今日、立大に勝てば優勝!という法大野球部。

 日差しは強く、ちょっと前までの雨続きの日々が嘘のような天気。久しぶりに見るグラウンドはとても眩しく、青々としていた。学生席は、今まで見たことがないほどの観客で埋まっている。

 いつもと違い、今日はカメラも2台、それぞれ別の視点から、選手の動きや試合の展開を撮影することになっていた。なので、自分は普段の手慣れた一眼レフカメラではなく、デジタルカメラを手にすることになった。最初はなぜか異様に白く撮れたり、自分が撮りたいタイミングからだいぶ遅れてしまったり、初めて手にした高性能カメラにやたら戸惑う。しかし、一度シャッターを強く押す-離す感触を覚えると、だんだんと思い通りのタイミングでシャッターを押せるようになっていた。むしろ、なんだこれは…、やたら使いやすい。科学の進歩はすごいなぁ。そして試合はというと、先発平野投手の好投と切れ目のない打線で、法大のリードは自然と広がっていた。完全に法大が試合の流れをつかんでいた。


 9回裏、2アウト。最後の打者が打った球は二遊間に転がった。大引選手はすばやくそれに反応し、打球を抑える。そして一塁へ送球。一瞬の沈黙が流れた。

 「アウト!」。審判が右手を挙げた瞬間、球場全体は一気に歓喜の渦となった。法大側応援席の歓声、グラウンドに舞う七色のテープ、ガッツポーズをする平野投手、マウンドに駆け寄る法大ナイン。それらが全部同時に起きた。その一瞬一瞬の全てを頭の中に刻みつけようとするかのように、シャッターを何度も押した。


 写真は、一瞬でしかありえない出来事を、時間や場所を越えて伝えるためにあるものなのだと思う。だから、多かれ少なかれ、何かを主張している写真を撮りたかった。優勝した瞬間の、その場でしか味わうことができないはずの熱気。それを少しでも伝えられるような写真を撮ることが出来たのなら、その写真はこれから先、何らかの意味を持つものになるのだと思う。


何を主張してるのか分からない写真(ケータイにて) 主張不明その2 ←ケータイで撮った何も主張のない写真


(工藤 肇)