缶詰に詰め替えて

偽装する(笑)

が!

猫の鼻はだませない

くんくん匂って、ぷいっと出ていく。

そこへ友人テリーがやってくる。

頬にはひっかき傷。

赤く腫れあがったこぶしを隠すように

手袋を装着してマーロウの部屋へ。

「テリー、君の猫(奥さん)は元気かい?」

ケンカして引っ掻かれたよ」

マーロウの猫も、

テリーの猫(妻)も

パートナーに愛想をつかす

という点が面白い。

 

 

  消えた親友

マーロウはテリーに頼まれ

メキシコまで車で送ってやる。

ところが信じられない一報に驚く。

「アイツが妻を殺害し自殺したって?」

マーロウは釈然としない。

死んだとされる場所は、

車で送った場所と離れている。

しかも現地ですでに葬られただと?

妙だ。なにか裏があるにちがいない。

 

さらにギャングから

「テリーが持ち逃げした35万ドルを

お前が隠しもっているだろう?金をよこせ!」

と脅される。

やがて、

テリーのメモと金が送られてくる。

「フィル、ゆるしてくれ」の文字。

一体、どういうことだ?

 

友は生きているのか?

 

死んだのか?

 

真相が知りたい。

 

 

  昼と夜の海

親友テリーの近所に住む美女から

仕事が舞い込む。

 

依頼主の家へ向かう途中、野良犬が通せんぼ。

「おい、どけよ。警察を呼ぶぞ」

邸宅に入れば

咆哮するドーベルマンに出迎えられる。

犬と相性が悪い?!笑

「失踪した夫を連れ戻してほしい」

というアイリーン夫人。

彼女の片頬は腫れあがっている。

どうやら夫は酒を飲むと荒れるらしい。

富豪の作家はスランプから

アルコール依存症を発病しており

医学博士は作家を金づるとして入院させ

高額な医療費を催促していた。

「患者より医者の方が狂ってるぜ」

マーロウが作家を連れ帰ると

夫人は別れ話を持ち掛ける。

夫婦の話し合いに遠慮して、

マーロウはひとり浜辺へ。

「俺は波の数でも数えるさ」

ここからのショットが秀逸です!

波とたわむれる探偵が窓に映りこみ、

話し合う夫妻とオーバーラップする。

この計算された構図に息をのみました。

すばらしい!!!映画館でみたいシーン。

他にもいくつか

ガラスや車のボディに

人物が映りこむという演出があります。

 

たとえば、守衛車にが映りこんだり。

マジックミラーに刑事が映りこんだり…ね。

 

さて昼間の明るい海が一変し

夜の暗い海になります。

 

作家は仕事も妻も失い、

自暴自棄になり酔った足で海へ入っていく。

あわてて後を追うマーロウと夫人。

大きな波に襲われる2人を

カメラは引きのショットで

しつこく映しつづけます。

 

危ない撮影だとわかるような映像に

惹きつけられます。

美女が波にのまれ、

容赦ない自然のうねりに抗えず

もみくちゃにされる。

 

いまにも暗い海に飲み込まれ

溺れそうなのにやけに美しい

飼い犬ドーベルマンが海中に顔をつっこむ。

そして、飼い主の杖をくわえ

もどってくる。

彼が溺死したことがわかる演出です。

 

②人物編へつづきます。