2019年3月:

まだ寒い3月、私は抗癌剤治療の副作用で、すっかり食欲をなくしていた。

体力も落ちてきて、杖歩行で歩くのもやっとという感じだった。

 

毎日の食事の内容は

●野菜スープ(スープだけすすって、具はあまり食べれない)

●果物

●おやつ少々(アイスクリームなど)

★エンシュアリキッド(病院から処方されている、栄養補助ドリンク)

 

こんな感じだった。それも量が、物凄く少なかった。

お腹いっぱい食べると、吐き気がしたし、食欲はまったくなかった。

 

色々とカロリーをとるために苦戦して、赤ちゃん用の粉ミルクを食べていた時もあった。。(栄養とカロリーがものすごく高い。私が食べていたのは“はぐくみ”)

 

 

そんなある日、いつものように抗癌剤の治療のために病院へ行くと、血液検査の結果、また白血球が少ない。そして検査の結果もよくなかった。

 

H先生が「最近食事はとれていますか?」と聞いてくれたので、ほとんど食べていないことを話す。。先生が腕組みをして考えてから「ちょっと入院しようか?」と仰った。

 

「え?入院ですか?」と聞き返す私。(自分では元気があると思い込んでいた)

「うん、抗癌剤は打てないし、少し入院して、身体の様子をみようか?」と先生は勧めてくれる。

 

私はなんとなく、そうしたほうがいいような気がした。

そこで、入院することに決めた私は、一度家に帰って入院の準備をし、そのまますぐにタクシーで病院に戻った。

 

もう何度も入院していたので、病棟は慣れてきていた。

 

病室に行くと・・・、

お隣のベッドの患者さんが「私は体調が悪くて食事ができないのに、食事代をとるのは違法だ!食事代を返してほしい!」と看護師さんにかみついていた。

看護師さんは「食事を止めることもできますよ」と、なだめている。

(結局、主治医の先生まで来て大騒ぎになった。食事は止めることになって、主治医の先生が、「身体の栄養より、心の栄養をとろうね」と言っていた)

 

お向かいのベッドのご婦人は、「テレビが聞こえない」「わたし耳が悪いのよ」と、付き添いの娘さんに、何度も言っている。

私は前回に入院したとき、そのベッドにいたので、テレビの音量でなく、イヤホンの接続口がゆるんでいて、故障しているようだと思っていたので、そのことを教えてあげたかった。。。(なかなかそれを言う、勇気が出ない。。私は一緒にいた母に「お母さん、あのテレビ壊れてるんだよ。。」と、小声で言う)

 

付き添いの人との会話や、抗癌剤治療の説明の会話、そんな内容から、病室の全員が、がんだということが分かる・・・。

患者どうし挨拶をしたり、そんなことを見聞きしながら、ワイワイと過ごし夜になっていった。

 

 

夜・・・、12頃・・・、病室のあちらこちらから、すすり泣きや、鼻をかむ音、静かな泣き声が聞こえてきた。

 

私は最初、誰かがどこか痛んで、苦しんでるのかと思った。看護師さんを呼ぼうかどうしようか迷った。

 

でも私は布団を深くかぶりながら・・・、そうか、みんなもつらいし、苦しいんだ・・・。と思った。

 

「みんな昼間はこらえていたんだよね。。がんなんて、なりたくてなったわけじゃないよね。みんな怖いし、生きていきたいよね・・・」と思う。

 

そして、「神様、この病室の全員が、治りますように・・・」と思った。

 

 

今日も読んでいただいてありがとうございました。