バックカントリーワールド これを体験すると病みつきになる
いや~毎日”バックカントリー”とか”コース外滑走”とかいう見出しのニュースが後を絶ちませんね。
私のホームである新潟県の苗場ーかぐらでは聞かれなかったのが、この前の大雪を境にして連続。昨日の遭難者をアサイチで捜索、発見したと思ったらその日の午後に新たな遭難...とか。
さて、私のブログをお読みいただいている方は認識されていると思いますが...
”今年の遭難はレベルが低すぎる!”
”バックカントリーを単なるゲレンデの延長と思っている”
そうですよね...スキー場の境界からわずか1kmも行かないところで道迷い、とか、滑っていて急斜面で滑落して動けない...とかね。
これをまとめると...
①地図を持っていない。もしくは持っていても読んでない。読めない
・・・小学校の社会科の知識で地形などは読めるはずです。しかもコンパスを持っていない...というか、スマホにコンパスの機能がついているのを知らない。
コンパスが無ければ地図を正しい方角に向けることはできませんから、等高線を見てもちんぷんかんぷん。
特に、濃霧で迷ってしまった場合は方角が解からなければ動けないですね。特に、視界がないと”リングワンデリング(環形彷徨)”という現象が起きて意図した方向と違う方角に進んでしまいます。
おそらくですが、スキー場の案内図 コース図(これをもっていれば少しでもましですが、スキー場の看板のコース図を見てコース外に侵入なんてレベルもあるんじゃないかと...
② ①より、自分が滑るルートを把握していないので考えたルートからはるか遠くに行ってしまう。
地図を見てないので、目印はスキー場のリフトとかはるか下の麓の建物とか...あのリフトに向かって滑っていけばゲレンデに戻れるだろう...
当然ガスが出てきて視界が悪くなりゃそんなもの見えません。ゲレンデの近くだから大丈夫...ってスキー・スノボのスピードは例えば、パウダーでスピードが出ないからといって25km/hくらいでノロノロでも、それは秒速7mに匹敵します。1分くらい滑っただけで500m近くの距離を滑ります。
ちょっと方角を間違えただけで、頼りにしていたスキー場のリフトや建物から遠く離れてしまうのですね。
③ ①より地形を理解していないので急な崖のような地形を知らずに突っ込む⇒滑落 埋もれる・けがをする・無事だとしても急なので登り返せない。
同様に、埋まってない沢に落ちる。じつはこの穴は深いのです。落ちて、板を足から外して登るにもスコップも持たない人には奈落の底ですね。私のホームでも、北斜面と言われるパウダーたっぷりの斜面の先には穴ぼこだらけの清八沢というところがあり、それを避けるために尾根の方に滑ってくと先の方が清八沢にむかって鋭く落ち込んでいてそこを落ちると大変なことになります。
④ GPSアプリを使いこなしていない。または使うGPSアプリを間違えている。
ニュースを読むと”GPSで位置はわかっている”という記載をみかけることもあるのですが...それじゃ、どうして自力下山できないの?
私の場合
・yukiyama
・YAMAP
の2つのアプリを入れています。
お使いの方は説明が不要でしょうが、バックカントリー(スキー・スノボ)にどちらが有用か?
これはYAMAPであるということは火を見るより明らか。
yukiyamaはあくまでもスキー場のコース内を滑ることを前提に作られています。
対してYAMAPは地図が国土地理院の地図が基本になっていて、例えばかぐらスキー場の地図をダウンロードでして苗場のエリアに入っても地図とともに自身の位置はGPSで表示されます。
私の場合は色別標高図という有料版でダウンロードできる地図なので非常に見やすい。
これがなかったら...Google MAPですかね。
これも現在地は表示されますが、あくまでも目印になるような建物が近くに無いとその情報はあまり使えません。
まあ、遭難の通報をするときに地図の位置コードが出るのでそれは有用ですが...
