第5番札所「葛井寺」

 近鉄「藤井寺」駅から3分ほど歩いたところにある葛井寺です。葛井寺は「ふじいでら」と読みます。関西に長く住んでいましたが初めて知りました。大阪府藤井寺市の市名は葛井寺が由来だったんですね…。「かつらいでら」とか「くずいでら」とか読んでました…。千手観音で有名というのは知っていたのですが、参拝は初めてです。

 

 葛井寺は、真言宗御室派の寺院で、本尊は千手観音、開基は聖武天皇、開山は行基です。創建は725年。本尊の作製年代や出土した瓦から、寺年齢の詐称はなくガチの古寺のようです。本尊は秘仏ですが毎月18日に御開帳となっています。1か月に1回だったら、もうずっと公開してくれたらいいのに…とか思うんですけど…。

 以前からずっと思っていますが、秘仏の基準って何でしょうね。お寺に聞いても、大体の場合が「昔からそう決まってるから」といった旨の回答しか得られないんですよね。

 

©1089ブログ https://www.tnm.jp/modules/rblog/1/2018/02/14/千手観音菩薩坐像/

 

 ともあれ、葛井寺といえば、千手観音。「そんじゃそこらの千手観音とは違うぜ」と言わんばかりの手の数1041本。通常、千手観音像の手の数は42本であることが慣例です。これは1本の腕が25の世界を救うということから25×40=1000、これに合掌している2本の手を合わせて42本ということだそうです。25の世界については、アビダルマの二十五有が由来になっており…と、まあ、話が脱線しそうだからやめときますが、ともあれ葛井寺の千手観音は本当に手が千本ある作例の少ない千手観音なわけで、天平美術における最高傑作とも言われています。

 天平美術といえば、興福寺の阿修羅像や八部衆像とか、新薬師寺の十二神将像がありますが、この時代の仏像はみんな表情が良いんです。洗練されてないところがすごくいい。普通に会社の〇〇さんに似てるとかそういうところ。

 

 境内には烏枢沙摩明王閣がありました。すなわち、お手洗いのことです。烏枢沙摩明王は私の好きな明王で、不浄なものを焼き尽くしてくれるので、トイレに祀られることが多いのです。実は、子供のころ自宅のトイレに祖母からもらった烏枢沙摩明王の紙札を貼っていたこともあって、子供のころから烏枢沙摩明王の真言を空で唱えることができました。そんなわけで、実は私にとって最も長いお付き合いの神仏であり、お寺に烏枢沙摩明王閣があったときは、必ずご挨拶です。

 

 葛井寺は駅前の商店街に直結しており、国宝である本尊が庶民の生活の中にあります。国宝となると、どうにも歴史的・文化的な価値が先行するんでしょうけど、葛井寺ではあくまで庶民の信仰の対象で誇りなんでしょうね。素敵なものを見せていただきました。