「女になったんだね」
母は聖書で娘をなぐる。
女であることの恐怖罪悪感
植え付けようとする。

デパルマ監督といえば
「殺しのドレス」「ミッドナイトクロス」そして
女性のサスペンスホラー映画
「キャリー」
ブライアン・デ・パルマ監督
1976年
シシー・スペイセク
パイパー・ローリー 


立場の異なる女たちが登場します。

シシー・スペイセクの可憐で倖薄いヒロイン。
パイパー・ローリー演じるお母さんの
怯えと圧迫感の凄さ。
ナンシー・アレンの悪意と優越感。
エイミー・アービングの偽善的な自己満足感。

 「こんなに映像が綺麗だったんだぁ。
ウィリアム・カットってカッコいいなぁ。」


音楽が温かで穏やかな調べ。
映像美と音楽、スローモーション映像が
残酷でエロティックな世界との不協和音を奏でます。

ヒッチコックの赤い恐怖「マーニー」では
娘が異性に近づかないよう
躾ける母親が登場しましたね。
レビューはこちら
デパルマ監督も
鮮血の恐怖「キャリー」
娘に狂信的思考を植え付ける母親を
描きました。


【感想】
「赤い服なんか着て…」
パーティドレスを着た娘に、母が言う。
「赤じゃないわ、ピンクよ」
娘は反論する。
しかし、数時間後、真っ赤なドレスに変わってしまう。
母は女性としての歓びや幸せをととらえる。
「神は女に罰を与えた。
毎月血を流すようにしたのだ。」
と、吐き捨てる。
少女から大人へ成長する娘。
過去に辛い経験をした母にとって、
娘の成長が恐怖です。

男の子とデートだなんて、汚らわしい。
この子が罪深い存在になっていく。

家に閉じ込めておくわけにもいかないけど、
外へ出たら世間から傷つけられる
ちがいない。
キャリーはそんな母から自由になりたい
みんなと同じ普通の青春を送りたい。
担任の先生に励まされ、自分を取り戻していく。
図書館の蔵書カードをめくり、
自分に備わった能力について調べる。
「念力を持つ人は
世の中にいるのよ。」
自分を受容していく。
口紅マスカラ髪をカール
そして胸のあいたドレスを自分で縫う。

長い間、押さえつけられていた
自分のやりたいことに挑戦してみる。
キャリーの力になりたいと働きかけるカップル。
「トミー、学生最後のダンスパーティに誘ってあげて」

キャリーを傷つけたいと策を練るカップル。
「ビリー、私キャリーが嫌いなの。いやがらせを手伝って」
善意悪意交互に描かれます。

 


初めてのダンス。
「踊り方もわからない」
と尻込みするキャリーをトミーがエスコート。


純朴なキャリーに対して、
優しい気持ちがわきあがってくる。

「リズムにのって、その調子。
もう踊れているじゃないか」


「パーティの後、二次会にいこうよ」
「人気投票、僕らに一票いれてみない?」



彼の言葉に戸惑っていたけれど、
次第に
「いいのかな?やってみよう
彼の気持ちがどうであれ
今の自分を楽しむことに決めた。
表情がやわらかく、
どんどん愛らしくなっていきます。

舞台の影からそっと2人を見守るスー。
ふと彼女がロープの妙な動きに気づく。
視線がロープをたどっていく。

上をみあげると、バケツが!

ロープの端を握っている両手のシルエットが。
これは・・・罠?!

あわてて止めに入ろうと駆け寄るスーだったが・・・

ステージの床下で、
イジメっ子の口元がアップになる。
舌なめずりをして、キャリーを辱めるタイミングをうかがう。



ついにその瞬間が訪れた・・・

トミーがキャリーの姿に驚き、怒る。

(だれがこんなことをやったんだ?!)

音声のないスローモーション
切り替わる演出がいいですねぇ。

トミーの声はキャリーにかない。


幸せな瞬間を味わったからこそ
残酷な仕打ちが、大きな衝撃に。

信頼と希望が芽生え始めたばかりだったのに・・・。

頭の中で、母の言葉がこだまする。
「笑い者になる」

大きな怒りの力が噴き出し
自分自身までものみこんでゆく。


もはや善意と悪意の区別など
できるはずもない。


悪夢で目覚めた同級生に、
母親が「大丈夫よ」と抱きしめるラストカット。

その姿はまるで
キャリー母娘のよう。

自分の思いつきがもとで、
恋人だけを死に追いやった罪悪感。

スーの心の傷は癒えるのだろうか。。。

善意つぐないから
生まれた罪女の業


デパルマ監督の魅力炸裂!
あっという間の98分です。


※2019年1月の記事を再掲載しました。