長谷川ピーク(北アルプス)
昨日は、遭難報道について書きました。
ところで、今年の遭難で多いのが”滑落”です。
よくもこれだけ落ちるもんだな(失礼)と思いつつもその原因は?
・・・経験不足なのに分不相応な山に行ったから...
・・・Youtubeなどの情報を見て、これなら自分も行けると思ってしまう...
何て思い浮かびますが...
滑落...滑って落ちる。滑る原因と落ちる原因に分けて見ると...落ちるのは全ての人に等しく重力がかかっているからで、”滑る”を検証しましょう。
まず、身体は、体重と地面が押し返す力つまりは反力が釣り合って止まっています。
一歩足を踏み出してみましょう。
ここで地面には前の方に押し出す力と重力方向に押す力がかかります。それに相対する力として前述の反力と摩擦力が生じます。
これで、踏み出した足が安定してそちらへ体重移動が出来るのです。
ここで重心にかかる力ですが、重心には重力、足からは反力 そして、もう一つの足からは推進力です。
ここで、事故の原因となっているのは”足を滑らせて””浮石に乗って”ですから、上の”反力、摩擦力”が得られていないことが原因です。
この場合、尻もちをつくような方向の合力となります。
また、浮石に乗って足がさらに前方に持って行かれた場合も同じです。尻もちをつくことになるでしょう。
ではどうしたら...
前傾姿勢であると考えます。
新しく踏み出した足の上に身体があるようなポジション。これであれば、踏み出した足を真上から押すことになるので滑りにくくなります。
岩場を登るときは自然と前傾していて、足の真上に身体がありますが、下りでは得てして、踏み出した足と重心(おへそのあたり)がずれてしまう人が多いようです。懐を少し深くして。背中を少し曲げて。
もし、これで岩が滑りやすくて滑ったとしてもリカバリーできます。人間は前にバランスを崩したものはリカバリーしやすいからです。そして、下の図にもあるように①②③の位置が離れてそれぞれ力を発揮すればそれだけ重力との釣り合いをとるのが難しくなります。
このためには、危険な岩稜帯はともかく歩幅を小さくすることが基本です。一歩を欲張らない!
3点支持:よく言われますが、支持されてない状態では意味がない。
足場:足を置くときに安定してるか確かめながら。
手掛け:手は身体全体のバランスを取って足に体重が正確にかかるようにすることも大切ですし、岩場では手だけでぶら下がれるような岩を探して手を掛けることが重要です。
滑落:やはり経験だよな~ 長い距離長い時間岩稜帯を安全にどれくらい歩いた経験があるか...これは第一条件だと思います。
このブログで解説した点を岩稜帯で実行して経験を積んでから難しい岩場に挑戦してくださいね。
YoutubeなどではまるでHow to(ハウツー)もののような動画で上がっていることもありますが、例えばジャンダルム、大キレットなどは実際、動画のようにはいきません!
この動画でも、歩幅は非常に狭く、岩を登るのも一歩が短いスパンになっています。また、岩場を下るときも前傾して、前に出した足の上に上体があるようなポジションで、その足(足場がしっかりしているがは、踏み出しの際に確認している)に体重が上から乗るようにしてます。
岩稜帯通過には必須のヘルメット。最近の製品はともかく軽い!