第四十二話
毎日18時から3時頃まで営業をして、終わってからの楽しみがシーバスフィッシングでした。
店の片付けをして、そのあと家路に向かう前に市川や夢前川の河口へ行って、日が昇りきるまでほぼ毎日ルアーでスズキを狙っていました。
やり始めた頃は10連敗で何も釣れませんでした。
毎日毎日飽きもせず何百回もキャスティングを繰り返してボラしか引っかからずに帰るという毎日でした。
しかし雨が降る中、カッパを着て行った夢前川の河口で、初めて60センチほどのスズキが釣れました。
いつもの様にルアーを投げて引いているといきなりグイグイっと鈍い引きが。
その後スズキが水上に飛び跳ねました。
そこから引くわ引くわ。
嬉しくて誰もいない暗い河口でヨッシャーと思わず叫んでいました。
もちろん釣り上げて持って帰って、さばいて食べようと思ったのですが、水質があまり綺麗な場所ではなかったので、ちょっと臭くて食べるのをやめました。
それからますますハマって、網干高校の前の人工島や千種川までエリアを広げ、真夏と年始のシーズンオフ以外はほぼ毎日の様に通いました。
だんだん釣れる日と釣れない日が解るようになってきて、潮見表を見ながら場所を決めてポイントを探ってほぼ釣れる様になってきました。
今思えばよくあれだけ毎日通ったものだと思います。
「GRITやり抜く力」の本にも書いてありましたが、才能ではなく継続力が結果につながるのですね。
凡事徹底の大切さを学びました。
熱中出来る物を見つけることが大切ですね。
一度やばかったことがありました。
いつもの様に深夜の河口で車を止めて釣りをしていると、バイクに乗ったヤバ目のお兄さんたちが爆音を響かせながら続々と集まり始め、百人以上の集団になりました。
すぐ横で当時全盛期だった暴走族の集会が始まったのです。
やばいかなと思いながらも釣りを続けていたのですが、気が散って釣れないので帰ろうかと思い、車に乗ってエンジンをかけたのですが、暴走族の集団が出口を完全に塞いでいて通れそうもない。
無理に通ろうとするとボコボコのされそうなので困っていると、一人の男の人が近づいてきて、「帰るのか?」と聞くので、そうしたいと答えると、何とそのお兄さんが、「おーい、車が出るからちょっと開けろ」と言って、オーライオーライと誘導してくれました。
一時はどうなるかと思いましたが以外に優しい暴走族で助かりました。
それから数年後に結婚して店まで自転車で行ける場所に引越しするまで通い続けました。
最近は滅多に行かなくなってしまいましたが子供がもう少し大きくなったら一緒に行きたいですね。