YAMAPのアプリであれば現在地の経度 緯度がでますのでより正確です。
YAMAPかぐらと苗場はエリアは異なるが自動で軌跡の記録が引き継がれるので安心
結論から申しますと、
スキー場からバックカントリーに出るのであれば登山アプリを使いなさい!です。スキー場内と場外では必要な機能が違います。
それから、携帯のコンパス機能を表示させる方法をマスターしておいてください。
私の場合はGPSの電波が受信できているか確認できるアプリ ”GPS Status & Toolbox(無料)”を使っています。画面は、
コンパスとしての方角表示 経度 緯度 実際にどれくらいのGPS衛星からの電波を受けられるのか(これが少ないと誤差が大きくなります)
これは万が一遭難して通報するときに的確に自分の位置を伝えられます。
加えて、ココヘリ...これはもう解説の必要はありませんが、この発信機番号がわかれば、捜索隊も探しやすい。なにしろヘリコプターから位置を特定できる精度です。
ココヘリの発表では99%の事例で遭難者が発見できているとのこと。
⑤ 登山届を出していない。(Webで提出)
登山をする身からすると、うっそ~~なんですが...
みなさんは、遭難事故発生から通報までについてその経過に興味をお持ちでしょうか?
今年の遭難の場合、ほとんどが”携帯で110番”なんですが、これって、運がいいだけですよね。
携帯の電波が届かないところで遭難...これはバックカントリーでは大いに考えられます。どうやって通報しますか?
事例では...
・スキーに行くといっていた家族が帰ってこないし連絡もない。
・はぐれた友人が下りてきていない。
・予約を受け付けた宿が来るべき客が戻ってきていない。
などから警察に110番なんですが...
あくまでもこれは運が良い場合...
第三者が気づかない場合は?
例えば、かぐらスキー場では、従来紙の登山届をゲートのパトロール隊員が受理し、提出した人が下山報告を電話で入れるという方法でしたが、下山報告は不要となりました。
それにより、2月初旬に起きた遭難では警察に通報があって、警察からスキー場に照会があり、提出されていた登山届を参照して遭難の詳細がわかったという事例もありました。
その点からも、Webでの登山届の提出は必須だと思います。
”コンパス”というサイト(もしくはアプリ”で出すことをお勧めします。
これは、ヤマレコなどのGPSアプリから出した登山届とも連携しているので便利です。
要は、登山計画の”下山予定時刻”から何時間経ったら遭難を疑うか、という機能です。バックカントリースキーであれば最短の3時間で設定すればよいでしょう。
ニュースを見ると大体、遭難の通報って午後の2時~3時ごろに集中しています。
遭難して、電波がつながらない...どうしよう???でその日の5時から6時ごろには”コンパスから連絡先に電話やメールで問い合わせが行きます”そこで、不明となると警察に連絡がいく。
警察とコンパス、そして、コンパスにはココヘリの番号も届けてあるのでココヘリも状況に応じて捜索に加わります。
どうでしょう...登山届を出してなければ無縁仏ですよ...最悪...
家族は、必死に探すでしょうし、遺体も見つからないから、住民税、年金、介護保険料は毎月請求されますし、生命保険だって医師の死亡診断書がなければ支払われない。
こうして7年間耐えなくてはならないのです。7年たって行方不明であればようやく死亡届が受理されます。
通報については昨年2つのブログで詳細に解説しました。
また、もう一点...一般的な遭難通報時刻が午後の結構遅い時間であることからビバークは必須と思わなければなりません。
今年の遭難は上述の通り、スキー場内滑走のノリでバックカントリーに出ているので、当然そんなものは持っていません。
ビバークするには、スコップ、ツエルト、エマージェンシーブランケット
エマージェンシーブランケットとツエルト どちらもコンパクトで嵩張らない
折り畳み式スコップ
さあ、いかがだったでしょう。ここまで書くと、今シーズンの遭難者のレベルと実際に求められるレベルの差を実感されていることと思います。
さいごになりますが...
これが大切なんですが...
”安易にゲレンデ感覚でバックカントリーに行ってしまう”
こんな悪しき文化が今シーズン生まれてしまったのが諸悪の根源だと思うのです。
思い切って”バックカントリー(スキー・スノーボード)”という言葉を使わないようにしたらどうでしょう。
バックカントリーを”山スキー(山スノーボード)”と”コース外滑走”の2つの言葉に置き換える。
なんか”バックカントリー”という言葉が自分は上級者だ、どこでも滑れるんだ...みたいな勘違いにつながっているような気がして...
当然ですが、山スキー(ボード)は登山届必須、ビバーク装備持参、地図、GPSアプリ(当然使いこなせる)必須であります。それ以外は”コース外滑走”と...